Mayo Clinicの研究で、乳房の異型過形成が乳がんに発展するリスクはこれまで考えられていた以上に高いことが明らかになった。研究論文著者は、異型過形成ががんに発展するのを予防する治療法はあるが十分に活用されていないと述べている。Mayo Clinicのこの研究結果にはVanderbilt UniversityおよびUniversity of Virginiaとの共同研究も含まれており、2015年1月1日付New England Journal of Medicineオンライン版乳がん特別論文に詳述されている。

 

乳房の異型過形成は前がん症状であり、毎年アメリカ国内で実施されている100万件を超える乳房の生検で良性と診断されるうちの約10件に1件がこの病変である。異型過形成は、顕微鏡で見ると、乳腺細胞が通常以上に増殖し始め (hyperplasia)、細胞や構造が通常とは異なる (atypical)。異型病変は良性と考えられているが、そのリスクや外観、遺伝子変異などからこの病変も早期がんの特徴を示している。このような良性病変を持つ何百人もの女性のデータでも、乳がん発症の絶対リスクは1年に1%ずつ増加することが示されている。その研究では、5年後には7%の女性が乳がんを発症し、さらに10年後には13%が、25年後には30%が乳がんを発症している。


この研究結果から、毎年異型過形成あるいはatypiaと診断される10万人以上の女性は高リスク・カテゴリーに含まれるものであり、綿密な検査と薬物治療により発症リスクを引き下げることで大勢の女性が救われるはずである。Mayo Clinicのがん専門医で、この研究の筆頭著者であるLynn Hartmann, M.D.は、「このグループのリスク予測を向上することで、個々の患者のリスク・レベルに合わせた医療を考えることができる。乳房撮影法に加えてMRI検査も選択肢に入れ、あるいはがん発症のリスクを下げる抗エストロゲン療法も考えるよう説明するなど高リスク女性の予防医療にも尽力する必要がある」と述べている。

以前の研究で、atypiaの女性は「相対リスク」が4倍から5倍程度高いことが突き止められている。言い替えれば、atypia病変のある女性は、病変のない女性に比べて乳がんを発症する率が4倍から5倍程度高いのである。ただし、一人の患者が一定年月の間に乳がんを発症する確率を示す「絶対リスク」については十分な患者数やフォローアップ期間を対象にした研究がほとんどない。
このリスクを明確にするため、Mayo Clinicの研究チームは、1967年から2001年までに生検を受け、atypiaと診断された698人の女性を対象に何年もかけて追跡調査した。研究チームは病理検査記録と医療記録を調べ、患者フォローアップ・アンケートを利用して乳がんを発症した患者、発症時期などのデータをまとめた。

その結果、平均12.5年のフォローアップ後、143人の女性が乳がんを発症していたことを突き止めた。ここで重要なのは、Mayo Clinicの研究結果は、Vanderbilt Universityの研究者が別のatypia患者コホートの生検から得た結果によって裏付けられていることである。
どちらのデータも、生検から25年後には25%から30%の女性が乳がんを発症していたのである。Mayo研究チームの以前の研究で、よく用いられている2種類の統計学的リスク予測モデル (BCRATモデルとIBISモデル) は、異型過形成のある女性のリスク予測にはあまり有効でないことが突き止められており、このタイプの病変の女性のリスクを予測するためにはもっと正確な方法が必要だという結論になっていた。
Mayo Clinicの乳房外科医であり、研究論文の共同筆頭著者にもなっている。
Amy Degnim, M.D.は、「私達の研究では、統計モデルに頼らず、atypia患者女性の乳がん発症の現実データを積み上げた。この絶対リスク・データは仮説モデルによる予測より優れている」と述べている。

研究チームは、患者の病理検査サンプルの内容も含めることでリスク予測をさらに正確にすることができた。また、atypiaの生検で、個別atypia病変部または病巣の数が増えるに従って、乳がんを発症するリスクが高まることも突き止めている。
たとえば、生検から25年経過した時点で、生検で3箇所以上の病巣が見つかった女性では47%が乳がんを発症したが、病巣が1箇所だった女性の場合には乳がん発症患者は24%だった。このような研究結果から、同研究チームでは、異型過形成と診断された女性は生涯の乳がん発症リスクがかなり高く、MRI検査を受けることが望ましいと勧めている。

また、tamoxifenなど抗エストロゲン剤投与もすでにatypia患者女性の治験が実施されており、乳がん発症リスクを50%以上も引き下げられることが証明されている。
ただし、Dr. Degnimは、かなりのatypia患者女性が薬剤を服用しておらず、その原因の一端として、患者も医師も治療のガイドとなる乳がんリスクを適切に把握していないということが問題だとしている。

■原著へのリンクは英語版をご覧ください:
http://www.bioquicknews.com/node/2085

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