創薬ターゲット(標的)の探索とは


サイエンス出版部 発行書籍

疾患の動的ネットワークのプロテインープロテイン相互作用のシステム、すなわち、それぞれの疾患における臨床バイオマーカーの解明し、更にゲノムの情報や臨床検査に用いられている項目の値などを取り入れ、IT技術を用い総合的に判断することで、その疾患の患者さんの層別が出来ると考えています。   そして、この様な総合判断が一般化すると、現在市販されている医薬品の個々の患者さんにあった最適な選択も可能にし、更に今までphase2でドロップアウトした医薬候補品も、上記の様に患者さんを層別し、再度臨床試験をすることで医薬品にできる可能性もあると考えます。 更に、この様に層別した患者さんに適した医薬品を提供することが、本当にメデカルニーズにあった創薬と思います。   そこで、創薬の標的を考えるために、患者さんの層別に用いた疾患の動的ネットワークのプロテインープロテイン相互作用メカニズムを詳細に解析し、そのメカニズムのどの部分を創薬の標的にするかを検討する必要があります。それには薬理学的な観点から動的ネットワークを見る必要があり、そこでは今までゲノム解析情報や創薬研究者の経験と蓄積が生かされます。この様に創薬標的プロテインを探索することを製薬業界では「ターゲットバリデーション」と言います。 そして、ターゲットバリデーションした創薬標的プロテインが「既存標的」で健常な状態の生理学的な標的機能も、ヒトの病理学的な標的機能も科学的な理解が良くなされている場合は創薬研究に結び付けることがスムーズにできます。しかし、一般には、「新規標的」の場合が多く、発見された新規標的プロテインの多くはGタンパク質共役受容体(GPCR)とプロテインキナーゼが主な主流になっていると考えます。 創薬標的プロテインがターゲット細胞の外なのか、それとも細胞表面か、細胞内かを見極め、更にその標的プロテインが疾患を引き起こ

著者: 中山 登
中山 登
このセクションは、(株)Spectro Decypher 取締役&CTO(元・中外製薬株式会社研究本部化学部分析グループ長)中山 登 氏による創薬研究コラムです。
長年、創薬研究に携わってこられた中山氏が、創薬研究の潮流についての雑感や、創薬研究者が直面している課題の解決法などを体験談を踏まえて語っていただきます。
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【中山 登 氏 ご略歴】
昭和48年3月 立命館大学理工学部卒業
昭和48年5月~
昭和56年4月 電気通信大学材料科学科、コロンビア大学化学部研究員
昭和56年6月 日本ロシュ株式会社研究所 入社
平成8年4月 日本ロシュ株式会社研究所天然物化学部、機器分析グループ長
平成16年10月 中外製薬株式会社研究本部化学部分析グループ長
平成21年4月 中外製薬株式会社 定年 シニア職
平成26年4月 中外製薬株式会社 退職
平成26年5月~現在 株式会社バイオシス・テクノロジーズ 取締役&チィーフ・テクニカル・オフサー(CTO)
平成27年4月~平成31年3月 聖マリアンナ医科大学分子病態情報研究講座講師
平成31年1月~現在 株式会社Spectro Decypher 取締役&チィーフ・テクニカル・オフサー(CTO)