最近、プロテインープロテイン相互作用を阻害する中分子創薬が話題になっていますが、小職のところにも中分子創薬のセミナーをしてくださいとの依頼がありました。そこで、先日「中分子医薬品の基礎/最新動向を踏まえた創薬・開発の留意点」という題名でセミナーをしたところです。
そのセミナー参加者の多くが、プロテインープロテイン相互作用を阻害する中分子創薬に興味があるが、中分子創薬が話題になった背景と、なぜこれから中分子化合物が創薬に重要なのか疑問を持っていました。そこで、今回のセミナーでは中分子創薬が話題になった背景から説明しました。その背景はこのコラムでも以前に取り上げた以下の内容です。
近年の個別化医療では、臨床での薬の選択や創薬において、臨床バイオマーカーが重要になっています。更に、正常状態と病態の臨界状態、病態初期状態あるいは病態悪化の動的状態遷移過程をはっきり識別することが出来る動的ネットワークバイオマーカーを、複雑疾病の早期診断や病態悪化の予兆検出に広く適用することで、適切なタイミングで適切な個別化医療を行なうことが可能となるものと期待されています。
そこで、疾患状態で起こっている動的ネットワークのプロテインープロテイン相互作用(PPI)のシステムを解明することで、その疾患のメカニズムが明らかになると同時に、このが創薬のターゲットになるのではないかと考えられており、製薬各社は阻害剤の開発に力を入れようとしています。そのPPIの阻害剤として中分子化合物が有効ではないかと考えられているのです。
一方、中分子化合物、特に中分子サイクリックペプタイドは低分子医薬品や抗体などの生体高分子医薬品の両方の欠点を補う医薬品であることが明らかになってきています。

上記の図が示すように、低分子薬の弱点は特異性が低く、そのために副作用が多く、またPPI阻害は狙えません。しかし利点は細胞内標的を狙え、経口投与や合成も可能で製造コストも安いことです。一方、抗体などの生体高分子薬は弱点と利点が低分子薬と全く正反対で、特に製造コストが高いことで健康保険の財政を圧迫しています。ところが、中分子薬は特異性が高く、副作用が少なくPPI阻害も細胞内標的も狙え、更に製造コストも安く出来、低分子薬と抗体薬両方の利点を備えていると考えられます。
更に、最近では中分子サイクリックペプタイドがPPI阻害剤の開発への利用だけでなく、低分子創薬への応用や、抗体薬やドラッグデリバリーにも利用できるのではないかとも考えられています。
そこで、以前にPPI阻害の中分子化合物の応用を書きましたが、このコラムでは創薬探索に利用できる中分子ライブラリーついて、更にPPI<阻害以外への応用も含めて、これから数回に分けて中分子創薬について再度取り上げていきたいと考えています。
