社会全体がコロナ禍で騒いでいる中で個別化医療なの?
コロナウイルス感染の第4波の中で、医薬品業界はコロナウイルス治療薬や予防薬の研究開発に全力を注ぐ必要があり、この時期に個別化医療で無いでしょうと考える人も多いと思います。そこで、今回は私たちの個別化医療を行うための臨床試料を用いたバイオマーカー探索グループの話をする前に感染症と個別化医療について少し話します。
人間の病気の殆どは感染症と個別化医療の疾患領域です。感染症は、治療薬や予防薬が全ての人に共通に使用できるので、個別化医療の考え方は必要ないと考えられます。個人差があるとすれば、効き方と副作用の出方ですので、一過性で特効薬が開発されれば解決します。一方、個別化医療は癌・成人病(生活習慣病)や先天性心疾患などで、疾患の出方が多様なため個々人にあった薬が必要になります。今のコロナウイルス感染での外出自粛が長引けば、私は生活習慣病が増えるのではないかと危惧しています。
最近、政府はコロナ禍の中で日本のコロナウイルスのワクチンなど予防薬や治療薬の研究開発遅れている、特に抗体医薬の研究開発が遅れているので、そこを推進すると言っています。しかし、最近外国の抗体創薬の探索研究を行っているベンチャー企業から、「日本の製薬各社に抗体医薬の研究開発を共同で行いたいと話しをしても殆どの企業は乗り気ではない。何故でしょう」との相談がありました。これを考えると政府の言っているように日本で抗体医薬の研究開発がこれから進むかどうかは疑問です。
確かに、抗体創薬の探索研究は低分子創薬に比べて、創薬ターゲットに対するリード薬の探索は早いと思います。それなのに何故日本の製薬会社は乗り気にならないのか。それは抗体医薬やRNAワクチンの開発(品質保証などGLP、動物実験)・製品化(GMPなどの工場生産)には多額の費用が掛かるからです。この開発・製品化が出来るのは世界のトップ10に入るような資金力のあ
中分子有機化合物の創薬への新たな利用法
今回は中分子化合物をPPI阻害剤として利用する以外の、新たな利用法に関して少し説明します。以前の「プロテイン相互作用を阻害する中分子創薬が最近話題」のところで、「最近では中分子サイクリックペプタイドがPPI阻害剤の開発への利用だけでなく、低分子創薬への応用や、抗体薬やドラッグデリバリーにも利用できるのではないかとも考えられています。」と書きました。
更に、前回天然物の中分子化合物にサイクリックペプタイドやペプチドミメティック化合物多く含まれていることを説明している際に、動植物はそれらの中分子化合物の多くを生理活性物質として分子の立体構造変えながら利用していることを思い出しました。特にセファロスポリンなどのサイクリックペプタイドの一部分は体内動態の研究で、血液中では水酸基などの水溶性残基を分子の外に出して水溶性になり、目的のプロテインと相互作用する際には水溶性残基を分子の内側に入れて脂溶性を高めることが明らかになっています。この様な体内動態を示す中分子化合物は抗体薬やドラッグデリバリーにも利用できると考えられます。 中分子化合物の抗体薬やドラッグデリバリーの応用は、最近盛んにおこなわれるようになり、20015年から2017年に掛けて既に報告があります。 初めに中分子化合物を用いたドラッグデリバリーですがペプチドドリーム社が2017年の合成誌(K.Masuya, et.al.,J.Synth.Chem.,Jpn.75.1171)に報告しています。それによるとサイクリックペプタイドなどの中分子化合物は抗体と同じ様に目的の疾患細胞に集積する性能を持つ化合物が存在し、このような性能を持つ中分子化合物を利用することでAntibody-Drug Conjugate(ADC)と同様のドラッグデリバリーが可能となると言っています。これをペプチドドリーム社はPeptide-Drug C


