スタンフォード大学の研究者は、新研究でラットの傷ついた肺の呼吸能力を回復させるのに有効なタンパク質模倣物を生物工学により作った。
この合成産物は、ヒトの急性肺傷害に対して、より良い、より安価な治療につながる可能性がある。 ラットで使用した際、それはいくつかの生理的尺度で高価な動物由来の製品と同等またはそれ以上の性能を示したと研究は述べている。
この研究論文は、5月1日にScientific Reportsにオンラインで掲載された。このオープンアクセス論文は、「肺サーファクタントタンパク質のヘリックス性、両親媒性ペプトイド模倣物による急性肺傷害の有効なインビボ治療(Effective in vivo treatment of acute lung injury with helical, amphipathic peptoid mimics of pulmonary surfactant proteins.)」と題されている。
テニスコートぐらいの表面積を持つ風船を膨らませるために必要な力を想像してください。 さらに、その風船にはポケットがあり、湿った内面を持ち、繊細な素材で作られていると想像してください。その風船とはあなたの肺のことです。すべての呼吸は奇跡的なことなのです。
石鹸の様な膜または界面活性剤の薄いコーティングが肺の内面の張力を低下させ、吸入するのに必要な力を大きく減少させる。この界面活性剤なくして、呼吸することはできない。
スタンフォード大学の生物工学准教授であるAnnelise Barron 博士(写真)は、「肺の界面活性剤には素晴らしい生物学的特性がある。」と述べた。
「この存在の鍵は、表面張力を切断する独自の構造を持つ2つの特殊なタンパク質が界面活性剤に存在することである。 しかし、これらの驚くべき構造特性も、合成や精製が難しく、溶液中では比較的不安定であり、寿命が限られ、価格が上昇するという難点がある。」「そのうちの1つには、既知のすべてのヒトタンパク質の化学成分の中で最も疎水性の、または脂肪に似たストレッチが含まれている。」とBarron博士は言う。
「脂肪のストレッチが塊りになる傾向があるため本当に難しい。」Barron博士は20年に渡りこれらの特殊タンパク質の安定した代替物質を開発してきたが、新しい研究では成功に近づいているようだ。
彼女は、動物実験を行ったウェスタンオンタリオ大学の医学と生理学と腫瘍学の准教授であるRuud Veldhuizen 博士と研究のシニア著者を共有している。
この研究の筆頭著者は、Barron博士がスタンフォード大学の前に働いたノースウェスタン大学の元大学院生のAnn Czyzewski 博士である。
初めての大きな挑戦
呼吸は新生児が最初に直面する大きな挑戦です。毎年米国では、自分で天然の界面活性剤を作り出すには早すぎる時期に生まれてしまった約2万〜3万人の乳児が、高価な動物由来の製品で処置を受けている。新生児の小さな肺を覆うのに必要な動物由来の天然界面活性剤のコストは、途上国にとっては非常に厳しい。
「大人の肺は乳児の20倍以上あり、大人の肺の表面積はテニスコートとほぼ同じである。」とBarron博士は語った。多くの生命にとって手の届かない価格の天然界面活性剤。米国では毎年20万人の成人が急性肺傷害の脅威に晒されている。界面活性剤の機能不全は、自動車事故のような衝撃による肺崩壊の外傷、溺死に近い水の吸入、または薬物過剰摂取における異物の吸引などによる細菌性およびウイルス性肺炎を含む重度の肺感染に繋がる。
「皮肉なことに、機械的人工呼吸器を介して患者の呼吸を維持しようとする試みは、界面活性剤を枯渇させる肺感染症を引き起こすことが多い。」とBarron博士は語った。「集中治療室で換気をする人は挿管される。呼吸チューブが鼻に挿入され、肺に通される」「この挿管が3日以上続くと、肺感染を起こす可能性は100%に上昇する」と彼女は語った。人工呼吸器に4時間を費やしても、肺感染の確率は1/6になる。
最近まで、機能性界面活性剤を得る唯一の方法は、牛の肺から洗い流すか、またはその目的のために飼育されたブタの肺から化学的に抽出することであった。
「動物1頭につきわずかな量しか手に入らない」「回収物は慎重に浄化する必要がある。物質が非常に壊れやすいため、病原菌を殺すための高温処理はできない。」とBarron博士は語った。
近年、いくらか安価な代用品が利用可能になっている。 それは、短いタンパク質スニペットと共に脂肪脂質の水性分散液を含有するもので、天然由来の界面活性剤タンパク質の表面張力低下能力をある程度模倣している。 何もしないよりはるかに優れているが、この混合物は動物由来の界面活性剤ほど効果的ではない。
2つのタンパク質の合成模倣物
Barron博士の設計したペプトイドと呼ばれるポリマーは、肺で見つかった界面活性タンパク質BとCの2つの重要な生理活性部分を模倣する特定の配列とらせん構造を有している。彼女がpBおよびpCと呼ぶ模倣物はこれらのタンパク質に似ている。 しかし、それらのビルディングブロックは、プロテアーゼによる分解に対して耐性を持たせるために、タンパク質の構成要素とは微妙に異なる。
さらに、それらは、天然由来の物よりも凝集せず、生物活性を失う傾向がはるかに低く、動物から界面活性剤を得るコストの1/4〜1/3で合成することができる。
最も重要なことは、げっ歯類の研究では、pCを含有する界面活性剤が、肺の主な目的である血液を酸素化することにおいて動物由来の界面活性剤より優れていることを示したことである。
この試験では、2種類の模倣物質が動物抽出物と比較された。研究者らは、麻酔したラットに異なる界面活性剤候補を投与し、肺をすすぎ洗いして生まれつきの界面活性剤を除去した後、継時的にいくつかの生理学的結果を評価した。
Barron博士によると、pCを含む溶液は、すべての結果において動物の界面活性剤と同等またはそれ以上の良好な結果を示したという。
新しいフロンティア
「これは新しいフロンティアを開く。我々の比較的シンプルな模倣物は、保存期間が長く、リーズナブルな価格で大量に製造することができる。」とBarron博士は語った。彼女は、集中治療室で挿管された成人で、肺の界面活性剤の交換に合理性があるケースで臨床試験を行うことを望んでいる。
最終的には、私の父親が生まれたボリビアのような途上国の未熟児にも利用できるようになる。その日のために前臨床試験と臨床試験がこれから行われていく、と彼女は付け加えた。
この仕事はスタンフォード・メディシンが精密保健に焦点を当てた例であり、その目的は健康で病気を予知し予防し、病気を正確に診断し治療することである。
他のスタンフォードの共著者にはMichelle Dohm(PhD)、元大学院生Maruti Didwania(PhD)、リサーチエンジニアのJennifer Lin(PhD) そして研究技術者のLauren Broeringがいる。ウェスタンオンタリオ大学とノースウェスタン大学の研究者もこの研究に貢献した。
【BioQuick news:Designer Peptoids Mimic Surfactant Proteins & Reduce Surface Tension in the Lungs, Restoring Breathing Capacity in Injured Lungs in Rat Model—Results “Open Up New Frontiers”】



