エクソーム解析で子宮内膜症の異常変異体を判別

エクソーム解析で子宮内膜症の異常変異体を判別

Johns Hopkins MedicineとUniversity of British Columbiaの研究者は、遺伝子シーケンシング・ツールを使い、子宮の外で子宮内膜状の組織が増殖し、ひどい痛みを伴う良性子宮内膜症患者24人の組織サンプルから一組の遺伝子変異体を発見した。2017年5月11日付New England Journal of Medicineに掲載されたこの発見により、いつか、侵襲性の強い子宮内膜症と臨床的に緩慢な非侵襲性子宮内膜症とを判別する分子レベルのテストを開発できる可能性がある。



NEJMの研究論文は、「Cancer-Associated Mutations in Endometriosis without Cancer (非がん性子宮内膜症中のがん関連遺伝子変異体)」と題されており、Johns Hopkins University School of MedicineのDepartment of Gynecology & ObstetricsでRichard W. TeLinde Distinguished ProfessorとJohns Hopkins Kimmel Cancer CenterでBreast and Ovarian Cancer ProgramのCo-Directorを務めるIe-Ming Shih, MD, PhD.は、「私達の研究での変異体の発見は、積極的治療を必要としているか、そうでないかを現場の医師が判定するために、子宮内膜症を分類する遺伝学ベースの検査法開発の第一歩ではないか」と述べている。

子宮内膜症は、子宮内の粘膜が子宮の外、特に腹部内に形成増殖される疾患であり、月経閉止前の女性の約10%がこの疾患にかかり、そのうち半数が腹痛や不妊に悩まされている。1920年代、Johns Hopkinsの卒業生で婦人科医だったJohn Sampsonが、初めてこの症状を"endometriosis (子宮内膜症)"と名付け、月経時に正常な子宮内膜組織が輸卵管を通じて腹腔内に漏れて広がった結果起きるのではないかとの仮説を提出した。

Dr. Shihは、「新しい研究でその仮説が覆されるかも知れない」として、組織サンプルに異常な変異体の組み合わせが見つかっており、子宮内膜症の原因は正常な子宮内膜細胞が突然変異するために起きている可能性があると述べている。また、この研究で発見された変異体も、まだ突き止められていない何らかの理由で一部のがんに見つかる遺伝子突然変異と関係があるようだとしつつも、子宮内膜症ではしばしば組織の異常増殖が腹腔内全体に広がることがあるが、卵巣にまで広がることがない限り、この疾患の組織ががん細胞になることはほとんどないと強調している。

Life Science News from Around the Globe

Edited by Michael D. O'Neill

Michael D. O'Neill

バイオクイックニュースは、サイエンスライターとして30年以上の豊富な経験があるマイケルD. オニールによって発行されている独立系科学ニュースメディアです。世界中のバイオニュース(生命科学・医学研究の動向)をタイムリーにお届けします。バイオクイックニュースは、現在160カ国以上に読者がおり、2010年から6年連続で米国APEX Award for Publication Excellenceを受賞しました。
BioQuick is a trademark of Michael D. O'Neill

LinkedIn:Michael D. O'Neill

 

サイトスポンサー