英国のエクセター大学の科学者たちは、身体の特定の部位に薬物を運ぶことによって疾患の治療に革命を起こす可能性のある、精子細胞を模倣した小型の磁気スイミング装置を作製した。長さが1ミリメートルのこの小型デバイスは、磁気ヘッドとフレキシブルテールで構成されており、磁場によって活性化されると特定の位置に「泳ぐ」ことができる。 

地球上で生命はどのように起こったのか?ニュージャージー州のラトガース大学の研究者は、単純なタンパク質触媒の最初で唯一の証拠の中に、細胞に不可欠な、生命が始まったときに存在していたかもしれない生命のビルディングブロックを発見した。この原始のペプチドまたは小さなタンパク質の研究が、米国化学会誌に掲載された。 

2018年8月29日にサイエンスのオンラインで公開された新研究で、非小細胞肺癌(NSCLC)での遺伝子変異は、細胞の主要な増殖シグナルの認識を妨げて、腫瘍形成を促進する可能性があると報告された。この論文は、「癌突然変異と標的薬物は、Ras-Erk経路によるダイナミックシグナルエンコーディングを混乱させる可能性がある(Cancer Mutations and Targeted Drugs Can Disrupt Dynamic Signal Encoding by the Ras-Erk Pathway.)」と題されている。カリフォルニア大学サンフランシスコ校(UCSF)の研究者が率いるこの研究は、多くのヒト癌の根底にある欠陥メカニズムを理解し、欠陥メカニズムを最終標的とする重要な意味を持つ可能性がある。健常細胞は、いつ、どのように増殖、分裂、および移動するかについて外部の手がかりを解釈するために、Ras / Erk増殖シグナル伝達経路(Ras / MAPK経路)に依存するが、これらのメッセージが伝達される際の欠陥は、 制御不能に陥り、身体の他の部分へ浸潤する原因となりうる。このような突然変異は、大多数のヒト癌で発見され、Ras / Erkの治療法を開発は、癌研究の至高の目標である。何十年もの研究により、科学者は、突然変異により経路の1つ以上のコンポーネントが成長前の状態から抜け出せなくなった場合に、Ras / Erkによる癌が生じると考えている。研究者らは、これらの壊れたスイッチを元に戻す標的治療法を開発するために努力してきたが、これまでのところほとんどが臨床試験に失敗している。現在、光パルスを用いてRas / Erkシグナル伝達を制御し、ゲノム動態を迅速に読み取ることが可能なUCSFで開発されたハイスループット技術を用い、この広範囲に研究された経路について驚くべき発見をした。オプトジェネティックス(Optogenetics:光感受性タンパク質が光パルスに応答するように細胞内で遺伝子操作されるアプローチ)は、神経科学における革新的な実験技術であり、研究者はニューロンのネットワーク内の電気活動パターンを精緻に制御し研究することができる。同じアプローチを使用することによって個々の細胞内の化学伝達パターンを探索する新しいUCSFの研究は、いくつかのRas / Erk突然変異が、細胞増殖シグナルの強度よりむしろタイミングを変えることによって癌を引き起こすことを明らかにした。 シグナルタイミングのこのぼやけが、欠陥Ras / Erkシグナル伝達を遮断するように設計された一部の標的薬物が逆説的に経路を活性化し、潜在的に新しい腫瘍形成のリスクを高める理由も示された。「この新しい技術は疾患細胞に接続する診断装置のようなもので、多くの光に基づく刺激で細胞を刺激して調べ、それがどのように反応するか見ることができる。」「このアプローチを使用することで、細胞回路によって通常はフィルタリングされたシグナルに応答して細胞増殖につながるシグナル、すなわち振る舞いを処理する方法において、ある欠陥を有する癌細胞を同定することができた。」と論文著者の1人であるUCSF合成生物学者のWendell Lim博士は語った。UCSFの医学腫瘍専門医および癌生物学者であるTrever Bivona博士、プリンストンの分子生物学者Jared Toettcher博士(元Lim研究室のポスドク研究員)は、この新研究の共著者である。 この研究の筆頭著者は、ペンシルバニア大学のLukasz Bugaj博士であり、以前はLim博士のポスドク研究者であった。

科学者は、ケシゲノムのDNA配列を決定し、生薬の製造に使用される薬学的化合物を生産するために植物がどのように進化したかを明らかにした。この発見は、科学者が薬草植物の収量および耐病性を向上させ、鎮痛および緩和ケアのための最も効果的な薬剤の信頼できる安価な供給を確保する道を開くかもしれない。ヨーク大学の研究者たちは、英国のウェルカム・サンガー・インスティテュート、および国際的な協力により、咳抑制薬ノスカピンおよび鎮痛薬モルヒネおよびコデインの生産につながる遺伝的経路の起源を明らかにした。この研究は2018年8月30日にScienceでオンラインで報告された。 この論文は、「ケシのゲノムとモルフィナン生産(The Opium Poppy Genome and Morphinan Production.)」と題されている。共同執筆者であるヨーク大学の生物学科の新農産物センターのIan Graham教授は「生化学者は植物がどのように進化して地球上で最も豊富な化学物質リソースになったか長年関心があった。高品質のゲノムアセンブリを使用して、我々は、これがケシにおいてどのように起こったかを解明した。同時に、この研究は、途上国において痛みの緩和と緩和ケアのために利用可能な最も有効な鎮痛剤の信頼できる安価な供給が確保されるために分子植物育種ツールの開発の基盤を提供するだろう。」と語った。ノスカピン、コデイン、およびモルヒネなどの合成化合物を製造するための合成生物学ベースのアプローチが開発されており、植物由来の遺伝子を工業用発酵槽で生産可能にするために酵母などの微生物系に改変されている。しかし、ケシは、これらの製薬化合物の最も安価で唯一の商業的供給源であり続けている。

遺伝子FKBP5は、ストレス応答の重要な調節因子であり、我々がどのように環境刺激に応答するかに影響する。以前の研究では、この遺伝子の特定の変異体が、外傷後ストレス障害、うつ病、自殺リスクおよび攻撃的行動などの神経精神障害の発症において役割を果たすことが示されている。しかし、2013年にノースカロライナ大学(UNC)医学部の研究者らが、FKBP5の遺伝子変異と外傷後慢性疼痛との関連を初めて示した。特に、rs3800373として知られている第6染色体の変異型または軽症/リスクアレルを持つ人々は、この亜種を持たない人と比較して外傷(性的暴行または自動車衝突など)に曝された後により多くの痛みを経験する可能性があることが判明した。現在、Journal of Neuroscienceに掲載された同じ研究グループによる新しい研究では、自動車衝突の外傷を経験した1,500人以上の欧州アメリカ人およびアフリカ系アメリカ人の子孫のコホートにおいてこの関連が確認されている。 外傷修復研究所の麻酔科の助教授Sarah Linnstaedt博士(写真)がこの研究の筆頭著者である。この論文は「FKBP5の3'UTR中の機能性riboSNitchはMicroRNA-320a結合効率を変え、慢性外傷後疼痛の脆弱性を介在する(A Functional riboSNitch in the 3′UTR of FKBP5 Alters MicroRNA-320a Binding Efficiency and Mediates Vulnerability to Chronic Posttraumatic Pain.)」と題されている。

テキサス大学(UT)の科学者によって、初めて大型哺乳動物(犬)のデュシェンヌ型筋ジストロフィー(DMD)の進行を停止させるためにCRISPR遺伝子編集が使用され、救命の可能性が示された。2018年8月30日にサイエンスでオンラインで公開されたこの研究では、筋機能に重要なタンパク質であるジストロフィンの産生を阻害する突然変異によって引き起こされ、小児の最も一般的な致死的遺伝病であるDMDを有する犬の筋繊維に前例のない改善があったとしている。この論文は、「遺伝子編集はデュシェンヌ型筋ジストロフィーのイヌモデルにおけるジストロフィン発現を回復させる(Gene Editing Restores Dystrophin Expression in a Canine Model Of Duchenne Muscular Dystrophy.)」と題されている。研究では、筋肉や心臓組織のジストロフィンを正常レベルの92%まで回復させるために、シングルカット遺伝子編集技術を使用した。科学者は、患者を有意に助けるのに15%の閾値が必要であると推定している。「DMDを患う子供たちは、心臓が鼓動する力が失われたり、横隔膜が息をするには弱すぎたりするため、しばしば死亡する。このレベルのジストロフィン発現なら、うまくいけばそれが起こらないようにするだろう。」とUTサウスウエスタンのハモン再生医科学センターのEric Olson博士は語った。5,000人の少年のうちの1人に影響を及ぼすDMDは、筋肉および心不全に至り、30代前半で早死を引き起こす。患者は、筋肉が退化して車椅子に乗せられることになり、最終的には横隔膜が弱くなるにつれて呼吸器が着けられる。効果的な治療は存在しないが、科学者はジストロフィン遺伝子の欠損がその状態を引き起こすことを何十年も前に分かっていた。サイエンスに発表されたこの研究は、ジストロフィー筋肉におけるシングルカット遺伝子編集のコンセプトを実証し、臨床試験への大きな一歩を象徴している。

スコットランドのエジンバラ大学の再生医学研究センター(MRC)の科学者によって3Dヒト肝臓組織に形質転換された幹細胞は、肝臓疾患のマウスに移植された際に肝機能の有望なサポートをした。科学者は、ヒト肝臓組織インプラントを開発するための初期段階の進歩に加えて、実験室でのヒト肝臓疾患および試験薬の研究のためのより良いプラットフォームを提供することによって、実験動物の必要性を低減できるとも述べている。この研究はArchives of Toxicologyに掲載された。科学者はヒト胚性幹細胞を採取して人工多能性幹細胞(iPSCs)を誘導し、慎重にそれらを刺激して肝細胞の特性を発達させた。研究者らは、これらの細胞を1年以上にわたりディッシュの中の小さな塊として成長させた。この研究を主導したエジンバラ大学の再生医療センターMRCのDavid Hay博士は、「研究室で幹細胞由来の肝臓組織を1年以上生存させたのは、これが初めてだ。 長い間細胞を生きて安定した肝細胞として維持することは非常に難しいが、人にこの技術を応用することを望むなら、非常に重要なステップである。」と述べた。科学者は3Dの足場を開発するため、ヒトで既に承認された適切なポリマーを特定するために材料化学者および技術者と協力した。

人間の脳に関する最も興味深い疑問は「私たちの脳を他の動物の脳と区別するのは何か?」であり、これは神経科学者にとって答えるのが最も難しい質問の1つである。「人間の脳を特別なものにするのは何か本当のところ分からない」とワシントン州シアトルにあるアレン脳科学研究所のEd Lein博士は述べている。「細胞と回路のレベルで違いを学ぶことはスタート地点としては適しており、今や我々はそれを行う新しいツールを持っている」2018年8月27日にNature Neuroscienceでオンラインで公開されたこの新研究で、Lein博士とその同僚は、この難しい疑問に対する可能性のある答えを発表した。この論文は、「特殊化されたヒト皮質ガバレクチン細胞型のトランスクリプトームおよび形態生理学的証拠(Transcriptomic and Morphophysiological Evidence for a Specialized Human Cortical Gabaergic Cell Type.)」と題されている。Lein博士とハンガリーのセゲド大学の神経科学者であるGábor Tamás博士の共同研究チームは、マウスや他のよく研究された実験動物では見られなかった新しいタイプのヒト脳細胞を発見した。Tamás博士とセゲド大学の博士課程学生であるEszter Boldogは、これらの新しい細胞を "ローズヒップニューロン"と呼んだ。なぜなら、細胞の中心の周りの各脳細胞の軸索形態が花弁をはずした後のバラのように見えるからだ。

カリフォルニア州のUCLA ジョンソン総合がんセンターは、健常時および傷害後の微小環境によって造血幹細胞がどのように維持されているか重要な違いを発見した。人体は、健常時や、例えば癌の放射線治療のようなストレスやけがの時に単一成長因子を産生する細胞種を切り替えているように思われる。この研究結果は、放射線治療で造血幹細胞が実質的に枯渇していそうな時や、骨髄移植を受けている人の治療に影響を及ぼす可能性がある。この研究は、UCLAのデーヴィッドゲフェン医学部 血液学・腫瘍学の教授であるJohn Chute博士が率いたもので、Cell Stem Cellで発表された。この論文は、「プレオトロフィン制御造血幹細胞の維持および再生の骨髄源(Distinct Bone Marrow Sources of Pleiotrophin Control Hematopoietic Stem Cell Maintenance and Regeneration)」と題されている。血液形成または造血幹細胞は、白血球、赤血球および血小板などの様々な種類の成熟血液要素に分化することができる。それらは、様々なタイプの周囲の細胞が取り囲む骨髄中の「血管性ニッチ」に生存し、部分的には成長因子と呼ばれる化合物を分泌する。このUCLAの研究は、プレオトロフィン(PTN)と呼ばれる成長因子に焦点を当てている。

メープルツリーはメープルシロップと美しい紅葉でよく知られている。 しかし、その葉の美しさは肌にとっても役立つものになる可能性があることが判明した。科学者らは、葉からの抽出物がしわを防止し得ることを報告している。この研究成果は第256回アメリカ化学会(ACS)の全国会議および博覧会で発表された。世界最大級の学会であるACSは、2018年8月19日〜8月23日にボストンでこの会議を開催した。ACSミーティングでは、幅広い科学分野で10,000件以上のプレゼンテーションが行われた。このメープルリーフの研究者は、以前に、サトウキビとレッドメープルの樹木から得た樹液とシロップの化学的および健康的利点を研究していた。プロジェクトの主任研究者であるロードアイランド大学のNavindra P. Seeram博士によれば、歴史の記録から木の他の部分も有用であることが示唆されたと言う。「ネイティブアメリカンは、伝統薬にレッドメープルの葉を使っていた。葉を無視する理由はない。」と彼は言う。皮膚の弾力性は、エラスチンなどのタンパク質によって維持される。 しわは、酵素エラスターゼが老化過程の一部として皮膚のエラスチンを分解するときに形成される。ACSの会議でこの研究を発表し、Seeram博士の研究室の研究員であるHang Ma博士は、「我々はレッドメープルの葉の抽出物がエラスターゼの活性を阻害するかどうかを知りたがっていた。」と語った。ロードアイランド大学の研究者らは、グルシトール含有ガロタンニン(GCGs)として知られている葉のフェノール化合物をゼロにし、各化合物が試験管内でエラスターゼ活性を阻害する能力を調べた。科学者はまた、GCGがエラスターゼとどのように相互作用してその活性をブロックするか、分子の構造がブロッキング能力にどのように影響するかを調べるためのコンピューター解析を行った。 複数のガロイル基(一種のフェノール基)を含むGCGは、単一のガロイル基を有するものよりも効果的であった。 しかし、これらの化合物は、エラスターゼを妨げる以上の効果がある。以前の研究では、Seeram博士のグループは、これらの同じGCGが炎症から皮膚を保護し、望ましくないそばかすまたは年齢の斑点などの暗い点を明るくする可能性があることを示した。Seeram博士とMa博士はさらなる試験を計画している。

自動車事故は、高齢の患者に、癒されない重度の筋肉傷害を残す。 ドナーからの筋肉幹細胞による治療は、損傷した組織を回復させるかもしれないが、医師にはそれらを効果的に送達することが困難だ。新しい方法がこの状況を変えるのに役立つかもしれない。 ジョージア工科大学(Georgia Tech)の研究者は、筋肉がうまく再生しない患者の筋衛星細胞(MuSC)を筋肉組織に直接送達するために、ハイドロゲルである分子マトリックスを設計した。 

研究者は遺伝子編集ツールを用いて、ヒト幹細胞における脆弱X症候群で抑制されたFMR1遺伝子の再活性化に成功した。このニュースは、2018年8月16日にDiogo PintoによりFragile X News Todayの記事で報告された。 このオープンアクセスの科学論文は「脆弱なX症候群の胚性幹細胞におけるFMR1転写の標的化された再活性化(Targeted Reactivation of FMR1 Transcription In Fragile X Syndrome Embryonic Stem Cells)」と題されており、2018年8月15日に分子神経科学のフロンティアでオンライン公開された。脆弱X症候群(FXS)は、3つの余分なヌクレオチド(DNAのビルディングブロック)をその配列に付加することによって生じるFMR1遺伝子の突然変異によって引き起こされる。 これは、CGGリピートと呼ばれ、健常者では5から55まで変化する。リピートが繰り返されるほど、疾患を発症するリスクが高くなる。 この突然変異は、FMR1遺伝子によって産生されるタンパク質である脆弱X精神遅滞タンパク質(FMRP)の喪失をもたらす。これまでに試験された治療法は、FMRPタンパク質の損失を補うことを試み、通常はタンパク質機能の1つのみを標的とする。しかしながら、それらはこの疾患を治療するには不十分であることが証明されている。研究者らは、神経細胞および他の細胞型においてFMRPによって果たされる異なる機能は、1つの調節不能な分子経路のみを標的とする任意の治療では矯正するのが困難であり、今日までのヒト臨床試験での成功の欠如に関する潜在的な理由の1つと考えている 。

睡眠についての理解は、慢性的な睡眠不足が蔓延している現代社会において、ますます重要になってきている。 睡眠不足と健康への悪影響の相関関係を示すエビデンスとして、睡眠の核心機能は謎のままである。しかし、2018年7月12日にオープン・アクセス・ジャーナルPLOS Biologyに掲載された新しい研究では、ニューヨークのコロンビア大学のVanessa Hill博士、Mimi Shirasu-Hiza博士および同僚らは、短睡眠ショウジョウバエ変異体が急性酸化ストレスに対する感受性の共通の欠陥を共有し、睡眠が抗酸化プロセスをサポートすることを見出した。地味な存在のショウジョウバエだが、睡眠と酸化ストレスの古くからの双方向の関係を理解することは、睡眠障害や神経変性疾患など現代人の病気についての洞察を得ることができる。この論文は、「ショウジョウバエの睡眠と酸化ストレスとの間の双方向の関係(A Bidirectional Relationship Between Sleep and Oxidative Stress in Drosophila.)」と題されている。 睡眠中の動物は脆弱で不動であり、環境に反応しにくく、捕食者から逃げることができない。睡眠行動の対価にも関わらず、ほとんどの動物は睡眠をとるため、睡眠はヒトからショウジョウバエまで本質的かつ進化的に保存された機能を示唆している。 研究者らは、健康の中枢機能のために睡眠が必要な場合、通常よりも睡眠時間が有意に少ない動物はすべて、その中枢機能に欠陥を共有するはずだと推論した。この研究のために、彼らは短睡眠ショウジョウバエ突然変異体の多様なグループを使用した。 彼らは、これらの短睡眠突然変異体が実際に共通の欠陥を共有していることを発見した。それらはすべて急性酸化ストレスに敏感である。 過剰のフリーラジカルに起因する酸化ストレスは、細胞に損傷を与え臓器機能障害を引き起こす可能性がある。 有毒なフリーラジカルまたは活性酸素種は、正常な代謝および環境ダメージから細胞内に蓄積する。睡眠の機能が酸化ストレスに対する防御ならば、睡眠の増加は酸化ストレスに対する耐性を増加させるはずである。 Hill博士と同僚は、これが真実であることを示すために薬理学的方法と遺伝的方法の両方を使用した。最終的に、著者は睡眠に抗酸化作用があると、酸化ストレスが睡眠そのものを制御する可能性があると提唱した。 この仮説と一致して、彼らは、抗酸化遺伝子を過剰発現させ、脳における酸化ストレスを減少させることによって、睡眠の量も減少することを見出した。これらの結果は、睡眠と酸化ストレスとの双方向性の関係性を指している。つまり、睡眠機能は酸化ストレスや酸化ストレスから体を守り、睡眠を誘発する。この研究は、睡眠障害がアルツハイマー病、パーキンソン病、ハンチントン病などの酸化ストレスに関連する多くの疾患と相関関係にあるため、ヒトの健康に関係している。睡眠喪失は、個体を酸化的ストレスやその後の疾患に対してより敏感にする可能性がある。 逆に、抗酸化物質応答の病理学的な崩壊はまた、睡眠喪失および関連する病状につながる可能性がある。■原著へのリンクは英語版をご覧ください:Antioxidant Benefits of Sleep Suggested in Fly Study

米国コホートの結果からメラノーマ脳転移(MBM: melanoma brain metastases)を有する皮膚メラノーマ患者のうち、チェックポイント阻害剤を用いた第一選択治療では、全生存期間の中央値が1.4倍増加していた。これらの結果は、Cancer Immunology Researchの2018年7月12日にオンラインで公開された。 

この新しい技術は、ヒト組織を保管し輸送する作業を根本的に改善することがでるだろう。英国のWarwick Medical School 化学部の研究者らは、ある極地生物に見られる天然の不凍タンパク質の合成を人工的に再現し、広範囲の細菌を凍結保存(または「凍結」)する方法を確立した。科学者らは、タンパク質の模倣体を加えることによって氷結晶の成長が遅くなり、それらが細菌細胞を破壊するのを止めることを見出した。 この革新的な方法は、食品産業、臓器輸送、医薬品、ならびに実験室における研究など、様々な用途の可能性を秘めている。細菌は、食品技術(例えば、ヨーグルトおよびプロバイオティクス)、医薬品製造(例えば、インスリン)、および酵素生産(例えば、洗剤)を含む広範なプロセスで使用され、研究室では感染や生活プロセスの基本を研究するために日常的に使用されている。世界中のほぼすべての実験室で使用されている細菌を保存する伝統的なアプローチは、凍結中の低温誘発損傷を減少させるため細菌にグリセロールを添加する方法である。しかし、すべての細菌が解凍後に回復するわけではなく、その成長および有用性を可能にするために、グリセロールを細菌から除去する必要がある。Matthew I. Gibson教授が率いるWarwickのチームは、地球上で最も寒い地域に生存する極地生物にヒントを得て、凍結保存のための新しい方法を開発した。極地生物の中で特に関心を寄せているのは、

テキサス大学(UTサウスウェスタン)の研究者らは、DNA感知酵素が小さなバイオリアクターとして作用し、先天性免疫を刺激する分子を作り出す液滴を形成すると報告している。2018年7月5日にScience誌でオンライン公開された。この研究は、感染、自己免疫疾患、および癌に対する新規治療法につながる可能性がある。 

東南アジア人の祖先に関する2つの競合する学説は、8,000年前の骨格から抽出された古代人のDNAを革新的手法で分析することによって否定された。東南アジアは世界で最も遺伝的に多様な地域の一つだが、100年以上に渡り科学者たちは、この地域の集団の起源についてどの理論が正しいかについて意見が割れていた。1つの理論は、44,000年前から東南アジアに住んでいた先住民のホアビン狩猟採集民が、東アジアの初期の農家からの提供なしに、独立して農業慣行を採択したと主張している。 "2層モデル"と呼ばれるもう一つの理論は、現在の中国にあたる地域の米農家が移住し、ホアビン狩猟採集民を置き換えたという見解を支持している。2018年7月6日のScience誌に掲載された新研究に協力した世界各地の学者は、どちらの理論も完全に正確ではないことを見出した。彼らの研究は、現在の東南アジア人が少なくとも4つの古代人集団を祖先に持つことを発見した。この論文は「東南アジアの先史時代の人類学(The prehistoric peopling of Southeast Asia.)」と題されたもので、8,000年前のマレーシア、タイ、フィリピン、ベトナム、インドネシア、ラオス、日本からのヒト骨格遺体からDNAが抽出された(これまで成功したDNAシーケンシングは4,000年前のサンプルだけであった)。これらのサンプルには、集団間の遺伝的連鎖が疑われているホアビン狩猟採集民と日本の縄文人のDNAも含まれていた。合計26の古代人のヒトゲノム配列を研究し、東南アジアに住む現代人のDNAサンプルと比較した。東南アジアの暑さと湿気はDNA保存にとって最も困難な環境の一つであり、この先駆的研究は科学者に大きな課題を提起する印象的なものと言える。

クモの空気力学的能力は、何百年もの間科学者を虜にしてきた。 チャールズ・ダーウィン自身、どのように何百もの生き物たちが穏やかな日にビーグル号に 来て、そして風が吹かない日に素早く船から飛び立つのかをじっと考えていた。科学者らは、これら無翅の節足動物のクモの飛行行動が、風に乗るシルクの尾を放つことによって数千マイルも移動することができる「気球飛行」に起因していると考えていた。 しかし、無風、曇り空、そして雨が降っているときでさえ気球飛行が観察されたという事実は、ある疑問を生じさせる。"クモはどのように空力抵抗が低い状態で飛ぶのか?" ブリストル大学(英国)の生物学者は、その答えを見つけたと確信している。「多くのクモは、扇状に広がった複数本のシルクを使って気球を膨らましている。これは斥力的な静電気力が必要であることを示唆している」と感覚生物物理学の主任研究員 Erica Morley博士は説明する。「現在の理論は、風だけでクモの気球パターンを予測することはできない。何日も大量に飛んだり、他の日にはクモが全く気球を使わなくなるのは何故か? 他の外的な力や気球の空気抵抗を引き起こす可能性があるかどうか、そしてこの刺激を検出するためにどのような知覚システムが使用されるのか探し当てたいと考えていた。」

炎症性腸疾患(IBD)の前臨床モデルにおける最近の研究で、ポリカーボネートプラスチックおよびエポキシ樹脂中に見出されるビスフェノールAまたはBPAの食物曝露が死亡率を増加させ、その症状を悪化させる可能性があることを示している。Experimental Biology and Medicine誌で2018年6月6日にオンラインで公開された研究は、テキサスA&M大学の栄養食品科学研究科のClint Allred博士が主導した。この論文は、「芳香族アミノ酸から誘導された微生物代謝産物を変え、大腸炎の間の病気の活動を悪化させるビスフェノールA変種(Bisphenol-A Alters Microbiota Metabolites Derived From Aromatic Amino Acids And Worsens Disease Activity During Colitis.)」と題されている。全文はオンライン< https://tinyurl.com/IBDresearchBPA >で見ることができる。「これはBPAが過敏性腸疾患に関連している腸内微生物のアミノ酸代謝に悪影響を与えることを示す最初の研究である」と栄養食品科学部の大学院生であるJennifer DeLucaは述べた。この研究に参加したのはKimberly Allred博士(栄養食品科学部門)とRami Menon(Texas A&M化学工学科の化学エンジニア)であった。 IBDは、潰瘍性大腸炎およびクローン病を含む複雑な疾患の集合である。 消化管の慢性炎症があり、IBDに関連する症状としては、重度の下痢、腹痛、疲労および体重減少が挙げられる。 より深刻な例は、生涯にわたる治療または場合によっては外科手術を必要とする可能性がある。「IBDの原因はまだ明らかにされていないが、食生活、喫煙、感染、腸内微生物の変化、毒素や汚染物質などの環境暴露は発達と再発の危険因子だ」とClint Allred博士は述べている。「今回の調査では、BPAがIBDに与える影響に焦点を当てたいと考えていた。」BPAは、水ボトルなどの食品および飲料を貯蔵する容器の製造によく使用されるポリカーボネートプラスチックに含まれている。これはまた、食品缶、ボトルトップ、給水ラインなどの金属製品の内部をコーティングするために使用されるエポキシ樹脂にも見られる。 さらに、いくつかの歯科用シーラントおよび複合材料にもBPAが含まれている。

国際的な研究者チームが音波を用い、血液サンプルから循環腫瘍細胞を臨床使用に迅速かつ効率的に分離する、穏やかで非接触の方法を開発した。循環腫瘍細胞(CTC)は、血流に漏れ出して流れる腫瘍の一部である。腫瘍の種類、身体的特徴、遺伝的変異など、豊富な情報が含まれている。 

オーストラリア連邦科学産業研究機構(CSIRO)は、感染と病気に対する身体の免疫応答を調節する上で重要な役割を果たす遺伝子を同定した。 この発見は、インフルエンザ、関節炎、さらには癌のための新しい治療法の開発につながる可能性がある。 C6orf106または「C6」と呼ばれるこの遺伝子は、感染症、癌および糖尿病に関与するタンパク質の産生を制御している。 

人体の多くの重要なタンパク質は、正しく働くために、鉄 - 硫黄クラスター、鉄と硫黄原子でできた小さな構造を必要とする。アメリカ国立がん研究所(NCI)、アメリカ国立衛生研究所(NIH)、およびケンタッキー大学の研究者は、鉄硫黄クラスターの形成の中断が特定の細胞に脂肪小滴の蓄積をもたらす可能性があることを発見した。これらの発見は、Journal of Biological Chemistryの2018年5月25日号に掲載されており、非アルコール性脂肪肝疾患や腎明細胞癌のような状態の生化学的原因に関する手がかりを提供する。この記事は、「哺乳動物細胞における代謝再プログラミングおよび脂質液滴の形成における鉄-硫黄クラスターの急性喪失(Acute loss of Iron–Sulfur Clusters Results in Metabolic Reprogramming and Generation of Lipid Droplets in Mammalian Cells.)」と題されている。「鉄-硫黄クラスターは繊細で、細胞内の損傷を受けやすい」と新しい研究を率いたポスドクのDaniel Crooks博士は語った。「この理由から、私たちの体内の細胞は常に新しい鉄-硫黄クラスターを構築している」 Crooks博士は、NIH傘下機関の国立小児保健発達研究所(Eunice Kennedy Shriver National Institute of Child Health and Human Development:NICHD)のTracey Rouault博士のラボで、鉄-硫黄クラスターを形成する酵素の研究を開始した。

「ヒト独特」と考えられていた筋肉が、いくつかの類人猿の種で発見されており、ヒトの軟組織の起源と進化に関する長年の理論に議論が起こっている。 この発見は、特定の筋肉が、二足歩行、道具の使用、声によるコミュニケーション、表情など、ヒトの特質に対する特別な適応を提供する唯一の目的のために進化したというヒト中心の見解に疑問を投げかけている。Frontiers in Ecology and Evolutionで2018年4月26日に発表されたこの研究は、ヒトの進化をより良く理解するためには、類人猿の解剖学の徹底的な知識が必要であることを強調している。この論文は、「ボノボの最初の詳細な解剖学的研究は、特定の変異を明らかにし、ヒトの進化、二足歩行、および道具の使用に関するストーリーを明らかにする。(First Detailed Anatomical Study of Bonobos Reveals Intra-Specific Variations and Exposes Just-So Stories of Human Evolution, Bipedalism, and Tool Use.)」と題されている。 「この研究は、ヒトの進化と〝自然の階段〟におけるヒトの位置付けについてのドグマと矛盾している」とワシントンDCのハワード大学 解剖学科のRui Diogo博士は言う。

アメリカ国立衛生研究所(NIH)は、2018年5月6日(日)に、すべてのバックグラウンドの人々の個別化予防・治療・ケアを目指し、「All of Us 研究プログラム」(https://www.joinallofus.org/en)の全国登録を開始した。健康状態にかかわらず、18歳以上の人々が登録することができる。公開日には、全国の7つの都市でのコミュニティイベントとオンラインイベントが行われた。プログラムの全国立ち上げの準備期間における1年間のベータテストを通じ、All of Usにすでに2万5千人以上のボランティアが登録している。全体的な目的は、100万人以上のボランティアと研究で過小評価されているオーバーサンプリングコミュニティを登録することです。Alex Azar 保健福祉部長官は、「All of Usは、病気や医療の研究方法に革命を起こす可能性のある野心的なプロジェクトだ」と述べた。「NIHの前例のない努力は、パーソナライズされた、非常に効果的なヘルスケアの新しい時代のための科学的基礎を築くだろう。 私たちは、全てのバックグラウンドの人々と協力して、この国の健康のために大きな一歩を踏み出すことを楽しみにしている。」プレシジョンメディシンは、人々のライフスタイル、環境、遺伝子を含む生物学的構成の違いを考慮した、疾患の治療と予防への新たなアプローチである。眼鏡や補聴器では、私たちは長い間、個人のニーズに合わせたカスタマイズされたソリューションを提供されてきた。 もっと最近では、特定のタイプの癌の治療は、患者のDNAを標的とした治療で可能になった。 それでも、個人、その家族、地域社会、医療界に良い選択肢を与えられずに多くの未解決の課題が残っている。

スタンフォード大学の研究者は、新研究でラットの傷ついた肺の呼吸能力を回復させるのに有効なタンパク質模倣物を生物工学により作った。この合成産物は、ヒトの急性肺傷害に対して、より良い、より安価な治療につながる可能性がある。 ラットで使用した際、それはいくつかの生理的尺度で高価な動物由来の製品と同等またはそれ以上の性能を示したと研究は述べている。この研究論文は、5月1日にScientific Reportsにオンラインで掲載された。このオープンアクセス論文は、「肺サーファクタントタンパク質のヘリックス性、両親媒性ペプトイド模倣物による急性肺傷害の有効なインビボ治療(Effective in vivo treatment of acute lung injury with helical, amphipathic peptoid mimics of pulmonary surfactant proteins.)」と題されている。テニスコートぐらいの表面積を持つ風船を膨らませるために必要な力を想像してください。 さらに、その風船にはポケットがあり、湿った内面を持ち、繊細な素材で作られていると想像してください。その風船とはあなたの肺のことです。すべての呼吸は奇跡的なことなのです。石鹸の様な膜または界面活性剤の薄いコーティングが肺の内面の張力を低下させ、吸入するのに必要な力を大きく減少させる。この界面活性剤なくして、呼吸することはできない。スタンフォード大学の生物工学准教授であるAnnelise Barron 博士(写真)は、「肺の界面活性剤には素晴らしい生物学的特性がある。」と述べた。

新しい研究によると、特定の種類のダークチョコレートを食べると健康上の恩恵があるかもしれない。 サンディエゴで行われたExperimental Biology 2018年次会議(2月21-25日)で発表された2つの研究結果は、高濃度のカカオ(カカオ70%、有機砂糖30%)を含むダークチョコレートを摂取すると、ストレスレベル、炎症、気分、記憶、および免疫にポジティブな効果が見られた。カカオがフラボノイドを多く含むことはよく知られているが、認知、内分泌、および心臓血管の健康をどの様にサポートするのかを特定するため、ヒト被験者で効果が研究されたのはこれが初めてである。米国ロマリンダ大学の連合医療専門学校、精神免疫学および食品科学の研究部長 Lee S. Berk 公衆衛生学博士は、両研究の主任研究員を務めた。 「数年前から、ダークチョコレートの糖度の観点からの神経学的機能への影響を見てきた。砂糖が多いほど私たちはより幸せだ。」とBerk博士は述べた。 「短期間または長期間にわたり、通常サイズのチョコレートバーと同程度の少量のカカオの影響を見てきたのはこれが初めてのことである。これらの研究は、カカオの濃度が高いほど認知、記憶、気分、免疫、および他の有益な効果への影響がよりポジティブなものであることを示している」カカオのフラボノイドは、脳や心臓血管の健康に有益な既知のメカニズムを有する極めて強力な抗酸化剤および抗炎症剤である。下記の結果は「ダークチョコレート(70%カカオ)がヒトの遺伝子発現に及ぼす影響:カカオは細胞の免疫応答、神経シグナル伝達および知覚を調節する」(4月23日月曜日10: 00〜12:00、サンディエゴ・コンベンションセンター・展示ホールA〜D)で発表された。

それはDNAだが、私たちの知っているそれではない。オーストラリアの研究者は世界で初めて細胞内に“iモチーフ”と呼ばれる新しいDNA構造を同定した。DNAのねじれた“結び目”、iモチーフはこれまで生きている細胞の中で直接見られたことはなかった。ガルバン医学研究所の新しい発見は、Nature Chemistryの2018年4月23日にオンラインで公開された。 

免疫革命と呼ばれる中、ペンシルベニア大学のアブラムソンがんセンター(UPenn)のディレクターであるRobert H. Vonderheide MD,PhD(写真)が、癌免疫療法の分野で革新的な進歩を続けている。Vonderheide博士は画期的な免疫療法の成功について、多くの患者が初期の成功の後に反応しなくなるか、または再発するかのいずれかであるため、甘くないと説明している。 

科学誌Cellの2018年3月22日号に掲載された論文によると、非常に初期の段階のヒト胚でヒト発生の謎を解明するのに一歩近づく、ヒト胚の遺伝子発現を活性化させる重要なファクターを中国の科学者が明らかにした。この論文は、「ヒト初期胚のクロマチン・アクセシビリティの状況と進化との関連(Chromatin Accessibility Landscape in Human Early Embryos and Its Association with Evolution.)」と題されている。ヒトの生命は受精卵から始まる。 しかし、受精後の最初の2日間は、ヒト胚で遺伝子発現はほとんどなかった。 これまでゲノムがどのように活性化し、初期胚で遺伝子発現を開始するのか、科学者は知らなかった。「遺伝子発現を活性化するものは何か?このパズルは世界中の科学者を悩ませています。私たちはこれを最初に見つけました」と、この論文の上級著者であるLiu Jiang博士は述べている。 ヒトが成長する間、適切な時と場所で異なる遺伝子が発現されなければならない。DNAに保存されている遺伝コードは、遺伝子発現によって「解釈」され、これにより個体の特徴が生じる。中国科学アカデミー(CAS)の北京研究所のLiu博士主導のチーム、Shandong大学・繁殖医学センターのChen Zijiang博士、Guangzhou医科大学のLiu Jianqiao博士のグループは、転写因子であるOct-4が接合体のゲノム発現を活性化するのに重要な役割を果たすことを見出した。

2018年1月16日付JAMA Internal Medicineオンライン版に掲載された新Kaiser Permanente研究は、長期的な全国研究で6か月以上母乳育児すると、妊娠可能期間を通じて母体の2型糖尿病発病リスクが半分近くまで低下することを突き止めたと述べている。このオープン・アクセス論文は、「Lactation Duration and Progression to Diabetes in Women Across the Childbearing Years: The 30-Year CARDIA Study (授乳期間と妊娠可能期間を通じての糖尿病発症の関係:30年間のCARDIA研究)」と題されている。 論文の筆頭著者であり、Kaiser Permanente Division of ResearchのSenior Research Scientistを務めるErica P. Gunderson, PhD, MS, MPHは、「母乳育児期間と糖尿病発症リスク低下の間には、考えられる他のリスク・ファクターをすべて計算に入れても強い関連性が認められた」と述べている。出産の度に6か月以上母乳育児していた女性は、母乳育児をまったくしなかった女性に比べると、2型糖尿病を発症するリスクが47%も低下していた。また、母乳育児の期間が6か月以下の女性の場合、糖尿病リスク低下率は25%だった。

ほとんどの女性は妊娠中につわりを経験するが、妊娠中の女性の約2%が、ときには症状が深刻で入院が必要な程の、より重度の悪心および嘔吐の症状を経験する。妊娠中の重度妊婦とも呼ばれるこの状態は、ケイト・ミドルトン/ケンブリッジ公爵夫人が妊娠中に耐えたものと同じである。 UCLAの研究者によって主導され、2018年3月23日にNature Communicationsのオンライン版に公開されたこの新しい研究では、前回の研究では原因が特定されていない、催吐性重篤度に関連する2つの遺伝子が同定された。GDF15およびIGFBP7として知られているこの遺伝子は、胎盤の発達に関与しており、早期妊娠および食欲調節において重要な役割を果たす。このオープンアクセスの論文は「胎盤と食欲遺伝子GDF15とIGFBP7は、妊娠悪阻に関連している。(Placenta and Appetite Genes GDF15 And IGFBP7 Are Associated with Hyperemesis Gravidarum.)」と題されている。

大きな出っ歯、シワだらけで毛が無い身体。こんなハダカデバネズミは「かわいい齧歯類」コンテストでとても勝てそうにない。しかし、ハダカデバネズミの寿命は齧歯類としては最長の30年という長寿であり、加齢性の疾患に驚くほどの耐性があるため、加齢とがんという謎を解くカギを与えてくれている。それこそが、University of Rochester のVera Gorbunova, PhD、Andrei Seluanov, PhDら生物学教授とポスドク研究員のYang Zhao, PhDのハダカデバネズミ研究の動機であり、2018年2月5日付PNASオンライン版に掲載された研究論文の筆頭著者、Dr. Zhaoは、「この齧歯類で、細胞老化と呼ばれる抗がんメカニズムが見られるだろうか? 見られるとすれば、そのメカニズムはマウスのような寿命の短い動物とどのように異なるのだろうか、ということを調べた」と述べている。 

トカゲには特別な超能力がある。鳥類は羽根を再生できるし、ほ乳類は皮膚を再生できる。しかし、トカゲはしっぽのような構造全体を再生できるのだ。このような違いはあっても、動物はすべてトカゲのような共通の祖先から進化してきたものだ。アメリカ全体に広がっているトカゲのグループ、アノールは、ダーウィン・フィンチのように、様々な島や、大陸本土の様々な棲息地の条件に適応している。現在では、その種は400を超える。Arizona State University (ASU) の研究者は、パナマのSmithsonian Tropical Research Institute (STRI) を通じてパナマで採集した3種のトカゲと、アメリカ南東部で採集した1種のトカゲの系統樹を再構成し、トカゲのゲノムのDNAコード全体を他の動物と比較した。その結果、松果体その他の内分泌腺のある間脳で、色覚、ホルモン、オスがメスを誘うために上下に揺らす喉袋などに関わる遺伝子の変化が起きており、それが種の境界を形成している可能性があることを突き止めた。四肢の発達を調節する遺伝子も特に急速に進化している。責任著者でASU School of Life Sciencesの教授を務めるDr. Kenro Kusumiは、「リクガメのような爬虫類は何百万年もの間、ほとんど変わっていないが、アノール・トカゲは急速に進化しており、様々な形や行動の違いを生み出している。今はゲノム全体をシーケンシングすることも低コストかつ容易になっており、今回の研究で急激な進化の分子遺伝学的証拠がつかめており、この進化こそが動物の棲む環境が異なればその身体にも著しい違いが生まれる理由かも知れない」と述べている。この研究は2018年2月1日付Genome Biology and Evolutionのオープンアクセス論文として掲載されており、「Comparative Genomics Reveals Accelerated Evolution in Conserved Pathways during the Diversification of Anole Lizards (比較遺伝学研究によりアノール・トカゲの多様化の過程で保存経路の急速な進化が明らかに)」と題されている。Dr. Kusumi研究グループは、University of Arizona College of Medicine-Phoenixの同僚と共同で研究を続けており、爬虫類のゲノムが爬虫類の再生能力や様々な体形に発達する能力に及ぼす影響に特に関心を抱いている。

遺伝環境論争は、ヒトが腸内に持っている通常有益な細菌群、マイクロバイオーム(微生物叢)の構成にまで広がっている。研究に次ぐ研究でマイクロバイオームが私達の健康のほぼ全ての面に関わっていることが突き止められており、また、人それぞれに異なっているマイクロバイオームの構成が体重増加やその人の気分にまで関わっている可能性も示されている。一部のマイクロバイオーム研究者は、このような個人差は遺伝子の違いから始まっているのではないかとしているが、イスラエルのWeizmann Institute of Scienceで行われた大規模な研究はこの遺伝子説に反証しており、さらにマイクロバイオームと健康の間には私達が考えている以上に重要な関係を示す証拠を提出している。事実、その研究でも作業仮説としてマイクロバイオームの個人差に遺伝子が大きく関わっているのではないかと予想していた。その仮説に従えば、遺伝子がマイクロバイオームの棲息する環境を決定し、さらに個々の環境がそこで繁殖する細菌種を決定するはずだった。ところが、実際には宿主の遺伝はマイクロバイオームの構成にごくわずかしか関わっておらず、大人口で考えた場合、わずか2%程度の違いにしかならないことを突き止め、Weizmannの研究チームにとってはむしろ意外だった。

肺再生研究を飛躍的に進める画期的な結果が、このたび、シンガポール科学技術研究庁(Agency for Science, Technology and Research (A*STAR))遺伝子研究所(GIS)と分子生物学研究所(IMB)との共同研究で得られた。彼らの研究は、肺に存在する特殊な幹細胞である末梢気道胚細胞(DASCs)が、損傷を受けた胚組織を新しい肺胞に取り換える機能を有する事を実証し、肺の再生研究に大きな基礎を築いた。この研究は2011年10月28日付けのセル誌に掲載された。肺は、インフルエンザや慢性閉塞成敗疾患(COPD)などの慢性呼吸器疾患を含む様々な肺疾患により損傷を受ける。 

報いられない愛に苦しまない種はない。しかし、アメリカのテキサス州在来種の個体全てがメスで無性生殖をすることで知られたカダヤシ属の淡水魚、アマゾン・モーリーは何千年も栄えてきた種である。最近、この魚のゲノムシーケンス解析が完了しており、その性の生物学的基礎情報から学ぶことは多いのではないかと研究者は期待している。テキサス州・メキシコ国境線に沿った淡水の河川はこの進化異常の種の棲息地になっており、この魚は自然の法則に反して受精なしで胚の発育と発達が起き、母親とまったく同一のクローンの娘だけができる単為生殖という自然の形式によって繁栄してきた。Texas A&M University Hagler Institute for Advanced Study (HIAS) のFaculty Fellow、Dr. Manfred Schartlは、この魚の生殖がどのようにして通常の雌雄両性生殖から逸れたのか、またどのようにしてアマゾン・モーリーが種としてその過程を無事に通過したのかをより深く理解するため、世界で初めてアマゾン・モーリーと、この独特な魚をつくり出した元の親種のゲノムのシーケンス解析を完了した。National Institutes of Healthの研究資金を受けて行われたこの研究の結果は、2018年2月12日付Nature Ecology & Evolutionオンライン版に掲載された。このオープンアクセス論文は、「Clonal Polymorphism and High Heterozygosity in the Celibate Genome of the Amazon Molly (アマゾン・モーリーの独身型ゲノムにおけるクローン多形性と高異型接合性)」と題されている。

マサチューセッツ州Woods HoleのMarine Biological Laboratory (MBL) 他の研究機関の共同グループの研究によると、ヤツメウナギの脊髄損傷自然治癒にかかわっている遺伝子の多くが哺乳動物の末梢神経系の修復でも大きく関わっている。このことから、長期的に見れば、人間の脊髄損傷治療法向上のために同じ遺伝子を利用できるようになる可能性がある。 2018年1月15日付Scientific Reportsオンライン版に掲載された研究の著者の一人であり、MBL, Eugene Bell Center for Regenerative Biology and Tissue EngineeringのDirectorを務めるJennifer Morgan, PhDは、「研究で、哺乳動物の末梢神経系の再生の原動力となる転写因子の中心部と大きくダブることが突き止められた」と述べている。 

Scripps Research Institute (TSRI) とJanssen Research & Development (Janssen) の研究チームは、広いスペクトルのインフルエンザ・ウイルス株を中和する人工ペプチド分子を開発した。ペプチドはアミノ酸の短い鎖であり、タンパク質と似ているがもっと小さくて単純な構造である。この人工ペプチド分子はインフルエンザを標的とする医薬になる可能性を秘めている。毎年、世界中で50万人がインフルエンザで亡くなっており、アメリカ経済にとって病気欠勤日と生産性の損失で年間何十億ドルもの負担になっている。新しく開発されたペプチドは、アジア地域で何百人もの人に感染し、死者さえ出した鳥インフルエンザ株のH5N1や、2009年から2010年にかけて世界的に蔓延した豚インフルエンザのH1N1などを含め、世界的にもっとも一般的なグループ1のインフルエンザA型ウイルスの伝染力をブロックするものである。同チームは、最近発見された、事実上すべてのインフルエンザA型株を中和できる「スーパー抗体」という酵素がウイルスを捕捉する結合部位を取り入れたペプチドを設計した。抗体は大きなタンパク質であり、つくるのにはコストもかかり、人体への注入も注射か輸液で行わなければならない。しかし、「研究で開発されたペプチドは、将来的には錠剤タイプの医薬として利用できる可能性がある」。TSRIのHansen Professor of Structural Biologyで、共同主任研究員を務めるDr. Ian Wilsonは、「私達の新しい研究成果が示すように、広いスペクトラムでウイルスを中和する大きな分子の抗体と基本的に同じことを小さな分子でやらせるというのは将来性のある楽しみな戦略だ」と述べている。この新しいペプチドに関する研究論文は、2017年9月27日付Science誌オンライン版にFirst Release論文として掲載されており、「Potent Peptidic Fusion Inhibitors of Influenza Virus (インフルエンザ・ウイルスの融合阻害剤に有望なペプチド開発)」と題されている。このペプチド開発の基礎になった2つのインフルエンザ・スーパー抗体、FI6v3とCR9114はそれぞれ2011年、2012年に発見されており、それ以来、TSRIのDr. Wilson研究室は、Janssenその他の世界各国の構造生物学研究室と提携し、広いスペクトラムのウイルスを中和する抗体がどのようにインフルエンザ・ウイルスと結合するかを原子スケールでマップ化している。ワシントン大学のデイビッド・ベイカー博士が率いる研究チームは、最近これらの抗体構造データを用いて抗体よりも小さくインフルエンザウイルスに同様に結合し、広範なインフルエンザウイルスを中和する新しいタンパク質を設計した。Janssenの科学者と共同でTSRIが新たに取り組んだのは、インフルエンザウイルスの標的領域を標的とするより小さな非タンパク質様分子の開発でした。研究チームは、分子設計と合成、ウイルス結合試験、および原子レベルの構造評価を数回実施した後、潜在的なインフルエンザ阻止分子としてよく機能する環状の「環状」構造を持つ4つのペプチドセットを開発しました。このペプチドは、実験室実験でこれらのウイルスによる感染を中和する強力な能力と同様に、広範な群1群のインフルエンザAウイルスに対して高い結合親和性を示した。対象とする第1群のインフルエンザA型ウイルスにはH1、H2、H5およびH6サブタイプが含まれる。このペプチドはまた天然タンパク質に見出されないアミノ酸構築ブロックを組み込みこれはそれらの環状構造と同様に、そうでなければ血流からペプチド薬物を迅速に除去することができる酵素に対して比較的耐性であった。 P7と命名された4つのペプチドの中で最も最適化されたものは、マウスまたはヒト血漿に曝露されたとき、またはマウスに注入されたときに数時間生存した。「これらのペプチドは、薬物のような安定性を有し、動物モデルにおける抗ウイルス効果のさらなる試験のための良い候補となり、」研究の共同筆頭著者である博士ラメシュワー・U・カダム、ウィルソン研究所の上級ポスドク研究員は語ります。Janssenの主任科学者Jarek Juraszekと一緒にいます。ペプチドは模倣するように設計された抗体と同様に、インフルエンザウイルスの主要エンベロープタンパク質赤血球凝集素の下部にある疎水性ステム溝と呼ばれる部位に結合する。この部位の分子構造は、ウィルスが宿主細胞に浸透して感染を開始させる形状シフトプロセスにおいて重要な役割を果たすので、インフルエンザ株の中ではあまり変化しない傾向がある。 Kadam博士の構造評価によりペプチドがこの形状変化を防止し、それによって宿主細胞の浸透を妨げることが見出された。「感染の第1段階を標的とする治療は、感染の後期段階を標的とする既存の抗インフルエンザ薬を補完するだろう」とカダム博士は述べた。これらのペプチドは、それらが基づく抗体として包括的にそれらのウイルス標的に結合しない。例えば、グループ2のインフルエンザA型ウイルスでは、標的部位の重要な部分を遮断する赤血球凝集素上の糖分子を追い払う、または回避するより嵩張る抗体の能力が欠けていた。しかしKadamはさらなる研究により1型および2型インフルエンザAおよびインフルエンザB型株でさえも活性を有するペプチドが得られる可能性があると述べた。「抗体についての構造情報を利用して、ほとんど同じ分子の結合親和性とインフルエンザウィルスに対する中和の幅を持つ分子を作ることができたのは画期的なことです」とカダム博士は述べています。ウィルソン博士は、このような小分子でもこのような結果を得ることができるとの懐疑的な意見がありましたが、この研究は可能であることを証明しています。紙の他の共著者はBoerriesブランデンブルク、クリストフ・バイック、ヴィム・シェペンズ、バート・ケストレイン、バート・ストープス、ロブ・ブリーケン、ジャン・バーモンド、ウーター・グーシャー、チャン・タング、ロナルド・ボーゲルズ、ロバート・フリーセン、ジャアップ・ガウズミットと共同シニア研究者マリア・バンましたDongen【BioQuick News:Scientists Develop Broad-Spectrum Peptide Inhibitors of Influenza Virus】 

動物の複雑さを決定する遺伝子、人間をミバエやウニよりも複雑な生き物にしている遺伝子が初めて突き止められた。ある動物の細胞が他の動物の類似の細胞よりもかなり複雑にできているということがあるのはなぜか、その秘密は特定のタンパク質と、そのタンパク質が細胞核内の動きを調節する能力にあるらしいことが明らかにされた。イギリスのUniversity of Portsmouthの生化学者、Dr. Colin Sharpeと同僚研究者の研究論文は、2017年9月25日付PLoS One誌オンライン版に掲載されている。このオープンアクセス論文は、「Relating Protein Functional Diversity to Cell Type Number Identifies Genes That Determine Dynamic Aspects of Chromatin Organisation As Potential Contributors to Organismal Complexity (タンパク質の機能多様性を細胞タイプの数と関連させることで、クロマチン構成の動的状態を決定する遺伝子を生物複雑性の要因となる可能性を突き止める)」と題されている。Dr. Sharpeは、「ほとんどの人が、ほ乳類、特に人間は虫やミバエよりも複雑だという考えにうなずくが、その理由をほんとうに知っている人はいない。長年、私も他の者もその疑問が頭から離れなかった。動物の複雑さを測る一般的な尺度の一つとして細胞の種類の数がある。しかし、遺伝子レベルでどのようにして複雑な生命体が構成されるのかについてはほとんど分かっていない。多細胞動物では遺伝子総数はわずかな違いしかなく、ゲノム中の遺伝子の数が動物の複雑さを決める因子とは考えられない。そうすると、他の因子を考えなければならない」と述べている。Dr. SharpeとMRes学生のDaniela Lopes Cardosoは、人、マカーク・サルから線虫、ミバエまで9種の動物のゲノム解析データを大量に調査し、それぞれが遺伝子レベルでどれほどの多様性を持っているかを計算した。その結果、少数のタンパク質が、他のタンパク質や細胞核内のDNAのパッケージであるクロマチンとの相互作用に優れていることに気づいた。Dr. Sharpeは、「その少数のタンパク質こそ、動物の複雑さの度合いが大きく異なる要因として考えられるようだ。私達は、DNAに直接作用して他の遺伝子を調節する遺伝子を見つけられものと予想していたがそうではなかった。実際にはクロマチンと相互作用する遺伝子を見つけたのだった。この研究の結果から、特定のタンパク質が相互作用しあって細胞核中のクロマチンの構成を動的に調節する能力が高くなることが動物の複雑さの決めてであることが示唆されている」と述べている。

LSU Health New Orleans, Neuroscience Center of ExcellenceのBoyd ProfessorとDirectorを兼任するNicolas Bazan (photo), MD, PhDの率いる研究グループは、傷害や疾患に反応して細胞間情報伝達と神経炎症/免疫活動を同調させる、これまで知られていなかったクラスの化学物質を脳の中に見つけた。このクラスの化学物質は、elovanoids (ELVs) と呼ばれ、オメガ3極長鎖多価不飽和脂肪酸 (VLC-PUFAs, n-3) で構成されている生理活性的な化学的伝達物質である。 

University of California, Berkeleyの研究グループは、CRISPR-Cas9遺伝子編集技術を細胞内に送り込む方法を新しく考案し、マウス・モデルを使って、筋肉衰弱の疾患であるデュシェンヌ型筋ジストロフィーを引き起こす突然変異を修復できることを確かめた。この新研究では、デュシェンヌ型筋ジストロフィーのマウスにCRISPR-Goldと名付けられたCRISPR-Cas9輸送系を1回注射するだけで、対照グループに比べて突然変異遺伝子修復率18倍、筋力と敏捷性テストで2倍の成績を達成した。この研究の共著者で、UC BerkeleyのMolecular and Cell BiologyとChemistryの教授を兼任するDr. Jennifer DoudnaとMax Planck Institute for Infection Biology所属のEmmanuelle Charpentierが、2012年にCas9タンパク質を転用して、安価、正確かつ使いやすい遺伝子編集技術を開発して以来、研究者は、CRISPR-Cas9を基礎とした治療法が遺伝病の治療に革命をもたらすのではないかと期待している。しかし、遺伝病治療法の開発は、医学界でも依然として難問のままである。それというのも、遺伝病のほとんどは、疾患の原因となる遺伝子の突然変異を正常なシーケンスに回復することでしか治療できず、従来の治療法ではそれは不可能だからである。しかし、CRISPR/Cas9なら、突然変異したDNAを切断し、相同組換えDNA修復を開始することで遺伝子突然変異を修復できるのである。ただし、このCRISPR-Cas9ベースの治療法を実現するためには、Cas9、Cas9を特定の遺伝子に導くガイドとなるRNA、ドナーDNAなど必要な材料を安全に細胞に送り届ける手段を開発しなければならない。CRISPR-Cas9を細胞に送り込む一般的なテクニックとして、ウイルスを用いる方法があるが、その方法にもいくつも厄介な問題がある。このCRISPR-Goldの場合にはウイルスを必要としない。BerkeleyのバイオエンジニアリングのNiren Murthy、Irina Conboy両教授の研究室の指導で行ったこの新研究では、金のナノ粒子を主要材料とするCRISPR-Goldという新しい手法で、Cas9という、DNAに結合切断するタンパク質、ガイドRNA、ドナーDNAをともに生体の細胞に送り込み、遺伝子突然変異を修復できることを実証している。「CRISPR-Goldは、ウイルスを使用せずに、遺伝子変異を修正するために必要なCRISPRコンポーネントのすべてを提供することができる送達手段の最初の例です」とMurthy博士は言います。この研究は、Nature Biomedical Engineeringの2017年10月2日にオンラインで公開されました。この論文は、「Cas9リボ核タンパク質のナノ粒子送達およびインビボでのドナーDNAはホモロジー指向DNA修復を誘導する」と題されている。CRISPR-Goldは、ホモロジー指向修復と呼ばれるプロセスによってDNA突然変異を修復する。科学者たちは、突然変異を認識し、DNAを突然変異を是正するRNAガイドであるCas9タンパク質と同じ場所と時間で活動する必要があるため、相同性指向修復ベースの治療法の開発に苦労している。これらの課題を克服するために、Berkeleyの科学者は、これらの成分をすべて一緒に結合する配送容器を発明し、その容器が多種多様な細胞型の中にあるときにそれらを放出し、相同性指向修復を誘発する。 CRISPR-Goldの金ナノ粒子はドナーDNAをコートしCas9にも結合します。マウスに注射すると、それらの細胞はCRISPR-Goldのマーカーを認識し、その後送達容器を輸入します。その後、一連の細胞機構を介して、CRISPR-Goldが細胞の細胞質に放出され、分解され、急速にCas9とドナーDNAが放出されます。Duchenne筋ジストロフィーをモデルとしたマウスの筋肉組織へのCRISPR-Goldの単回注射は、疾患を引き起こすジストロフィン遺伝子の5.4%を野生型または正常な遺伝子配列に回復させた。この補正率はCas9およびドナーDNA単独で処置したマウスよりも約18倍高かったが、0.3%の矯正率しか経験しなかった。重要なことに、研究者らは、CRISPR-Goldがジストロフィンの正常な配列を忠実に回復したことを指摘している。これは遺伝子の欠損部分のみを取り除き、短くして病気をより軽度の疾患に変換する。CRISPR-Goldはまた、筋肉が正常に機能しない病気の特徴である組織線維症を軽減することができ、Duchenne筋ジストロフィーを有するマウスにおいて強度および敏捷性を向上させた。 CRISPR-Gold処置マウスは、コントロールを注射したマウスと比較してマウスの強さおよび敏捷性に関する共通の試験において、吊り時間において2倍の増加を示した。「これらの実験は、CRISPR成分のすべてを同時にカプセル化できるナノ粒子を単に開発することによって、相同性指向修復のプロセスを介して遺伝子突然変異を安全に矯正できる非ウイルスCRISPR治療法を開発することが可能であることを示唆している」Murthy博士前記。この研究は、Cas9タンパク質送達に対するCRISPR-Goldのアプローチが、毒性に加えて、このDNA切断酵素の連続発現によるCas9の副作用を増幅するCRISPRのウイルス送達よりも安全であることを見出した。研究チームがCRISPR-Goldの遺伝子編集能力をマウスで試験したところ、CRISPR-GoldはDNA損傷を最小限に抑えながらDuchenne筋ジストロフィーを引き起こすDNA変異を効率的に是正することが分かった。研究者らは、CRISPR-Goldの標的外DNA損傷を定量化し、CRISPRに曝露されなかった典型的な細胞(0.005-0.2%)における典型的なDNA配列決定エラーの損傷レベルと類似の損傷レベルを見出した。可能な免疫原性を試験するために、CRISPR-Gold注射の24時間後および2週間後にマウスの血流サイトカインプロフィールを分析した。 CRISPR-Goldは、複数回の注射または体重減少後の血漿中の炎症性サイトカインの急激なアップレギュレーションを引き起こさず、CRISPR-Goldを安全に複数回使用することができ、筋肉における遺伝子編集の治療ウインドウが高い組織。「CRISPR-Gold、より広義には、CRISPRナノ粒子は、遺伝子編集ツールのより安全で正確に制御された送達のための新しい道を開く」とDr. Conboyは語った。 「最終的に、これらの技術は、デュシェンヌ型筋ジストロフィー症や他の多くの遺伝病の新薬に発展する可能性があります。CRISPR-Goldがヒトの遺伝病の有効な治療法であるかどうかを識別するための臨床試験が必要となるでしょう。研究の共著者であるKunwoo LeeとPark Hyo Minは、CRISPR-Gold技術を人間に翻訳することに重点を置いている新興企業GenEdit(Dr. MurthyがGenEditに所有権を持つ)を結成した。 Murthy博士とConboy博士の研究室では、CRISPRを血流から組織に送達し、成体幹細胞を優先的に標的とする次世代の粒子にも取り組んでいます。これは、幹細胞と前駆細胞細胞は遺伝子編集、自己複製および分化が可能である。「遺伝病は致命的な死亡率と罹患率を引き起こし、それらを治療する新しい戦略が大いに必要とされている」とDr. Murthyは述べた。 「CRISPR-Goldは、Cas9タンパク質、ガイドRNA、ドナーDNAの非ウイルス性送達を介してインビボで病気の原因となる遺伝子変異を修正することができ、遺伝病の治療薬として発展する可能性がある」と語った。CRISPR-Goldは、一本鎖ドナーDNAとハイブリダイズし、続いてCas9と複合体を形成し、かつそのエンドソームを破壊するポリマーによってカプセル化された、チオール修飾オリゴヌクレオチド(DNA-チオール)にコンジュゲートした15ナノメートルの金ナノ粒子からなる細胞。(画像クレジット:Murthy / Conboy / Nature Biomedical Engineering)【BioQuick News:CRISPR-Gold Delivery Vehicle for CRISPR-Cas9 Fixes Duchenne Muscular Dystrophy Mutation in Mouse Model】 

台湾や沖縄でハブと呼ばれるクサリヘビ科のヘビにかまれると一生障害が残ることもあり、場合によっては死に至ることもある。しかし、その毒に関しては依然として謎のままである。毒の組成は非常にばらつきがあり、同腹仔の間でさえ異なっていることがある。また、この毒素の混合物は何世代もかけて変化してきた。2017年9月27日付Genome Biology and Evolutionのオンライン版に掲載されたこの研究論文は、ヘビ毒の進化の解明を進めている。この研究グループは、初めてハブのゲノム・シーケンスを解析し、タイワンハブ (Protobothrops mucrosquamatus) のゲノムを近縁種、サキシマハブ (Protobothrops elegans) のゲノムと比較した。この論文は、「Population Genomic Analysis of a Pitviper Reveals Microevolutionary Forces Underlying Venom Chemistry (ハブの集団ゲノム解析で、ハブ毒化学組成の小進化駆動力を解明)」と題されている。沖縄県庁の統計によれば、過去1年間に沖縄だけで50件をヘビ咬傷事故が起きており、世界保健機関 (WHO) によれば、世界全体では年間81,000人から138,000人がヘビに咬まれて亡くなっている。特に発展途上国や農村地域は毒蛇に出会うことも多く、一方で医療機関も少ないため、ヘビの咬傷は重大事になりやすい。そのような地域では効果的な抗毒素を開発することが住民の生死を分ける結果になる。この研究論文の首席著者で、Okinawa Institute of Science and Technology (沖縄科学技術大学院大学、OIST) のEcology and Evolution Unit (生態・進化学ユニット) の准教授、Dr. Alexander Mikheyevは、「長年、ヘビ毒は急速に進化することが知られていた。その理由としてもっとも一般的に言われているのが自然淘汰だった。しかし、それだけがこの進化駆動力ではないのではないかと疑問視する根拠がある」と述べている。OISTとOkinawa Prefectural Institute of Health and Environment (沖縄県衛生環境研究所) の研究グループは、タイワンハブと、沖縄の侵入種になっているサキシマハブの標本30種からヘビ毒と軟組織のサンプルを採取し、ヘビ毒遺伝子のシーケンス全体をマップ化した。その結果、ヘビ毒の進化には複数の要因が関わっていることが示されている。ヘビ毒の化学組成の進化を理解するためには、その冗長性を理解することが不可欠である。多発型航空機ではエンジン一つが故障しても飛び続けることができる。ヘビ毒も複数システムを備えており、どれか一つが故障してもヘビが生存を続けられるように保証している。ヘビ毒はタンパク質と微小な有機分子で構成されており、獲物を咬むことで獲物の血圧や血液凝固など重要な生理系を複数箇所で攻撃する。ヘビ毒の構成分子の一つが十分に効果を発揮しなかった場合でも他の分子が効果をもたらしてくるのである。

2017年10月18日、フロリダ州オーランドで開催された2017年American Society of Human Genetics (ASHG) 年次会議においてプレゼンテーションのあった研究によると、ヒト・ゲノム中のノンコーディングDNAの大きなセグメントが重複されてきたことが人間と他の霊長類との違いを生んだ可能性がある。調節塩基配列を含むこのような重複と人間の特徴と行動に及ぼすその影響を突き止めれば人間の疾患の遺伝的要因が説明できるようになる可能性がある。この研究の報告を行ったPaulina Carmona-Mora, PhD、Megan Dennis, PhDや同僚研究者らUniversity of California, Davisの研究グループは、ヒト・ゲノムにはあっても他の霊長類やその他の動物に見られない、1,000塩基対以上の長さのDNAセグメントの反復というヒト固有の重複 (HSD) の履歴を調べた。また、その研究では、遺伝子コードを持たず、他の遺伝子の発現を調節するだけのHSD領域に注目した。

フロリダ州オーランド市で開催された2017年American Society of Human Genetics (ASHG) 年次会議の10月19日には、世界の遺伝学専門家を対象とした意見調査が発表され、ヒトのゲノム編集について一般社会と意見の一致するところもあれば異なるところもあるという結果が明らかにされた。Stanford Center for Biomedical EthicsのCertified Genetic Counselorを務めるProfessor Kelly Ormond, MSがこの調査結果発表を行った。 

ドイツのRuhr-Universität Bochum, burn unitとイタリアのUniversity of Modena, Center for Regenerative Medicineの医療チームは、遺伝疾患で広範な皮膚の損傷を受けている児童に遺伝子組み換え幹細胞から増殖した皮膚を移植し、治療に初めて成功した。少年の症状はいわゆる” butterfly child”と呼ばれる遺伝性の表皮水疱症に苦しんでおり、表皮の約80%が損傷を受けるひどい状態だった。既存の治療法がすべて失敗したことから、Bochumの医療チームは実験的な治療を施してみることにした。 

University of Cambridge (UK) の研究者が行った新研究は、ヒツジが写真からでも人間の顔を認識でき、また事前の訓練なしに飼い主の写真を識別できるとしている。2017年11月8日付Royal Society: Open Scienceオンライン版に掲載されたこの研究は、ヒツジの認識能力を観察するために行っているいくつかの実験の一つである。このオープンアクセス論文は、「Sheep Recognize Familiar and Unfamiliar Human Faces from Two-Dimensional Images (ヒツジが平面画像で見慣れた人と見慣れない人の顔を識別)」と題されている。ヒツジは比較的脳も大きく、また寿命も長いため、ハンチントン病など神経変性疾患の動物モデルに適している。また、顔を認識する能力は人間のもっとも重要な社会的能力の一つである。見慣れた人の顔をたやすく認識できるし、見慣れない人の顔でも画像を繰り返し見せられれば認識できるようになる。ヒツジもイヌやサルなどと同じように社会性動物であり、他のヒツジだけでなく、見慣れた人も認識できる。ただし、ヒツジが顔貌情報を処理する全体的な能力についてはほとんど知られていない。University of CambridgeのDepartment of Physiology, Development, and Neuroscienceの研究チームは8頭のヒツジを訓練し、コンピュータ・スクリーンに表示された4人の有名人の肖像写真を認識させる試みを行った。4人の有名人にはFiona Bruce、Jake Gyllenhaal、Barack Obama、Emma Watsonを選んだ。その訓練では、ヒツジが特別設計の囲いを歩き回るようになっており、囲いの一方の端に置かれた2台のコンピュータ・スクリーンに2つの写真が映写されている。スクリーン近くに設定された赤外線ビームを自分の体で遮ることで有名人の写真を選択すると報酬の餌が与えられるようになっているが、もし、間違った写真を選ぶとブザーが鳴るだけで報酬の餌は出てこない。何度も繰り返すうちにヒツジは有名人の顔を報酬と結びつけることを覚えた。この訓練が済んだ後でヒツジに2枚の写真を見せた。一つは有名人の顔、もう一つはそれ以外の人の顔で、ヒツジは10回のテストのうち8回まで見覚えた有名人の顔を選んだ。これらの最初のテストでは、羊は正面から顔を見せましたが顔をどれだけうまく認識しているかをテストするために次に顔を斜めに見せました。予想どおり羊の性能は低下しましたが人間がその作業を実行したときに見られるものに匹敵する約15%だけでした。最後に研究者は羊が事前訓練をせずに写真からハンドラーを認識できるかどうかを調べた。ハンドラーは通常羊と一緒に1日2時間を過ごすので羊は彼らに非常に精通しています。ハンドラーの肖像写真が有名人の代わりにランダムに散在したとき羊は10回のうち7回の顔の上でハンドラーの写真を選んだ。この最終作業の間研究者は興味深い行動を観察した。言い換えれば羊は初めてこのハンドラーの写真イメージを見たときにこの人のイメージを見たことがなかった。羊は最初に(馴染みのない)顔をチェックしハンドラの画像、そして次に慣れ親しんだ顔を再び決定する前に慣れ親しんでいない顔をハンドラの中から選択します。「羊と一緒に働く時間を費やした人は、彼らが自分のハンドラを認識できる個性的な動物であることを知っています」と研究を率いたジェニー・モートン教授は言う。 「私たちの研究では、羊は人間やサルのものに匹敵する顔認識能力を発揮していることが示されています。「羊は長く生きておりサイズや複雑さがいくつかのサルのものと似ています。つまり、ハンティングトン病などの脳の障害を理解するのに役立つモデルです。私たちの研究は、ハンチントン病を引き起こす遺伝子突然変異を持つ羊においてこれらの能力がどのように変化するかをモニターする別の方法を提供してくれます。モートン教授のチームは最近ハンチントン病を引き起こす突然変異を持つように遺伝子組み換えされた羊の研究に着手した。ハンチントン病は、英国の6,700人を超える人々に影響を与えています。それは典型的には成人期に始まる治癒不可能な神経変性疾患である。当初、この病気は運動協調、気分、人格、および記憶ならびに顔の感情を認識することの障害を含む他の複雑な症状に影響を及ぼす。結局、患者は発語や嚥下、運動機能の喪失に苦しみ、比較的早い時期に死亡する。この病気の治療法は知られていませんがその症状を管理する方法はありません。この研究は、ハンチントン病に関連する生物医学研究を支援する米国の慈善団体であるCHDI Foundation、Inc.によって支援されました。【BioQuick News:Sheep Can Recognize Human Faces from Two-Dimensional Images】 

膵臓がんは致命的であり、生存期間中央値は6か月未満である。また、診断後5年生存する膵臓がん患者は20人に1人しかいない。そのように致命的な原因はこのがんの狡猾さにある。がん細胞は身体の奥深くに隠れており、がんが他の器官に広がってしまう末期になるまでどんな症状も示さないのである。University of Pennsylvaniaが中心になって行った研究チームの研究により、将来的には奥深く隠れている転移性がん患部でさえも根こそぎしてしまう治療法の有望な標的が示されている。研究チームが膵臓がんのマウスでこのタンパク質をエンコードしている遺伝子を削除したところ、マウスは長生きし、他の器官へのがん転移が減ったとしている。 University of Pennsylvania, School of Veterinary MedicineのChair of the Department of Biomedical Scienceで、論文の首席著者を務めたDr. Ellen Puréは、「このタンパク質を標的にすることで原発腫瘍に大きな変化があるものと期待していた。確かに原発腫瘍の進行に遅れは出たが、もっと大きな変化は転移にあった。このタンパク質はドラッガブルな標的のように見えており、今後さらにフォローアップ研究を続けることで患者に役立つ新薬に結びつく可能性がある」と述べている。Dr. Puréは、Penn VetのAlbert Lo、Elizabeth L. Buza、Rachel Blomberg、Priya Govindaraju、Diana Avery、James Monslow各Dr.、Taipei Veterans General HospitalおよびNational Yang-Ming University School of Medicine所属のDr. Chung-Pin Li、TaipeiのAcademia Sinica Genomics Research Center所属のDr. Michael Hsiaoらと共同研究を進めた。その研究結果は2017年10月5日付のジャーナル、「Clinical Investigation Insight」オンライン版に掲載されている。このオープンアクセス論文は、「Fibroblast Activation Protein Augments Progression and Metastasis of Pancreatic Ductal Adenocarcinoma (線維芽活性化タンパク質が膵管腺がんの進行と転移を増大させる)」と題されている。 Dr. Puréと同僚の研究チームは、がん生物学について理解を深め、医薬の可能性を広げていくため、研究の分野も、分離したがん細胞の研究からがん細胞と周辺正常細胞との間の相互作用の全容まで昨今ますます広がってきている。いわゆる「腫瘍微環境」の研究から、腫瘍を取り囲んでいる一見「正常な」ストローマ細胞と呼ばれる組織も、様々な因子によって、がんの成長を阻害したり、許したり、さらには促進することさえあることが明らかになってきた。間質は、がんが増殖する「土壌」と呼ばれることもあります。適切な条件は、腫瘍の成長を可能にするか、またはそれを根絶することを妨げる。「腫瘍細胞を採取して正常な間質に置くと、典型的には腫瘍の増殖を抑制する」と、新生細胞を制御不能にして最終的に転移させるためには、間質性が必要です。間質が腫瘍許容性であるか否かには多くの要素が寄与するが、重要であることが示されているものは組織の密度および剛性である。間質は腫瘍細胞に保持され、一方ではそれらの増殖を妨げるが、他方では、再編成され、密に詰まったまたは密度の高い間質は腫瘍増殖を促進し、免疫細胞または薬物が腫瘍自体に達するのを困難にする。腫瘍微小環境の役割に関する以前の研究で、Dr.Puréらは、線維芽細胞活性化タンパク質(FAP)と呼ばれるタンパク質分裂酵素である間質の物理的性質を形成する役割を果たすタンパク質を発見しました。研究者らは、2016年の刊行物において、中程度の大きさのコラーゲンを分解可能な断片に切断することによって、この酵素が間質細胞外マトリックスの主要成分であるコラーゲンを消化することを実証した。間質のこのFAP依存性代謝回転は、腫瘍増殖を増強する。チームが肺および大腸癌のマウスモデルにおいてFAPを欠失または阻害すると、マトリックス材料の蓄積をもたらし、消化されていないコラーゲンが腫瘍を抑制し、適切な血液供給を受けないために腫瘍増殖を阻害した。「コラーゲンは、腫瘍の微小環境の中でもっと理解しなければならないものです。」とDr.Puréは言いました。 「現在のコラーゲンの量だけだと多くの人が考えていますが、それは複雑であり、建築と構造が重要な役割を果たすことを示しています。現在の研究では、FAPを調節することが原発腫瘍の成長を阻害するかどうか、そして重要なことに、他の器官組織を作る際に役割を果たすかどうかを調べるために、結合組織によって支配される腫瘍型である膵臓癌転移病変の影響をより受けやすい。第1に、研究者らは、ヒト患者由来の組織試料を調べ、FAPレベルが予後と相関することを見出した。それらの間質細胞における高レベルのFAP発現を有する患者は、より低いFAPレベルを有する患者と比較して、より短い生存期間を有した。膵臓癌のマウスモデルにおいて、FAP発現を無効にすると、疾患の発症が5週間遅れ、動物の全生存期間が36日延長された。FAPが疾患の経過にどのように影響を与えたかを調べると、FAPが枯渇した腫瘍は壊死の徴候、細胞死の一形態、白血球の浸潤の徴候が多く、FAPは通常、腫瘍を制御する。おそらく、FAPの発現を廃止することのより重要な効果は、膵臓から他の器官への癌の広がりを減少させることであった。「転移を促進するためにFAPが重要であることを我々が示したのはこれが初めてです。 「FAPを薬物で標的化することにより、腫瘍細胞を受け入れる準備が整っていないことがわかっている遠位組織を治療することによって、がんの広がりを遅らせることができます。これは、転移前のニッチを治療することと呼ばれる現象です。希望。今後の研究では、Puré博士のグループは、FAPのどの面が病気の進行を促進するのかを絞り込んでいきます。そのタンパク質切断活性の阻害剤は既に存在しているため、癌を引き起こす役割を担っていることが判明すれば、ヒト療法への道が魅力的になるかもしれません。【BioQuick News:Blocking Fibroblast Activation Protein (FAP) in Normal Cells May Impede Pancreatic Cancer, Penn Vet Team Shows】

University of Colorado (UC) Boulderの研究チームは、身体の自己組織攻撃の原因となるタンパク質を阻害する有望な薬物に似た化合物を発見した。この化合物はいつかリューマチ様関節炎その他の自己免疫疾患の治療に一大改革をもたらすかもしれない。 2017年11月20日付Nature Chemical Biologyに掲載された研究論文の筆頭著者で、BioFrontiers Instituteの生化学教授を務めるDr. Hang Hubert Yinは、「私達は、このタンパク質を休眠状態に閉じ込めるカギを見つけた。これはパラダイム・シフトになる可能性もある」と述べている。この論文は、「Small-Molecule Inhibition of TLR8 Through Stabilization of Its Resting State (TLR8休眠状態の安定化でその働きを阻害する低分子)」と題されている。リューマチ様関節炎、強皮症、あるいは過剰な免疫反応が痛み、炎症、皮膚疾患その他の慢性的な健康障害を引き起こす全身性紅斑性狼瘡など自己免疫疾患に悩むアメリカ国民は2,350万人を超える。 アメリカ国内でもっとも売れている医薬5品目のうち3品目までが自己免疫疾患の症状緩和を目的としている。しかし、自己免疫疾患を完治させる治療法はなく、対症療法も高価なうえに副作用がある。Dr. Yinは、「この疾患の患者が多いことから代わりの治療法の研究もよく行われている」と述べている。長年、研究者は、Toll様受容体8 (TLR8) と呼ばれるタンパク質が先天免疫反応に重要な役割を果たしているのではないかと疑っていた。TLR8はウイルスや細菌の存在を感知するといくつかの段階を経て受動状態から能動状態に変化し、侵入異物を撃退するために一連の炎症シグナルを送り出す。しかし、Dr. Yinの述べるように、「反応も過剰になると疾患を引き起こすため、いわば両刃の剣」になる可能性がある。

小学校で遺伝の意味を教えるのにもっとも手近に用いられるのが生徒の耳たぶの形を親の耳たぶの形と比べなさいというもので、主として耳たぶ下端の線が滑らかに側頭部につながっている密着型と、側頭部から出て垂れ下がっている分離型とがある。この比較は優性遺伝子と劣性遺伝子について教えるもので、簡単なことのようだが、実はそれほど簡単なことではない。University of Pittsburgh (Pitt)のGraduate School of Public HealthとSchool of Dental Medicineが中心になって進め、2017年11月30日付American Journal of Human Geneticsオンライン版に掲載された新研究は、この耳たぶの遺伝ははるかに複雑で、耳たぶの密着度については少なくとも49個の遺伝子の相互関係が関わっていることを明らかにした。この研究論文の筆頭著者で、Pitt Public HealthのDepartment of Human GeneticsとPittのSchool of Dental MedicineのDepartment of Oral Biologyで准教授を務めるJohn R. Shaffer, Ph.D.は、「かなりシンプルな形質が遺伝的には非常に複雑だということが時々ある。その複雑さを理解すれば、遺伝疾患の治療への手がかりが得られるのではないか。そういう遺伝的疾患の中には、モワットウィルソン症候群のように、耳穴を覆うような耳殻や突き出した耳たぶなど、独特の顔貌を特徴とするものがある」と述べている。この研究は、イギリスと中国の研究者の国際的な共同作業で行われ、アメリカの個人遺伝学企業、23andMe Inc.のデータも使っている。この論文の首席著者で、PittのDepartments of Oral Biology and Human Geneticsの准教授を務めるSeth M. Weinberg, PhDは、「この共同作業の優れたところは、大きなサイズのサンプルが得られただけでなく、異なる民族間の参加があり、遺伝学的情報に深みが加わったという点が挙げられる」と述べている。AJHGオープンアクセス論文として掲載されたこの研究は、「Multiethnic GWAS Reveals Polygenic Architecture of Earlobe Attachment (多民族ゲノムワイド関連解析研究で耳たぶ密着度の多遺伝子構造解明)」と題されている。

2017年10月2日、Karolinska InstitutetのNobel Assemblyは、2017年ノーベル生理学医学賞を「概日リズムを制御する分子的仕組みを発見」したJeffrey C. Hall、Michael Rosbash、Michael W. Youngの3氏に授与すると決定した。Jeffrey C. Hallは、1945年、アメリカのニューヨーク生まれ。1971年にワシントン州シアトル市のUniversity of Washingtonから博士号を授与され、1971年から1973年までカリフォルニア州パサディナ市のCalifornia Institute of Technologyでポスドク研究員の地位にあった。 

ナトリウムMRIという造影検査法を使って偏頭痛患者を調べた初の研究で、偏頭痛患者は健康な人に比べて脳脊髄液中のナトリウム濃度がかなり高いという結果が出た。この研究結果は、2017年11月26日から12月1日までシカゴで開かれていたRadiological Society of North America (RSNA) 年次大会の11月28日でプレゼンテーションがあった。 偏頭痛は頭痛の一種で、激しい頭痛や時には吐き気、吐瀉などの症状を特徴としており、女性の18%、男性の6%がこの障害に悩む比較的多い頭痛障害である。偏頭痛患者の中には視覚異常や、アウラと呼ばれる身体症状を経験する者もいる。しかし、偏頭痛の特徴や発作のタイプは患者ごとに様々で、診断は難しい。そのため、偏頭痛と確定されず、治療を受けないままの患者も多い。逆に、もっと一般的な緊張性頭痛などでありながら、偏頭痛の投薬を受ける患者もいる。 この研究論文の著者、ドイツのハイデルベルクのUniversity Hospital Mannheim and Heidelberg University, Institute of Clinical Radiology and Nuclear MedicineのMelissa Meyer, MD, Radiology Residentは、「偏頭痛の診断を助けるか、あるいはむしろ偏頭痛を発見し、偏頭痛と他のあらゆるタイプの頭痛とを判別する診断ツールがあれば非常にありがたい」と述べている。Dr. Meyerの研究チームは、偏頭痛の診断と理解を助ける手段として、脳脊髄液ナトリウムMRIという磁気共鳴造影法を採用した。MRIは原子中の陽子を利用して画像をつくり出すのが普通だが、ナトリウム原子も画像化できる。これまでの研究で、脳の化学反応にナトリウムが重要な役割を果たしていることが示されている。 

生活年齢に比べて肌が若く見える人がいる。クリーム、ローション、薬液注射、外科手術などでこのように若々しい肌を実現しようとする人は多いが、2017年11月14日付Journal of the American Academy of Dermatologyオンライン版に掲載された新しい研究論文は、このように若々しくみずみずしい肌は、特定の遺伝子発現の高さがカギになっているようだとしている。JAADの研究論文は、「Age-Induced and Photoinduced Changes in Gene Expression Profiles in Facial Skin of Caucasian Females Across 6 Decades of Age (白人女性の顔面皮膚の遺伝子発現プロフィールの60年間にわたる加齢性および感光性変化)」と題されている。Beth Israel Deaconess Medical Center, Harvard Medical Faculty Physiciansのdermatologistであり、PresidentとCEOを兼任するAlexa B. Kimball, MD, MPHは、Massachusetts General Hospital所属期にこの研究を進めており、研究論文の筆頭著者を務めている。同氏は、この論文で、「これは持って生まれた遺伝子の問題ではなく、生活している間にどの遺伝子がオンになり、どの遺伝子がオフになるかということである。加齢に影響を受ける様々な皮膚のプロセスを突き止めており、生活年齢より若く見える女性に特有の遺伝子発現パターンを発見した」と述べている。 老化する皮膚の包括的なモデルをつくるため、Dr. Kimballの研究チームは、20歳から74歳までの白人女性158人の日光にさらされた皮膚 (顔面と前腕) と日光から守られていた皮膚 (臀部) から、分子レベル、細胞レベル、組織レベルのデータを集め、総合した。研究の一環として、生活年齢より若く見える女性に共通の遺伝子発現パターンを探した。顔面の皮膚の外見をデジタル写真で撮影し、分析した。また皮膚のサンプルを解析処理し、遺伝子型判定のために唾液のサンプルを採取した。解析の結果、20代から70代の間に酸化ストレス、エネルギー代謝、老化、皮膚バリアなどに関するパスウェイに急速な変化があることが分かった。このような変化は60代から70代にかけて加速される。日光にさらされた皮膚と日光から守られていた皮膚のサンプルを比較した結果、特定の遺伝子変化は光老化による可能性が考えられた。この研究で若く見えた女性の遺伝子発現パターンは、実際に生活年齢で若い女性の遺伝子発現パターンとよく似ており、生活年齢より若く見える女性達は、DNA修復、細胞複製、酸化ストレスに対する応答、タンパク代謝などの基礎的な生物学的プロセスに関わっている遺伝子の活動が活発化していたのである。

人間の脳を特別なものにしている分子レベルの秘密を解明しようとして、多くの研究者が、何千年もの間の進化を促してきたプロセス、認知発達に重要な役割を果たした遺伝子などの解明に取り組んできた。さらには人間の体内時計を制御している遺伝子が、脳の進化に重要な人間固有の遺伝子の働きを調節する役割も引き受けていることを示す新しい研究が発表され、この分野に新しい知見が生まれている。University of Texas (UT) Southwestern, O’Donnell Brain Instituteの研究結果は、脳の機能や、ニューロンが脳の中で所定の位置を見つけるプロセスにCLOCK遺伝子のつくるCLOCKタンパク質が関わる仕組みを解明する道筋を示している。UT Southwestern, Peter O’Donnell Jr. Brain Institute所属の神経科学者、Dr. Genevieve Konopka (写真) は、「特に人間のよく折りたたまれた大型の脳に関して、その進化に重要な遺伝子が研究課題になっている。私達は、CLOCKが概日リズム以外にも様々な遺伝子を調節しているという証拠を見つけており、人間の脳の発達と進化にとって重要な分子的経路の序列の中のキーポイントとして位置づけることができる」と述べている。人間の脳は、人間に最も近い生物のチンパンジーと比べてもはるかに大きい。しかし、脳の認知能力は大きさだけでは決まらず、クジラやイルカなどの哺乳動物は人間より大きい脳を持っている。そのため、人間の脳が他の動物より賢い原因を解明しようと努めてきた。Dr. Konopkaの研究は新皮質という領域に焦点を当てた。新皮質は皮質の中ではもっとも新しく進化した部分と考えられており、独特な折り畳みが特徴で、視覚や聴覚に関連した領域である。2012年、Dr. Konopkaの研究室は、他の霊長目の脳に比べると、人間の脳の新皮質ではCLOCKの発現が増大していることを突き止めたとする研究を発表した。さらにこの研究結果は、これまで概日リズム機能の中心とは考えられていなかった神経領域で体内時計タンパク質が何をしているのか、という疑問を生んだ。2017年12月1日付Genes & Developmentオンライン版に掲載されたこの新研究はいくつかの答を示しており、CLOCKは、脳の進化に重要な一組の遺伝子群を調節しており、他の霊長目と比べると、遺伝子の発現する位置やその度合いに違いがある。また、CLOCKは、認知障害と関連する遺伝子を調節しており、人間の脳の神経細胞移動にも重要な役割を果たしている。この神経細胞移動は、脳内の他の部分でつくられたニューロンがそれぞの所定の神経回路に移動するプロセスである。この神経細胞移動に問題が起きると様々な認知障害が起きる。Genes & Development誌掲載のこの研究は、「Novel Transcriptional Networks Regulated by CLOCK in Human Neurons (人間のニューロン中でCLOCKが調節する新発見の転写制御ネットワーク)」と題されている。

世界的にがんの発生率が上昇していることはよく知られており、また、特定の人口集団や地理的位置で他よりもがんの発生率が高いらしいことも知られている。University of Cyrpus Medical Schoolの研究者、Konstantinos Voskarides, PhDは、「デンマークやノルウェーのように気温の非常に低い地域の人口は世界的にもがん発生率のもっとも高い地域の一つだ」と述べている。彼は、2017年12月5日付Molecular Biology and Evolutionオンライン版に掲載された新論文で新しい仮説を提出しており、それによると、寒冷地や高高地など極端な環境条件への適応とがん発生率上昇との間に進化論的な関係があるとしている。Dr. Voskaridesは、「この研究結果で、極端な環境に有利な遺伝的変異体が同時にがんにかかりやすい原因になっているという証拠が示されている。低温や高高度などに耐性を持つ細胞がおそらく悪性化する確率も高くなるのだろう。このような効果は、ほとんどのがんは、子供も生まれてしまったくらいの年齢で発症するため、自然淘汰で取り除かれることはまずない」と述べている。この論文は、「Combination of 247 Genome-Wide Association Studies Reveals High Cancer Risk As a Result of Evolutionary Adaptation (247件のゲノムワイド関連研究を総合し、適応進化の結果としてのがんリスク増大を究明)」と題されている。

細胞外微小胞(extracellular microvesicles)に抗体様RNAナノ粒子を結合させることで、低分子干渉RNA (siRNA) など効果的なRNA薬剤を選択的にがん細胞に向けて送り込めることが新しい研究で示されている。研究チームは動物モデルの3種のがんを対象に、RNAナノテクノロジーを用いて、この実験にRNAナノ粒子を使い、微小なRNA薬剤を搭載した細胞外微小胞をがん細胞に向けて送り込むことに成功した。2017年12月11日付Nature Nanotechnologyオンライン版に掲載された研究成果が、siRNA、microRNAその他のRNA干渉技術を用いた新世代の抗がん剤の開発に結びつくことも考えられる。この論文は、「Nanoparticle Orientation to Control RNA Loading and Ligand Display on Extracellular Vesicles for Cancer Regression (ナノ粒子配向で細胞外小胞のRNA搭載とリガンド・ディスプレイを制御し、がん退縮を狙う)」と題されている。

University of California-San Francisco (UCSF) の研究チームは、脳が体重を調節する能力は、脳の「飢餓回路」が神経細胞の一次繊毛と呼ばれるアンテナ状の構造物を通して信号を伝達する、その独特の形態によるものであることを突き止めた。一次繊毛は、運動繊毛とは異なる器官で、後者は指のような突起物で細胞のコンベヤー・ベルトのような働きをしており、肺や気管のゴミを排出する機能を持っている。不動性の一次繊毛は、虫垂のように進化の痕跡のようなものと考えられたこともあったが、過去10年、UCSFその他の研究機関の研究で、この一次繊毛が身体の様々な種類のホルモン信号伝達に重要な役割を果たしていることが明らかにされてきた。2018年1月8日付Nature Genetics オンライン版に掲載されたUCSFの新しい研究で、一次繊毛が脳内の信号伝達に重要な役割を果たしていることが示されている。この論文は、「Subcellular Localization of MC4R with ADCY3 at Neuronal Primary Cilia Underlies a Common Pathway for Genetic Predisposition to Obesity (神経細胞の一次繊毛でのMC4RとADCY3の細胞内局在が肥満の遺伝的素因の一般的経路の背景)」と題されている。神経科学者は、脳の信号伝達というとシナプスと呼ばれる部位におけるニューロン間の直接的な化学的または電気的なコミュニケーションと考えることになれてしまっているが、この新しい研究結果では一次繊毛における化学的信号伝達も重要な役割を果たしていることが示されており、このことはこれまで見過ごされてきた。研究者は、さらに、この研究結果から世界的に拡大している肥満傾向に対する新しい治療法の可能性が開けるのではないかと述べている。首席著者で、UCSFのDiabetes Center教授を務め、UCSF Institute for Human GeneticsのメンバーでもあるChristian Vaisse, MD, PhDは、「私達の研究で人間の肥満遺伝について統一した理解を築いてきた。最近まで、一次繊毛のことなどほとんど聞いたこともないという肥満研究者は多いが、それも変わりつつある」と述べている。

細胞は、エキソソームと呼ばれる膜を持った超微小な包みを分泌し、この包みは体の一箇所から他の箇所に重要なメッセージを運ぶことができる。MITその他の研究機関の研究者らがこのメッセージを捕捉する手法を開発した。この手法はがんや胎児異常などの問題の診断にも用いることができ、そのための新開発の装置はマイクロ流体工学と音波を組み合わせてエキソソームを血液から分離するようになっている。 

 スエーデンのLinköping Universityの新しい研究によれば、犬が飼い主との接触を求める傾向は、オキシトシン・ホルモン感受性の遺伝的変異と関連しているとのことである。この研究結果はHormones and Behaviorに掲載され、オオカミからペットとしての犬になるまでの過程に新しい知見を加えている。 

1世紀近く前、特定動物でカロリー摂取を抑えると寿命が飛躍的に伸びることが突き止められたが、それ以後、数々の研究の積み重ねにもかかわらず、その原因は詳しく解明されていない。Temple University (LKSOM), Lewis Katz School of Medicineの研究グループが難関を乗り越え、解明に向けて一歩を進めた。2017年9月14日付Nature Communicationsオンライン版に掲載された新研究で、加齢と共にエピゲノムの変化する速度が種全体の寿命と関係があり、カロリー摂取制限でこの変化速度を抑えられることが突き止められ、長寿と関わっている可能性を示しているのである。この研究論文は、「Caloric Restriction Delays Age-Related Methylation Drift (カロリー制限で加齢に伴うメチル化ドリフトを遅らせる)」と題されている。LKSOM のFels Institute for Cancer ResearcのDirectorで、この新研究で主任研究員を務めたJean-Pierre Issa, MDは、「私達の研究で、加齢によるゲノム内のDNAメチル化の得失似独特のパターンを持つエピジェネティックドリフトがヒトよりサルで、またサルよりマウスでより速く進むことが明らかになった」と述べている。この研究結果で、マウスが平均で2,3年しか生きないのに、アカゲザルは約25年、ヒトは70年から80年生きることも説明がつく。DNAメチル化のような化学修飾が哺乳動物の遺伝子を制御しており、遺伝子が起動される時のための目印の役目を果たしており、この現象はエピジェネティックと呼ばれている。Dr. Issaは、「メチル化のパターンは加齢に従って着実にドリフト(漂流)していき、ゲノムの一部ではメチル化が増すのに対して他の部分でメチル化が減ることがある」と述べている。以前の研究で、このような変化は加齢とともに起きることが示されていたが、その変化が寿命と関係しているのかどうかは明らかではなかった。Dr. Issaの研究チームは、マウス、サル、ヒトという3つの種の異なる年齢の個体から採取した血液のDNAのメチル化パターンを初めて調べ、この発見につながった。マウスは2,3か月から3歳近い年齢、サルは1歳未満から30歳まで、ヒトは零歳から86歳までの範囲だった。ヒトの零歳児は血液採取の代わりに臍帯血を用いた。加齢に伴うDNAメチル化の偏差をディープ・シーケンシング技術で解析し、その結果、メチル化が起きるゲノムの部位は年長の個体と若い個体では逆転しており、年長個体でメチル化が進むのは若い個体で非メチル化されている部位だという明白な違いがあった。その後の分析では、遺伝子発現の著しい損失が、加齢とともにますますメチル化されたゲノム領域で観察されたが、メチル化がより少なくなった領域は、遺伝子発現の増加を示した。 年齢に関連したメチル化の変化によって影響を受ける遺伝子のサブセットの調査は、メチル化ドリフトと寿命との間に逆の関係を示した。 言い換えれば、エピジェネティックな変化の量が増え、より迅速に起こる - 種の寿命が短くなる。「私たちの次の問題は、エピジェネティックドリフトが寿命を延ばすために変更できるかどうかであった」とIssa博士は言う。動物の寿命を延ばすことが知られている最強の要因の1つは、必須栄養素の摂取を維持しながら、食事中のカロリーを減らすカロリー制限です。その影響を調べるために、研究者らは、若いマウスでは40%のカロリー摂取量を、中年のサルでは30%のカロリー摂取量を削減した。両方の種において、エピジェネティックドリフトの有意な減少が観察され、カロリー制限食餌上の老齢動物における加齢に関連するメチル化の変化は、幼若動物に匹敵した。最新の知見により、Issa博士らはカロリー制限が動物の生存をどのように延長するかを説明する新しいメカニズム(エピジェネティックドリフトの遅延)を提案することができます。 「カロリー制限が寿命に及ぼす影が最近の研究では、エピジェネティックドリフトの量が多いほど癌を含む加齢性疾患のリスクが高まることが示唆されている。健康研究において重要な意味を持っています。「私たちの研究室は、エピジェネティックなドリフトを病気のリスクを改変する方法として改変する考えを最初に提案しました」とDr. Issaは言います。しかし、なぜエピジェネティックなドリフトが一部の人々で速く起こり、他のものでは遅いのかはまだ不明である。Issa博士のチームは、メチル化のドリフトに影響を及ぼす追加要因をすぐに特定したいと考えています。 このような要因は、年齢関連疾患の予防に大きな影響を及ぼすドリフトを遅らせるために潜在的に変更される可能性がある。響は数十年前から知られていましたが、現代の定量的技術のおかげで、寿命が延びるにつれてエピジェネティックドリフトの著しい減速を初めて示すことができました。この新しい研究に貢献した他の研究者には、前川真司、田原智光、ジャスティン・リー、ジョゼフ・マジョ、ジャロスラフ・ジリネク、フェルス・インスティチュート・リサーチ・アンド・分子生物学研究所、ルイス・カッツ医学部、テンプル大学、 Texas、MDアンダーソンがんセンター、ヒューストン、テキサス大学、Epigenetics and Molecular Carcinogenesis部、Yue Lu; テキサス大学MDアンダーソンがんの生物統計学および計算生物学科、Shoudan Liang; Wisconsin National Primate Research Center、Wisconsin、Madison、Wisconsinの細胞および再生生物学科のRicki J. Colmanとなっております。原著へのリンクは英語版をご覧ください。Caloric Restriction Slows Epigenetic Drift and Slower Epigenetic Drift May Be Mechanism Underlying Extended Lifespan

カビ類は創薬にとって天然分子の豊かな宝庫ではあるが、様々な困難もあり、製薬会社もこの宝庫に手を付けることをためらってきた。ところが現在、研究者はゲノム解析、データ解析を用いてカビが産生する分子を効率的に選別し、新しい医薬、あるいは新世代のペニシリンをさえ見つける手がかりを見つける技術を開発した。 

ある研究チームが総合的なレビューを行い、身体の脂肪組織が、その脂肪のタイプや体内の位置により、様々な形でがんの進行に影響しているようだと報告している。このレビューはAmerican Association for Cancer Research (AACR) のジャーナル、Cancer Prevention Researchの2017年9月号に掲載されている。この論文は、「Signals from the Adipose Microenvironment and the Obesity-Cancer Link—A Systematic Review (脂肪組織の微小環境からの信号と肥満-がんの関係—システマティック・レビュー)」と題されている。このレビューはソルト・レーク・シティのUniversity of Utah, Huntsman Cancer Institute, Population SciencesのSenior Director, Cornelia M. Ulrich, PhDが首席著者を務めた。Dr. Ulrichは、「肥満体は世界中で急激に増えており、がんの主要リスク要因の一つと認識されるようになっている。事実、16種のがんが肥満と結びついている。肥満とがんとの間に潜む機序を突き止めることが喫緊の重要事だ」と述べている。また、「以前の研究で、脂肪がいくつかの形でがん発生の一因になっていることが示されている」と述べている。たとえば、肥満が炎症のリスクを増大させるが、その炎症はかなり前からがんと関連があるとされている。さらに、肥満は、がん細胞代謝や免疫クリアランスに影響すると考えられており、いずれもがんの進行とひろがりを促進する可能性がある。また、Dr. Ulrichは、「脂肪とがん化の関係は、『シグナル混信』、つまり、2つの異なるタイプの細胞の間で複数のシグナル経路が同じ信号を共有した場合の細胞の反応の仕方に関わっている」と説明している。このシグナル混信を阻止する方法が見つかれば、新しいがん予防法の発見に寄与する可能性もある。この研究では、ノースカロライナ大学の研究者を含むウルリッヒ博士らは、1946年1月から2017年3月までの出版物を網羅したPubMed / Medlineの文献レビューを行い、脂肪組織と癌腫の間のクロストークを調査した。科学者たちは最終的に、この研究の新規性を説明するトピックを具体的に扱った20の主要な研究刊行物を発見した。ウルリッヒ博士は、このレビューでは発癌機構の詳細が明らかになったと述べた。例えば、いくつかの研究は、脂肪間質細胞が癌病変に浸潤し、腫瘍の増殖を促進する能力を有することを示した。これらの細胞は、肥満の前立腺癌および肥満乳癌患者においてより多く見出された、研究が示した。ウルリッヒ医師は、このレビューでは、脂肪の種類がより「代謝的に活性」であることが示され、癌の発症につながる物質がさらに分泌されています。脂肪には、白、茶、ベージュの3種類があります。それぞれが異なって作用し、脂肪の位置に応じて異なる量で存在する。例えば、白脂肪組織は炎症と関連しており、乳癌患者では予後不良と関連していると報告されている。このレビューでは、臓器に対する脂肪組織の近接性を考慮に入れて、乳房、結腸直腸、食道、子宮内膜、前立腺、および耳鼻咽喉癌に対する脂肪の影響を分析した。例えばウルリッヒ医師は、結腸直腸癌では、脂肪組織は典型的には腫瘍に隣接して位置するが、乳癌では脂肪組織が直接腫瘍微小環境の一部であると説明している。ウルリッヒ博士は、将来の研究は、肥満と癌の関係における組織距離の役割の評価、および腫瘍増殖を促進するプロセスを傍受する方法があるかどうかを評価する上で有用であると述べた。Ulrich博士は、「クロストークが発生する方法と関連する物質の解明が始まったところです。 「このプロセスを理解すればするほど、肥満に関連する癌の負担を軽減するための目標や戦略を明確にすることができる」彼女は、代謝産物と呼ばれる小分子を分析し、「脂肪細胞と癌との間で交換された未知の物質を捕まえる広範なネットをキャストする」研究の新興分野であるメタボロミクスを挙げた。ウルリッヒ博士は、この研究は健康な体重を維持することの重要性を支持していると付け加えた。脂肪は皮膚の下と体の内側の両方に存在するので、細い人でも内臓を取り囲む余分な脂肪を持つことがあります。痩身筋肉量を構築するための筋力トレーニングを含む健康的な食事と運動は、過剰脂肪の発生を抑えるのに役立つと彼女は述べた。原著へのリンクは英語版をご覧ください。Adipose Tissue May Affect Cancer Development in Multiple Ways, Review Concludes

幹細胞代謝についてはよく知られていないが、University of Texas (UT) Southwestern (CRI) のChildren’s Medical Center Research Institute の新しい研究で、幹細胞が異常に高いレベルのビタミンCを吸収し、そのビタミンCが幹細胞の機能を調節し、また、白血病の進行を抑制することが突き止められている。CRIのDirectorを務めるDr. Sean Morrison は、「体のアスコルビン酸塩 (ビタミンC) 量が少ないとがん発症リスクが高まることは知られていたが、その理由についてはよく分かっていなかった。今回の研究で少なくとも造血系については幾分か解明することができた」と述べている。代謝分析にはかなりの数の細胞を必要とするが、一方で組織内の幹細胞の数は非常に少ないことから、これまで幹細胞代謝の研究は困難だった。 2017年8月21日付Nature誌オンライン版で発表された研究の過程で開発されたテクニックにより、幹細胞のように非常に数の少ない細胞でもごく普通に代謝量を測定することが可能になった。このテクニックの採用により、骨髄の全てのタイプの造血細胞がそれぞれ独特の代謝特性を持っており、栄養の摂取と利用に違いのあることが突き止められた。幹細胞の主要な代謝特性の一つとして、並外れて多量のアスコルビン酸塩を吸収することが挙げられる。研究チームは、幹細胞の機能にアスコルビン酸塩が重要なのかどうかを突き止めるため、グロノラクトン・オキシダーゼ (Gulo) 欠乏症のマウスを使って調べた。Guloは、人間を除き、マウスを含めたほとんどの哺乳動物が体内でアスコルビン酸塩を合成するために必要とする酵素である。この酵素を持たないGulo欠乏マウスは、人間の場合と同じようにアスコルビン酸塩を食物を通して外から摂取しなければならなかった。このテクニックにより、マウスのアスコルビン酸塩摂取を厳密に管理し、マウスのアスコルビン酸塩量を健康人の約5%と同じレベルに保つことができた。

2017年Lasker-DeBakey Clinical Medical Research Awardは、子宮頸がんその他のがんを予防するヒト・パピローマウイルス (HPV) ワクチン開発を可能にする技術の進歩に携わった2人の科学者を顕彰した。Dr. Douglas R. LowyとDr. John T. Schiller (いずれもNational Cancer Institute所属) は、大きな公衆衛生問題に取り組み、大胆ながら計算されたアプローチで圧倒的な困難を乗り越えた。 

Johns Hopkins病院の研究チームは、早期膵臓がんのがん固有のDNAとタンパク質バイオマーカーを検出する血液検査法の開発を発表した。複合「液相生検」で、早期膵臓がん患者221人の血液サンプルのバイオマーカーを検出したのである。2017年9月4日付PNAS誌オンライン版に論文が掲載されたこの研究で、DNAとDNAの産物であるタンパク質との双方のマーカーの検出で疾患を判定する方法は、DNAのみの検出よりも2倍も正確であることを示している。そのような液相生検は、血液中を無数の正常なDNAが流れる中からがん固有のDNA分子を拾い上げることを狙いとしている。がんはその突然変異したDNAを血流中に放出する傾向があるため、ゲノム・シーケンシング・ツールを使って血液をふるいにかけると、そのようながん固有のDNAを見つけることができる。Johns Hopkins University School of MedicineのAssistant Professor of Surgeryを務めるJin He, MDは、「早期膵臓がんは、ほとんどの場合イメージング・スキャンの際に偶然発見されるだけで通常は何の症状も見せない。その結果、しばしばかなり進行してから発見されるため、切除、手術を行うことが難しい状態になっている」と述べている。Dr. Heは、「過去30年間、切除可能な段階でがんを発見することに関してはほとんど進歩を見せていない。この検査法の効力がもっと大規模な研究で確かめられれば、早期の症候を見せない膵臓がんの発見に用いることができるようになる」と述べている。また、研究チームは、「この検査法はまだ研究室の外に持ち出せる段階ではないが、がんから血液中に放出されるタイプの突然変異DNAはきわめてがん固有のものだ」としている。ジョンズ・ホプキンス・キンメルがんセンターのルードヴィヒ・センターの共同ディレクターであるバート・ヴォーゲルシュタイン(Bert Vogelstein)医師は、「がん関連DNAが個体の血液中に見つかると、癌になる可能性は非常に高い」と語る。 Vogelstein博士のチームおよび他の研究者は、進行癌患者の85%以上が血液中でDNAを同定できることを示しています。しかし、この研究の前には、癌の遺伝的状態を事前に知ることなく、早期癌患者の血液中のDNAのような小さなDNAを検出する感度は知られていなかった、と科学者たちは言う。この新しい研究では、オーストラリア、韓国、インディアナ、ピッツバーグ、メイヨークリニックの病院で膵臓を切除する手術を受けたステージIおよびIIの膵臓癌の男性および女性221名(主に白人)から血液および腫瘍組織サンプルを採取したロチェスター)、ニューヨークのメモリアル・スローン・ケッタリング、ジョンズ・ホプキンス病院。癌、自己免疫疾患、または慢性腎臓病の既往歴のない182人の患者が、研究のために血液を寄贈しました。研究者らは、早期膵癌の早期マーカーであるKRAS遺伝子単独のDNAの突然変異について、彼らの血液スクリーニングツールを用いて早期膵癌を有する221人の患者のうち66人(30%)を同定することができた。しかし、この研究に取り組んだVogelstein博士の研究室のMD-PhD大学院生であるJoshua Cohen氏は、30%の検出率を改善し、より初期のがんを発見し、偽陽性を回避することを目標としていました。そこで、彼らは血液中を循環するタンパク質バイオマーカーに目を向ける。このような循環タンパク質マーカーは、心臓発作による糖尿病および心筋損傷のような疾患の検出およびモニタリングならびに癌の既往歴のある患者のモニタリングに臨床的に使用されている。研究者にとって特に興味深いのは、タンパク質バイオマーカーCA19-9であった。再発のために膵がん患者をモニターするために使用されています。しかし、再発モニタリングに使用されるCA19-9のレベルは低い(37単位/ mL)。なぜなら、医師は再発癌を迅速に特定したいからである。がんのない人の中には、胆石がある人など、タンパク質のレベルが低い人もいるかもしれません。スクリーニング目的のために、CA19-9のレベルははるかに高い(100単位/ mL)必要があった。Johns HopkinsのLudwig Centerの共同ディレクター、Kenneth W. Kinzlerは次のように述べています。「スクリーニング検査は、がんの陽性検査後の手順の心配や副作用を人々に救うために高い信頼性が必要です。科学者が研究参加者の血液中のCA19-9のみを調べると、221人の患者のうち109人(49%)がそれを発見した。しかし、KRAS突然変異、CA19-9および他の3つのタンパク質バイオマーカーの検出を組み合わせた場合、科学者は221人の患者のうち141人(64%)において膵臓癌を正確に同定した。対照的に、対照群のうち、癌のない182人の対照群のうち1人だけが、5つのバイオマーカーのうちの1つの上昇を有した。ジョンズ・ホプキンス大学医学部の准教授であり、学際的な膵臓嚢胞プログラムのディレクターであるAnne Marie Lennon博士は、「単独のマーカー単独では、ほとんどの人々の早期癌を特定することはできません。 「この研究は、血液検査で早期膵がんの検出を止めるために複数のマーカーを使用し、それらの患者をより早く、よりよく治療することが可能であることを示しています。Vogelstein博士のチームは、彼らが検出した各KRAS突然変異が実際でありアーティファクトではないことを確実にするために開発した分子バーコードシステムを使用しました。例えば、彼らは、血液中で検出された突然変異と、腫瘍で検出された突然変異とが完全に一致していることを示した。彼らは、検出された突然変異が肺癌や結腸癌でもよく見られ、タンパク質とDNAのバイオマーカーを組み合わせて、いくつかの種類の早期癌を同定する同様のアプローチを使用することを計画していると言います。Johns Hopkins Kimmel Cancer Centerの腫瘍学教授であるNick Papadopoulos博士は、この研究で説明されたアプローチに基づくスクリーニング検査の費用は、乳房と結腸直腸の検査で広く使用されている乳房X線撮影法と大腸内視鏡検査がん。 Papadopoulos博士は、「DNAマーカーとタンパク質マーカーの両方を、各患者の同じ血液検査から分析することができる」と述べている。このような試験を実施するために必要な技術は、タンパク質バイオマーカー検査とDNA配列決定を含むもので、すでに病院や商業施設で広く使用されている。研究に貢献した他の科学者はAmmar A. Javed、Christopher Thoburn、Fay Wong、Matthew J. Weiss、Nita Ahuja、Martin A. Makary、Marco Dal Molin、Yuxuan Wang、Lu Li、Janine Ptak、Lisa Dobbyn、Joy Schaefer、ジョン・ホプキンスのナタリー・シリマン、マリア・ポポーリ、マイケル・ゴッギンズ、ラルフ・H・ハルバン、クリストファー・L・ヴォルフガング、アリソン・P・クライン、クリスティアン・トマセッティ。オーストラリアのWalter and Eliza Hall研究所のJeanne TieとPeter Gibbs、 C.インディアナ大学医学部のMax SchmidtとMichele Yip-Schneider; Memorial Sloan-Kettering Cancer CenterのPeter J. AllenとMark Schattner;ピッツバーグ大学のRandall E. BrandとAatur D. Singhi、メイヨークリニックのGloria M. Petersen;ソン・メディカルセンターのソンモモ、ソンチョル金、ソウル、イタリアのミラノにあるIRCCS San Raffaele Scientific InstituteのMassimo FalconiとClaudio Doglioni、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターのAnirban MaitraとSamir M. Hanash。PapGene、Sysmex Corporation、Life Technologies Corporation(Thermo Fisher Scientific)、Johns Hopkins大学のライセンス契約に基づき、Drs。 Papadopoulos、Kinzler、およびVogelsteinは、この刊行物のテクノロジーに対する使用料を受け取る権利があります。さらにDrs。 Papadopoulos、Kinzler、VogelsteinはPapGeneの創設者であり、PapGeneのコンサルタントとして働いています。さらに、Drs。 VogelsteinとKinzlerはSysmex Corporationの諮問委員会メンバーであり、Dr. Papadopoulosはこの会社の有償コンサルタントです。これらの取り決めは、利害対立の方針に従ってジョンズ・ホプキンス大学によって審査され承認された。原著へのリンクは英語版をご覧くださいLiquid Biopsy Detects Tumor-Specific DNA and Protein Markers for Early-Stage Pancreatic Cancer, Hopkins…

唾液の分析から、サブサハラ・アフリカに生活する現生人類の先祖の遺伝物質に今は絶滅した古代の「ゴースト」人類の片鱗を発見。また、その研究から、異なる古代人類の間の性的接触もまれではなかったことを示す証拠がさらに付け加えられた。これまでの研究で、アジア、ヨーロッパの現生人類の祖先がネアンデルタールやデニソワ人など旧人類と同系交配していたと判断されている。最近の遺伝子解析で古代アフリカ人が他の初期ヒト科人類と交雑していたことを示す証拠が次々と見つかっているが、この新研究もその一つである。University at Buffalo (UB), College of Arts and SciencesでAssistant Professor of Biological Sciencesを務めるOmer Gokcumen, PhDは、「初期ヒト科人類の間で同系交配は例外ではなく、普通のことだったようだ。私達の研究では、唾液に含まれているMUC7と呼ばれる重要なムチン・タンパク質の進化を調べた。そのタンパク質のコードを持っている遺伝子の履歴を重点に調べた結果、現代のサブサハラ・アフリカン人に古代人類の混合物の存在が確認できた」と述べている。この研究論文は、2017年7月21日付Molecular Biology and Evolutionオンライン版に掲載されている。Dr. Gokcumen と、UBのSchool of Dental MedicineでProfessor of Oral Biologyを務めるStefan Ruhl, DDS, PhD.がその研究を指導した。このオープンアクセス論文は、「Archaic Hominin Introgression in Africa Contributes to Functional Salivary MUC7 Genetic Variation (アフリカでの古代ヒト科人類の遺伝子浸透が機能性唾液MUC7遺伝変異に関与)」と題されている。研究チームは、MUC7の目的と起源を調べている時にこの事実を突き止めた。MUC7は唾液に粘りけをつけて微生物を封じ込めることで、体内から病原菌を排除する役に立っていると考えられる。この研究の一環として、研究チームは、2,500個を超える現生人類のゲノムのMUC7遺伝子を調べた。解析の結果、思いがけない発見があった。サブサハラ・アフリカ人のゲノム・グループは、他の現生人類とは大きくかけはなれた遺伝子バージョンを持っていたのである。

Institute of Molecular Biology (IMB) と Johannes Gutenberg University Mainz (JGU) の研究チームが、染色体の末端を保護しているテロメアの秘密をさらに明らかにした。TERRAと呼ばれる種類のRNA分子が、極端に短くなり、壊れたりしたテロメアを、補修するように機能することを発見したのである。2017年6月29日付Cell誌に掲載された研究論文は、加齢やがんにおける細胞の老化や生存を調整する細胞内のプロセスへの理解をさらに深めている。 

瞑想、ヨガ、太極拳など心身介入療法 (MBI) は単に心身をリラックスさせてくれるだけではない。Coventry、Radboud両大学の研究によれば、病気やうつ病を引き起こすDNAの分子反応を逆転させてくれるらしいのである。2017年6月16日付Frontiers in Immunologyオンライン版に掲載されたレビュー論文は、マインドフルネスやヨガなど様々なMBIが遺伝子の挙動に与える影響について過去10年間の研究をレビューしている。このオープンアクセス・レビュー論文は、「What Is the Molecular Signature of Mind–Body Interventions? A Systematic Review of Gene Expression Changes Induced by Meditation and Related Practices (心身介入療法の分子指標は何か。瞑想その他関連実践による遺伝子発現の変化の体系的な考察)」と題されている。両大学の研究者は、846人の被験者を対象にした過去11年間の18件の研究をすべて調べた結果、MBIの実践の結果、体内で一定パターンの分子レベルの変化が起きており、その分子レベルの変化が心身の健康に利益をもたらす仕組みがつかめたとしている。研究チームは、遺伝子発現、つまり、身体、脳、免疫系などの生体的な構成を左右するタンパク質を産生する遺伝子がどのように影響を受けるかということに注目した。

ある研究チームが、ブロッコリに多く含まれている抗酸化物質が抗糖尿病物質でもあることを突き止めた。糖尿病患者を対象とした研究で、参加者にスルフォラファンを多く含むブロッコリ抽出物を食べさせたところ、血糖値が大幅に低下したということだ。スエーデンのUniversity of Gothenburg, Metabolic Physiology講師を務め、Lund University Diabetes Centreに所属するDr. Anders Rosengrenは、「これが既存の治療薬に対する貴重なサプリメントになる可能性がある」と述べている。2017年6月14日付Science Translational Medicineに掲載された研究論文は、Sahlgrenska Academy、University of Gothenburg、Lund UniversityのFaculty of Medicineが共同で長年研究を続けてきた成果である。オープンアクセスとして掲載されたこの研究論文は、「Sulforaphane Reduces Hepatic Glucose Production and Improves Glucose Control in Patients with Type 2 Diabetes (スルフォラファンが2型糖尿病患者の肝糖産生を抑え、血糖抑制改善)」と題されている。この研究の目的は、2型糖尿病の重大なメカニズムである肝臓のブドウ糖産生亢進を抑制する、新しい治療薬の発見にあった。標準的な治療薬のmetforminもまさしくその薬効を持っているが、消化器系の副作用を引き起こしやすく、また腎機能が甚だしく衰えている場合には投与できないため、この薬剤を使えない糖尿病患者も多い。研究チームは、まず糖尿病患者の肝臓の遺伝子変化のマッピングから始めた。

King's College LondonとUniversity of Bristolの研究チームの新研究によれば、耽溺的な性格や攻撃的な性格と関わる遺伝子に出産時に起きるエピジェネティックな変化が、児童の素行問題と関わっている可能性が示されている。イギリスでは、児童治療専門家に紹介状が送られるもっとも多い理由は、ケンカ、ウソ、盗みなどの素行問題 (Conduct problems : CP) であり、その損失は莫大である。 

アルツハイマー、ハンチントン、パーキンソン、この3人の人名は、いずれも脳のニューロンを損壊させ、その部位全体を萎縮させた上に死に至らしめる病気の名前として永久に記憶されることになる。この3つの病気だけでなく、神経変性疾患と呼ばれる病気のほとんどが、有毒タンパク質の蓄積で最終的にニューロンが死滅すると関連して捉えられている。 

日本の研究チームが、慢性閉塞性肺疾患 (COPD) とアレルギー喘息の激しい炎症を解明し、その治療法を発見する上でさらに一歩を進めたとの研究論文が、「The FASEB Journal」2013年8月号に掲載された。その論文では、「ロイコトリエン B4と呼ばれる炎症制御分子の2種類の受容体が、アレルギー喘息やCOPDの炎症のオン/オフ・スイッチで正反対の機能を果たしている」と述べている。 

まるでSF話のようだが、人間の体内にいて数では人体細胞の100倍もの数になる腸内細胞が、人間の食欲などに影響し、腸内細胞自身の食べたい物を人間が欲するように仕向けている上に人間の肥満をもたらしているのではないかという研究結果が出されている。2014年8月7日付BioEssaysオンライン版に掲載された研究論文で、University of California-San Francisco, (UCSF)、Arizona State University、University of New Mexicoの研究チームは、最近の科学文献のレビューを行い、「腸内細菌は、人間が自分の選択で摂る栄養物を何でも受け身で吸収するのではなく、細菌自体の繁殖に適した栄養素を取るよう人間の摂食行動や食餌選択に影響を与えていると考えられる」との結論を下した。必要とする栄養素は細菌種ごとに異なる。 

ニューヨーク市にある、ワイルコーネル医科大とロックフェラー大学の研究チームが、脾臓を欠いて生まれてくる無脾症に関連する遺伝子を、初めて同定した。無脾症は感染に対する抵抗が極めて弱いため、この疾患を持った子供達は感染症による死の危険に晒されているのだ。遺伝子Nkx2.5は、マウスにおいては、発生初期の段階で脾臓の創生関与している事が実証された。 

The Scripps Research Institute (TSRI) の研究者が主導して行った新しい研究によると、免疫を制御している数種の小分子があって、それらが少しでも過剰生産されるとリンパ腫と呼ばれる血液がんの引き金になることが突き止められた。リンパ腫その他の何種類かのがんで6種のmicroRNA分子が過剰生産されることはすでに知られているが、これまでその6種のmicroRNA分子のグループこそがそのタイプのがんで主要原因になることは知られていなかった。 

地上に生命体が現れる前には混沌とした液状の分子が漂っていた。これを「原始スープ」という。ある時、ごく少数の特殊な分子が自己複製を始めた。この自己複製が生化学的過程の始まりで遂には最初の生命体が出現することになるという仮説については科学者の支持で一致している。しかし、どのようにして分子の自己複製が始まったのかということは科学界にとって永遠の謎の一つだ。 

2015年4月9日付Journal of Steroid Biochemistry and Molecular Biologyオンライン版に掲載された「172か国における曇天下のUV-B照射と膵臓がん」と題された研究論文で、UC San Diego School of Medicineの研究グループが日射量の最も低い国で膵臓がん発症率が最高になっていると報告している。 日射量の低さは雲が厚いことと高緯度が関わっている。  

Johns Hopkins MedicineとUniversity of British Columbiaの研究者は、遺伝子シーケンシング・ツールを使い、子宮の外で子宮内膜状の組織が増殖し、ひどい痛みを伴う良性子宮内膜症患者24人の組織サンプルから一組の遺伝子変異体を発見した。2017年5月11日付New England Journal of Medicineに掲載されたこの発見により、いつか、侵襲性の強い子宮内膜症と臨床的に緩慢な非侵襲性子宮内膜症とを判別する分子レベルのテストを開発できる可能性がある。NEJMの研究論文は、「Cancer-Associated Mutations in Endometriosis without Cancer (非がん性子宮内膜症中のがん関連遺伝子変異体)」と題されており、Johns Hopkins University School of MedicineのDepartment of Gynecology & ObstetricsでRichard W. TeLinde Distinguished ProfessorとJohns Hopkins Kimmel Cancer CenterでBreast and Ovarian Cancer ProgramのCo-Directorを務めるIe-Ming Shih, MD, PhD.は、「私達の研究での変異体の発見は、積極的治療を必要としているか、そうでないかを現場の医師が判定するために、子宮内膜症を分類する遺伝学ベースの検査法開発の第一歩ではないか」と述べている。子宮内膜症は、子宮内の粘膜が子宮の外、特に腹部内に形成増殖される疾患であり、月経閉止前の女性の約10%がこの疾患にかかり、そのうち半数が腹痛や不妊に悩まされている。1920年代、Johns Hopkinsの卒業生で婦人科医だったJohn Sampsonが、初めてこの症状を"endometriosis (子宮内膜症)"と名付け、月経時に正常な子宮内膜組織が輸卵管を通じて腹腔内に漏れて広がった結果起きるのではないかとの仮説を提出した。Dr. Shihは、「新しい研究でその仮説が覆されるかも知れない」として、組織サンプルに異常な変異体の組み合わせが見つかっており、子宮内膜症の原因は正常な子宮内膜細胞が突然変異するために起きている可能性があると述べている。また、この研究で発見された変異体も、まだ突き止められていない何らかの理由で一部のがんに見つかる遺伝子突然変異と関係があるようだとしつつも、子宮内膜症ではしばしば組織の異常増殖が腹腔内全体に広がることがあるが、卵巣にまで広がることがない限り、この疾患の組織ががん細胞になることはほとんどないと強調している。

ランニングの健康効果については毎週のように新しい話題が現れる。それ自体は素晴らしいことだが、走れない人にとっては何の意味もない。高齢者、肥満者、その他、運動機能に支障のある人にとっては有酸素運動の効果というのは望んでも得られないことだった。Salk Instituteの研究チームは、ランニングによって起動される遺伝子経路を突き止めた過去の研究を基礎にして、化合物によって運動不足のマウスの経路を完全に起動する手段を見つけ、脂肪燃焼効率やスタミナを高めるなど運動の健康効果を再現することができた。2017年5月2日付のCell Metabolismに掲載されたこの研究論文は、有酸素運動持久力への理解を深めただけでなく、心臓障害、呼吸器系疾患、2型糖尿病その他健康障害のある人々にも薬剤で同じ健康効果が得られるようになる希望を与えている。このオープンアクセス論文は、「PPARδ Promotes Running Endurance by Preserving Glucose (PPARδは、ブドウ糖を保存することでランニング持久力を増進)」と題されている。筆頭著者のRonald Evans は、Molecular and DevelopmentalでSalkのMarch of Dimes Chair の地位にあり、またBiology Howard Hughes Medical Instituteのinvestigatorでもある。彼はこの論文で、「トレーニングで有酸素運動持久力を増進させられることはよく知られているが、私達の疑問は、持久力はどのように機能するのか、また、科学をよく理解できればトレーニングを薬剤で代用することができるのか?、ということだった」と述べている。持久力を増進するというのは有酸素運動をより長時間持続できるようになるということである。体がフィットしてくると、筋肉はエネルギー源を炭水化物 (ブドウ糖) の燃焼から脂肪の燃焼に切り替えていくようになる。そのため、持久力とは体が脂肪を燃焼する能力の高まりに関わるものと考えていたが、その過程の細部についてははっきりしていなかった。

一般的な茶にも紅茶、緑茶、烏龍茶、白茶、チャイなど様々な種類があるが、いずれもCamellia sinensis、一般的には茶樹と呼ばれる常緑低木の葉を原料としている。茶は文化的にも経済的にも重要でありながら、茶の葉の木についてはあまりよく知られていない。2017年5月1日付Molecular Plant誌オンライン版に掲載された茶樹のゲノム解析初稿を読めば、なぜ茶の葉には抗酸化物質やカフェインが豊富に含まれているのかが想像できるのではないか。 

非侵襲性のPETイメージング法は、免疫細胞ががん細胞を殺すために放出するグランザイムB (写真) というタンパク質を測定する方法で、マウスと人間で、治療の初期に免疫チェックポイント阻害薬に反応するがんと、反応しないがんを判別することができた。その研究結果はCancer Research の2017年5月号に掲載されている。この論文は、「Granzyme B PET Imaging as a Predictive Biomarker of Immunotherapy Response (免疫療法反応の予測バイオマーカーとしてのグランザイムB PETイメージング法)」と題されており、マサチューセッツ州ボストン市、Harvard Medical School のProfessor of Radiology と、Massachusetts General Hospital (MGH), Athinoula A. Martinos Center for Biomedical Imaging, Division of Precision MedicineのDirectorを務めるUmar Mahmood, MD, PhDがこの論文の首席著者になっている。Dr. Mahmoodは、「チェックポイント阻害薬のような免疫療法は革命的ながん治療法になったが、この治療法が有効な患者は少数であり、大多数の患者にとっては何の益もないだけでなく、大きな副作用の危険があり、しかも他の治療法を試す時間を失うことにもなりかねない」と述べている。免疫療法への反応は、がんのサイズを測定するCTスキャンやMRIスキャンのようにがんの細胞を測定する従来の方法でも、FDG PETのようにがんのブドウ糖取込量を測定する方法でも、免疫細胞が映り込んだり、ブドウ糖取込量が増加してがん細胞が大きく映るため、がん初期には免疫療法に反応するがんと反応しないがんを判別できない。組織生検も、がんの不均一性や、測定するバイオマーカー・タンパク質の量が常に変動することがあって、信頼性が低くなりがちである。

抗生物質によって救われる命が日々ある中、その功罪併せ持つ特性こそが欠点となることもある。高用量では感染を引き起こす細菌とともに健康な細胞も破壊し、既知の抗生物質がもはや効果をもたない「スーパーバグ」を創り出すことになるからだ。しかし、抗生物質の効力を劇的に高めるメープルシロップ抽出物が発見されたことにより、抗生物質の使用量を自然に減らすことが可能になるかもしれない。この研究は4月2日、第253回アメリカ外科学会議(ACS)の全国会議博覧会において発表された。世界最大の科学会であるACSは4月2日から6日までサンフランシスコにて年次総会を開催し、14,000件以上の多種多様なプレゼンテーションが行われた。「カナダの先住民は昔からメープルシロップを感染症の薬として使用してきました。私は常々、この民間療法がどのようなサイエンスに基づくのか興味を持っていたのです。」と、カナダのMcGill大学のNathalie Tufenkji博士は述べる。クランベリー抽出物の抗菌効果を研究していたTufenkji博士はフェノールメープルシロップ抽出物の抗がん効果を知り、本プロジェクトを始動した。「これをきっかけに、この物質の抗菌効果も調べる価値があると思い、研究員にメープルシロップを買いに走らせたのです。」研究チームは既存の抽出法を用いてシロップのフェノール化合物から砂糖と水を分離した。これこそがメープルシロップのあの黄金色の素である。

血液脳関門(BBB : blood-brain barrier)は循環系と脳脊髄液を隔てる選択的を有する膜で、医薬品のほとんどはこのBBBを通過することが出来ない。しかし、動物の毒液中にある特定のペプチドはBBBを通過して損傷を与えることがある。そこで現在、蜂毒ペプチドであるアパミン(apamin)に基づいた薬剤BBB通過戦略に注目する研究グループがある。 

パーキンソン病の定義、研究、および治療への転換的アプローチが発表された。これを概説している2つの文献はNature Reviews Neurology and Movement Disorders誌にオンライン掲載されている。共にシンシナティ大学(UC)Gardner Neuroscience Instituteの研究者が共同執筆者として携わっている。パーキンソン病を単一の実体として治療するのではなく、特定の症状または分子的特徴に基づいて、患者の異なる「ノードまたはクラスター」への治療を目的とするべきだと、この国際研究グループは主張する。「私たちが何をすべきかを問い直す時が来ているのです。医科学は、パーキンソン病の進行を遅らせることを目標とし、その治療研究に230億ドルの世界的投資をしてきました。そして行われた17ものⅢ臨床試験は、残念ながらほとんど成果を上げていません。こんなにも結果が出ないのは、単一疾患・単一目的のアプローチで治療法を確立しようとしているからではないでしょうか。」と、本研究の筆頭著者であるAlberto Espay医師は説明する。Espay博士はUC医科大学の神経学准教授であり、James J. and Joan A. Gardner Family Center for Parkinson's Disease and Movement Disordersのディレクターも務める。パーキンソン病は単一の疾患ではなく、遺伝的および分子的な観点から考えるといくつかの病気の集まりである、とEspay博士らは考える。彼らは、パーキンソン病をドーパミンニューロン変性を主な原因とする単一障害として見ることは、大多数の患者が抱える震えや不安定な歩行などといった症状に対する治療法の開発に有用であったことを認めている。同時に、この見解は、パーキンソン病の進行を遅らせ、修正または治癒するのに有効な療法をいまだ提供出来ていない。有望とみられる分子療法については大規模な臨床試験も行われているが、これはパーキンソン病という診断を共有する患者全体で試験されており、最も有益であろう特定の疾患亜型までは突き詰められていない、というのが理由の一つであるとEspay博士は述べる。そこで研究者らが提唱するのが「プレシジョン・メディシン(精密医療)」アプローチである。これは生物システムの複雑な相互作用に焦点を当てた学際的な研究であるシステム生物学に根ざしたものである。

サンフランシスコのグラッドストーン研究所の科学者達は、マウスがヒトの老化疾患を発症するのを防ぐ重要なメカニズムを発見し、ヒトでよく見られる広範囲の疾患の重症度を説明した。どちらの局面も、年齢とともに浸食される染色体末端の保護キャップとしての役割を担うテロメアと関連している。テロメアの侵食と老化の疾患の関連性は長く知られているが、テロメアの長さがヒトの病気にどのように影響を与えるかは謎とされてきた。 

ヒトの記憶に重要な遺伝子が100以上も同定された。しかも、初めて記憶処理中の遺伝子データと脳活動との相関関係が明らかになったのである。これにより、ヒトの記憶というものに新たな可能性が出てきた。「これらの遺伝子と行動の関係を特定することで、記憶機能や機能障害といった局面における遺伝子の役割を研究することが可能になります。これは非常にエキサイティングなことです。なぜなら、人の記憶を支える分子メカニズムの解明に一歩近づけたということですから。これを基に様々な記憶問題に役立てることができるでしょう。」と、サウスウェスタン・テキサス大学(UT)のGenevieve Konopka博士は語る。研究発表は2017年3月26日サンフランシスコで開催されたCognitive Neuroscience Society (CNS)年次学会で行われた。本研究は、脳の解剖学および機能の変化に遺伝的変異を関連付けることを目的とした「遺伝子イメージング」である。比較的新しい分野だが、今まさに成長拡大している分野でもある。

オーストラリアのニューサウスウェールズ大学(UNSW)の研究者らは、実際に老化を逆行させ、DNA修復を改善し、NASAの火星任務をも可能にするであろう革新的な薬物を発見した。2017年3月23日のScience誌に発表された論文は「老化中のタンパク質-タンパク質相互作用を調節する保存されたNAD+結合ポケット(“A Conserved NAD+ Binding Pocket That Regulates Protein-Protein Interactions During Aging.”)」と題され、研究者チームは細胞が損傷したDNAを修復できるようにする分子プロセスの重要なステップを特定したことを記している。 

ある研究者の植物生物学への取り組みによって、天然分子が軸索(ニューロン間で電気信号を運ぶ糸状突起物)の修復を刺激促進することが発見された。脊髄損傷や卒中などの障害症状を引き起こす主な原因はこの軸索損傷である。マギル大学(カナダ)のモントリオール神経学研究所病院に所属するAndrew Kaplan博士は、Alyson Fournier博士(Neurology and Neurosurgery教授)の研究室が調べていた神経保護機能を持つ14-3-3タンパク質ファミリーに注目し、軸索再生の薬理学的な研究文献を探していた。その検索中に植物が特定タイプの真菌感染にどう反応するかを記述した研究を見つけた。真菌類の特定の種が産生するfusicoccin-Aという低分子物質にさらされると、植物の葉はしぼむが根は長く伸びるようになる。fusicoccin-Aは、14-3-3タンパク質と他のタンパク質との相互作用を安定化させることで、14-3-3タンパク質の活動に影響を与える働きがある。Kaplan博士は、「この現象では14-3-3タンパク質の存在が共通しているが、この反応に関わっている他のタンパク質や反応の結果の生物活性は植物動物の間ではそれぞれに異なっている」と述べている。彼は、軸索再生には、fusicoccin-Aを用いて14-3-3タンパク質を活動させるのがもっとも効果的なのではないかという仮説を立てた。

白色脂肪に比べると、褐色脂肪はかなりの速さで燃焼し、エネルギーに変わるが、これまで人体の褐色脂肪の比率はかなり小さいものと思われていた。ところが、ドイツのTechnical University of Munich (TUM) 研究チームの研究で、人体中の褐色脂肪の量はこれまで考えられていたよりも3倍も多いことが分かった。そのことから、褐色脂肪組織を活性化する新しいタイプの肥満・糖尿病薬がより効果的ではないかと期待されている。 

プレシジョンメディシンの実現に専念する分子科学分野の先進企業、Caris Life Sciences® は、2017年2月21日付けで、同社のADAPT Biotargeting System™ で、血漿中のエキソソームの低侵襲性液相生検で乳がんを検出し、乳がんの有無を判別できることが実証されたと発表した。この研究論文は、「Plasma Exosome Profiling of Cancer Patients by a Next Generation Systems Biology Approach (次世代システムの生体的アプローチによるがん患者の血漿エキソソーム・プロファイル化)」と題するオープンアクセス論文として、2月20日付Nature’s Scientific Reportsに掲載された。 

過去100年以上の間、人体の細胞は、おおむね生涯にわたってほぼ平等に両親の染色体の遺伝子を発現するものと思われていた。しかし、両親の特定遺伝子の活性を測定する検査法を発明した研究グループが、生命体というのはもう少し微妙なものだと研究論文で述べている。同研究グループは、2017年2月23日付Neuron誌に掲載された研究論文で、げっ歯類、サル、ヒトの脳で個別ニューロンまたは特定タイプのニューロンが片方の親の遺伝子を抑制することも珍しくないと報告している。 

スクリプス研究所(The Scripps Research Institute) の生物学者グループがお腹の脂肪を燃やす引き金とみられる脳ホルモンを突き止めた。動物モデル研究での発見だが、将来の医薬開発にも役立つ可能性がある。2017年1月27日付Nature Communications誌オンライン版で発表されたこの研究論文の首席筆者を務めたスクリプス研究所の准教授、Supriya Srinivasan, Ph.D.は、「この研究は興味深い謎を解く基礎科学研究だ」と述べている。オープンアクセスとして発表されたこの論文は、「A Tachykinin-Like Neuroendocrine Signalling Axis Couples Central Serotonin Action and Nutrient Sensing with Peripheral Lipid Metabolism (中枢セロトニン活動や栄養感知を末梢脂肪代謝と結合するタキキニン様神経内分泌物信号伝達軸索)」と題されている。過去の研究で神経伝達物質のセロトニンが脂肪減量効果があることは知られていた。しかし、その正確な機序を分かっていなかった。その疑問に答えるため、Dr. Srinivasanの研究グループは、生物学でよくモデル生物として利用されるC. elegansという線虫で研究した。

最近のラットを対象にした研究で、幹細胞から放出される特定の小胞 (Exosome:エキソソーム) が、眼球底部の感光組織、網膜の細胞を保護するらしいことが確かめられた。この研究論文は、2017年1月26日付Stem Cells Translational Medicineに掲載されており、アメリカで最大の失明の原因である緑内障の治療法への応用を示唆している。 

成人の脳腫瘍で最も一般的で致命的なタイプの膠芽腫(グリオブラストーマ)に対する効果的な治療法の開発は遅々として進まないが、アリゾナ州のTranslational Genomics Research Institute (TGen) の研究者の率いる研究グループが「効果的な阻害物質」を発見した。2017年1月17日付の学術誌「Oncotarget」オンライン版に掲載されたTGen率いる研究チームの論文によると、ある種の化学的なカスケード反応で膠芽腫細胞が正常な脳組織に侵入し、化学療法に対しても放射線療法に対しても耐性を持つようになるが、研究室の実験で、アウリントリカルボン酸 (ATA) がこのカスケード反応を阻止することが示された。 

長年、科学者はコレステロールについて頭をひねっていた。コレステロールは生体に必須の物質であり、同時にはっきりと有害な物質だが、細胞でコレステロールがもっとも集中している細胞膜でのその働きを誰も知らない。イリノイ州シカゴ市のUniversity of Illinois at Chicago (UIC) の研究チームは、先駆的な光学画像技術を用い、世界で初めて細胞膜内でのコレステロールの位置と動きを正確に追跡した。その結果、コレステロールは様々な生体的役割の他に、細胞膜内で情報を伝達する信号分子の役割という意外な発見があった。この研究論文は、2016年12月26日付Nature Chemical Biologyオンライン版に掲載され、「Orthogonal Lipid Sensors Identify Transbilayer Asymmetry of Plasma Membrane Cholesterol (直交脂質センサーで形質膜コレステロールの二重層間非対称性突き止める)」と題されている。この研究を指導したUICの化学教授、Wonhwa Cho, Ph.D.は、「コレステロールという脂質は循環器系疾患との関連で悪者扱いされている。かなり研究はされてきたが、細胞内での機能については余り知られていない。その役割は何か? 悪玉脂質なのか? 絶対にそんなことはない。たとえば、脳は約半分が脂質であり、脳の中でもっとも量の多い脂質はコレステロールだ」と述べている。コレステロール欠乏症で何種類かの疾患が起きるし、体内で12種ほどのステロイド・ホルモンをつくるのもコレステロールが出発物質になっている。Dr. Choの以前の研究で、コレステロールが様々な調節分子、特に細胞タンパク質と相互作用していることは突き止められていたが、コレステロール自体が調節分子とは考えられていなかった。Dr. Choは、「コレステロールが、たとえば増殖や発達といった細胞調節に大切な役割を果たしている可能性は分かっていた。コレステロール・レベルを押し上げる高脂肪食とがん発症率の高さとには関係があることは知られているが、その仕組みについてはよく分かっていない」と述べている。さらに、「理論的に大きな難問の一つは、調節脂質や信号伝達脂質といったものは情報を伝達するために一時的に存在するもののはずなのに、実際にはコレステロールは常在している」と述べている。細胞のコレステロールは90%が細胞膜に含まれており、しかも細胞膜脂質の40%がコレステロールである。また、細胞膜そのものが二重層の脂質分子で成り立っており、コレステロールがその膜の安定を保っている。コレステロールは集まって「ラフト」を形成しており、この「ラフト」は他の信号分子が機能するための足場の役割を果たしていると考えられていた。

生細胞の中のタンパク質がどのように液体やゲル状固体と言った異なる状態に組み立てられるかを理解するために、光で物質を操作するツールが用いられ始めた。細胞は驚異的な複雑さで数千もの化学反応を同時にこなしており、いくつかの反応はオルガネラと呼ばれる特殊なコンパートメント内で行われている。 

最近、アルツハイマー病を治療する可能性がある新しい分子について、2つの重要な研究成果が発表された。 両研究の主任研究員は、モスクワ物理技術研究所(MIPT:Moscow Institute of Physics and Technology)の医化学生命情報学研究所の所長Yan Ivanenkov博士である。 2つの新しい分子の論文は、Molecular Pharmaceutics and Current Alzheimer Researchに掲載された。 別のMIPT研究者Mark Veselovも第2の研究に参加した。 

ハーバード大学の研究チームは、脳の3つの領域の間の接続性をモデルとする多域brain-on-a-chipを新しく開発した。その過程で、脳の異なる領域のニューロンの違いを詳しく調べ、領域間の接続性を再現する目的でin vitroモデルが用いられた。このハーバード大学の研究論文は、2016年12月28日付The Journal of Neurophysiology誌オンライン版に掲載され、「Neurons Derived from Different Brain Regions Are Inherently Different in Vitro: A Novel Multiregional Brain-On-A-Chip (In Vitroで、脳の領域ごとにニューロンが本質的に異なることを解明:新しい発想の多域Brain-On-A-Chip)」と題されている。共同第一著者を務めた、Harvard John A. Paulson School of Engineering and Applied Sciences (SEAS), Disease Biophysics Groupのポスドク研究員のBen Maoz, Ph.D.は、「脳は個別ニューロンの集まり以上のものだ。様々なタイプの細胞があり、異なる領域間が接続されている」と述べている。脳をモデル化する場合、領域間の接続を攻撃する様々な疾患があるため、研究ではその接続性を再現できなければならない。ハーバード大学 Wyss Institute for Biologically Inspired EngineeringのCore Faculty Member であり、SEAS, Bioengineering and Applied Physics BuildingのTarr Family Professorを務めるKit Parker, Ph.D. (写真) は、「アメリカの医療予算の約26%は、神経学的疾患、精神医学的疾患の治療に宛てられている。患者の苦痛を和らげる治療薬の開発を支援するツールは人道的なだけでなく、医療コストを引き下げる方法として最善でもある」と述べている。

La Jolla Institute for Allergy and Immunologyの研究チームは、T細胞活性をコントロールする遺伝子発現パターンをさらに良く理解するため、急性、慢性のウイルス感染に対してT細胞が反応する際のゲノムワイドにおけるクロマチンアクセシビリティの変化をマップ化した。2016年12月20日付Immunityオンライン版に掲載されたこの研究結果は、Tリンパ球の処分を決める分子メカニズムに光を当て、さらにT細胞活性を調節し、免疫機能改善のための臨床介入方法に新しい道を開くもので、研究論文は、「Genome-Wide Changes in Chromatin Accessibility in CD8 T Cells During Viral Infection (ウイルス感染時のCD8 T細胞のゲノムワイドのクロマチンアクセシビリティの変化)」と題されている。Division of Signaling and Gene Expressionの教授を務めるAnjana Rao, Ph.D.の研究室のポスドク研究員、Dr. James Scott-Browneがこの論文の第一著者を務めており、論文中、「T細胞の状態とそれに伴うT細胞の機能を決定する複数の因子を判定することは、そのT細胞がウイルス感染や腫瘍増殖と戦えるかどうか、また、長期的に防御機能を持つかどうかを知る手がかりになる。T細胞表現型を疲弊から回復し、腫瘍や、HIVのような慢性ウイルス感染とよく戦えるようにしたり、ワクチンに応答してより優れた記憶細胞を生成できるようにしたりすることも可能になるかも知れない」と述べている。

テキサス大学 南西部医療センターの研究者は、脳腫瘍の一般的なタイプであるグリオーマ(神経膠腫)の新しいバイオマーカーを発見した。このバイオマーカーは、医師がどれほど活動的な癌であるかを決定することや、治療方針を決める上で助けになるという。 Harold C. Simmons Comprehensive Cancer Centerの研究者は、SHOX2と呼ばれる遺伝子の高発現が中等度のグリオーマにおける生存率の低下を予測できることを発見した。 

慢性的な自己免疫疾患である狼瘡(ループス)は、炎症、痛み、皮膚、関節、および臓器の損傷を介して、冒された人の身体を破壊する可能性がある病気である。 ミシガン大学の研究者らは、腎臓のバイオマーカーが狼瘡の進行と合併症の徴候を示すかどうかを調べた。「狼瘡患者は、腎臓の関与のリスクが高いため、透析または移植を必要とする末期腎疾患になる可能性があります。」とミシガン大学の環境健康科学と産科医学およびInstitute for Healthcare Policy and Innovationのメンバーである、内科(リウマチ学)准教授のEmily Somers, Ph.D., Sc.M.は述べている。「さらに、バイオマーカーが早期に腎臓の関与を検出し、進行を監視することには、大きなニーズがあります。」 Somers博士は狼瘡の結果を研究し、ミシガン南東部の650人以上の狼瘡患者および対照のコホートおよびバイオリポジトリレジストリを含むMILES(the Michigan Lupus Epidemiology and Surveillance: ミシガン狼瘡疫学および監視)プログラムを指揮している。「狼瘡は、主に女性に影響を与える疾患であり、多くの場合、すばらしい人生に襲いかかります。」「MILESプログラムを通じて、私たちはこれまでに、狼瘡に冒されている黒人女性について、狼瘡のリスクが20代で最も高いことを示しました。狼瘡の黒人女性の40%が腎臓の関与を有し、15%が腎疾患でした。」とDr. Somersは語っている。

サイトスポンサー

生命科学出版部 発行書籍