フロリダ州オーランド市で開催された2017年American Society of Human Genetics (ASHG) 年次会議の10月19日には、世界の遺伝学専門家を対象とした意見調査が発表され、ヒトのゲノム編集について一般社会と意見の一致するところもあれば異なるところもあるという結果が明らかにされた。Stanford Center for Biomedical EthicsのCertified Genetic Counselorを務めるProfessor Kelly Ormond, MSがこの調査結果発表を行った。

 

Stanford University School of MedicineのAlyssa Armsby (写真), MSの指導する研究グループは、国際的な遺伝学研究機関10機関のメンバーを対象に、ゲノム編集の研究や臨床応用の可能性についての考え方や、この比較的新しいテクノロジーとメンバー個人の世界観とのつながりについて意見調査を行った。
2013年に発表されたゲノム編集ツールのCRISPR/Cas9システムは、カスタマイズの容易さや細胞タイプ、生物種全般にわたる有効性などから、急速に遺伝子研究の分野で広く用いられるようになった。しかし、急速に広まったことから、科学界だけでなく一般社会からも、その研究や利用の仕方について社会的な問題、倫理的な疑問が次々と出された。


 
Ms. Armsbyは、「ゲノム編集について常に国際的な対話が必要だが、このテクノロジーに対する遺伝学を学んだ人々の考えに関するデータはほとんどない。遺伝子の研究を行い、患者やその家族と協力している人達は、重要な利害関係者といえる」と述べている。この分析の対象となった遺伝学専門家500人のうち、85%以上がゲノム編集の研究結果を人体に用いてもいいのではないかとしており、これはアメリカの一般社会の意見と変わらない。しかし、倫理的にもう少し複雑な問題を伴う生殖細胞系でのゲノム編集については、将来の世代に対する影響があり得るだけに遺伝学者の意見も分かれている。しかし、大多数 (78%) は、将来において治療目的なら認められるのではないかと考えており、生殖細胞系のゲノム編集については支持が少ない一般社会とは少しずれがある。この点について、Ms. Armsbyは、「ゲノム編集に対する一般の見方も急速に変わってきており、新しい意見調査では生殖細胞系のゲノム編集を許容する意見が増えてきている。ゲノム編集に関する知識が普及するにつれてその情報を使って意見に肉付けするようになることから、意見調査でも人々の考えにさらにニュアンスを付け加えていくことができるようになった」と述べている。
 
遺伝学界内でも、人口統計学的な要因と意見の間の関連を見つけることができる。たとえば、数年の経験を積んだ若い遺伝学者で、自分はそれほど宗教的ではないと考えている人は生殖細胞系のゲノム編集を認める傾向が強い。分析作業はまだ続けられているが、これまでの結果から、遺伝学内でも職種によって、たとえば研究者と臨床医とでは考えも違ってくることが示唆されている。ただし、全体的には、特定の特質を強化するためにゲノム編集を用いることについてはほとんど支持がなく、回答者の15%に満たなかった。それに対して、将来的に臨床治療に用いるようになることについては75%の回答者が支持している。
 
このような調査結果から、社会的影響を持つ科学界の問題について国際的な比較調査を継続することの重要性が強調されており、Ms. Armsbyは、「この対話にも様々な視点を取り込む必要がある。単にヘルス・ケアの現場だけでなく、研究者、倫理学者、政策立案者その他の関係者の参加が必要だろう」と述べている。

BioQuick News:Surver Results: Genetics Specialists’ Views on Genome Editing; Findings Reported at ASHG 2017 Annual Meeting 
 

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