研究グループ、台湾ハブのゲノムのシーケンスとヘビ毒進化上の遺伝的浮動の役割を研究

2017
10月 26
(木)
10:00
タンパク質/糖鎖研究のライフサイエンスニュース

研究グループ、台湾ハブのゲノムのシーケンスとヘビ毒進化上の遺伝的浮動の役割を研究

台湾や沖縄でハブと呼ばれるクサリヘビ科のヘビにかまれると一生障害が残ることもあり、場合によっては死に至ることもある。しかし、その毒に関しては依然として謎のままである。毒の組成は非常にばらつきがあり、同腹仔の間でさえ異なっていることがある。また、この毒素の混合物は何世代もかけて変化してきた。

2017年9月27日付Genome Biology and Evolutionのオンライン版に掲載されたこの研究論文は、ヘビ毒の進化の解明を進めている。この研究グループは、初めてハブのゲノム・シーケンスを解析し、タイワンハブ (Protobothrops mucrosquamatus) のゲノムを近縁種、サキシマハブ (Protobothrops elegans) のゲノムと比較した。

この論文は、「Population Genomic Analysis of a Pitviper Reveals Microevolutionary Forces Underlying Venom Chemistry (ハブの集団ゲノム解析で、ハブ毒化学組成の小進化駆動力を解明)」と題されている。沖縄県庁の統計によれば、過去1年間に沖縄だけで50件をヘビ咬傷事故が起きており、世界保健機関 (WHO) によれば、世界全体では年間81,000人から138,000人がヘビに咬まれて亡くなっている。特に発展途上国や農村地域は毒蛇に出会うことも多く、一方で医療機関も少ないため、ヘビの咬傷は重大事になりやすい。そのような地域では効果的な抗毒素を開発することが住民の生死を分ける結果になる。

この研究論文の首席著者で、Okinawa Institute of Science and Technology (沖縄科学技術大学院大学、OIST) のEcology and Evolution Unit (生態・進化学ユニット) の准教授、Dr. Alexander Mikheyevは、「長年、ヘビ毒は急速に進化することが知られていた。その理由としてもっとも一般的に言われているのが自然淘汰だった。

しかし、それだけがこの進化駆動力ではないのではないかと疑問視する根拠がある」と述べている。OISTとOkinawa Prefectural Institute of Health and Environment (沖縄県衛生環境研究所) の研究グループは、タイワンハブと、沖縄の侵入種になっているサキシマハブの標本30種からヘビ毒と軟組織のサンプルを採取し、ヘビ毒遺伝子のシーケンス全体をマップ化した。

その結果、ヘビ毒の進化には複数の要因が関わっていることが示されている。ヘビ毒の化学組成の進化を理解するためには、その冗長性を理解することが不可欠である。多発型航空機ではエンジン一つが故障しても飛び続けることができる。ヘビ毒も複数システムを備えており、どれか一つが故障してもヘビが生存を続けられるように保証している。ヘビ毒はタンパク質と微小な有機分子で構成されており、獲物を咬むことで獲物の血圧や血液凝固など重要な生理系を複数箇所で攻撃する。ヘビ毒の構成分子の一つが十分に効果を発揮しなかった場合でも他の分子が効果をもたらしてくるのである。

 

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