プロテイン相互作用を阻害する中分子創薬が最近話題


サイエンス出版部 発行書籍

最近、プロテインープロテイン相互作用を阻害する中分子創薬が話題になっていますが、小職のところにも中分子創薬のセミナーをしてくださいとの依頼がありました。そこで、先日「中分子医薬品の基礎/最新動向を踏まえた創薬・開発の留意点」という題名でセミナーをしたところです。   そのセミナー参加者の多くが、プロテインープロテイン相互作用を阻害する中分子創薬に興味があるが、中分子創薬が話題になった背景と、なぜこれから中分子化合物が創薬に重要なのか疑問を持っていました。そこで、今回のセミナーでは中分子創薬が話題になった背景から説明しました。その背景はこのコラムでも以前に取り上げた以下の内容です。 近年の個別化医療では、臨床での薬の選択や創薬において、臨床バイオマーカーが重要になっています。更に、正常状態と病態の臨界状態、病態初期状態あるいは病態悪化の動的状態遷移過程をはっきり識別することが出来る動的ネットワークバイオマーカーを、複雑疾病の早期診断や病態悪化の予兆検出に広く適用することで、適切なタイミングで適切な個別化医療を行なうことが可能となるものと期待されています。 そこで、疾患状態で起こっている動的ネットワークのプロテインープロテイン相互作用(PPI)のシステムを解明することで、その疾患のメカニズムが明らかになると同時に、このが創薬のターゲットになるのではないかと考えられており、製薬各社は阻害剤の開発に力を入れようとしています。そのPPIの阻害剤として中分子化合物が有効ではないかと考えられているのです。 一方、中分子化合物、特に中分子サイクリックペプタイドは低分子医薬品や抗体などの生体高分子医薬品の両方の欠点を補う医薬品であることが明らかになってきています。     上記の図が示すように、低分子薬の弱点は特異性が低く、そのために副作用が多く、またPPI阻害は狙えませ

著者: 中山 登
中山 登
このセクションは、(株)Spectro Decypher 取締役&CTO(元・中外製薬株式会社研究本部化学部分析グループ長)中山 登 氏による創薬研究コラムです。
長年、創薬研究に携わってこられた中山氏が、創薬研究の潮流についての雑感や、創薬研究者が直面している課題の解決法などを体験談を踏まえて語っていただきます。
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【中山 登 氏 ご略歴】
昭和48年3月 立命館大学理工学部卒業
昭和48年5月~
昭和56年4月 電気通信大学材料科学科、コロンビア大学化学部研究員
昭和56年6月 日本ロシュ株式会社研究所 入社
平成8年4月 日本ロシュ株式会社研究所天然物化学部、機器分析グループ長
平成16年10月 中外製薬株式会社研究本部化学部分析グループ長
平成21年4月 中外製薬株式会社 定年 シニア職
平成26年4月 中外製薬株式会社 退職
平成26年5月~現在 株式会社バイオシス・テクノロジーズ 取締役&チィーフ・テクニカル・オフサー(CTO)
平成27年4月~平成31年3月 聖マリアンナ医科大学分子病態情報研究講座講師
平成31年1月~現在 株式会社Spectro Decypher 取締役&チィーフ・テクニカル・オフサー(CTO)