診断マーカーと医薬品の選択


サイエンス出版部 発行書籍

実際には遺伝子の変異やプロテインなどの分子の構成や感度のパターンの違いにより様々なタイプの患者がいることが最近わかってきています。そこで、病気に合った遺伝子診断やプロテイン診断などの科学的な診断を臨床現場に取り入れ、各疾患の状態に則して患者を層別し、層別データを元に個々の患者に最適な医薬品を提供することが個別化医療なので、現在市販されている全て医薬品を、動的バイオマーカーから解析された遺伝子やプロテインなどの診断マーカーを詳細に解析して患者を層別することで、現在市販されている全ての医薬品から患者にあった薬を的確に選ぶ必要があることを前回話しました。   しかし、この様な科学的な診断で患者さんにあった医薬品の選択をする個別化医療は実際にどこまで進んでいるのでしょうか? スウェーデンやデンマークなどの北欧の国では国家プロジェクトとして全国民を対象に遺伝子やプロテインの情報を収集し個別化医療に利用しようとしています。 それでは、日本ではどうでしょうか?昨年から癌治療については国家プロジェクトとしてDNA診断を利用して最適な抗癌剤の選択治療を推進することが決まり、実際に国立癌センターを中心にプロジェクトがスタートしています。 癌の場合は癌細胞の種類による遺伝子の変異の情報がかなり解明されており、その遺伝子の情報から薬を選択することは可能になっています。 話は少し逸れますが、最近のTVのニュースで、国立癌センターではこの遺伝子診断を末期の癌患者に利用したいとの話をしていました。 私はそのことに少し疑問を感じるのです。それは、癌は初期の段階では癌細胞が単一で動的バイオマーカーシステムもシンプルですが、末期の癌は癌細胞が多種類(ヘテロ)で動的バイオマーカーシステムも複雑になり、そのため、初期の癌では遺伝子診断による薬の選択で完治する可能性がありますが、末期の癌では完治は難しく、

著者: 中山 登
中山 登
このセクションは、(株)Spectro Decypher 取締役&CTO(元・中外製薬株式会社研究本部化学部分析グループ長)中山 登 氏による創薬研究コラムです。
長年、創薬研究に携わってこられた中山氏が、創薬研究の潮流についての雑感や、創薬研究者が直面している課題の解決法などを体験談を踏まえて語っていただきます。
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【中山 登 氏 ご略歴】
昭和48年3月 立命館大学理工学部卒業
昭和48年5月~
昭和56年4月 電気通信大学材料科学科、コロンビア大学化学部研究員
昭和56年6月 日本ロシュ株式会社研究所 入社
平成8年4月 日本ロシュ株式会社研究所天然物化学部、機器分析グループ長
平成16年10月 中外製薬株式会社研究本部化学部分析グループ長
平成21年4月 中外製薬株式会社 定年 シニア職
平成26年4月 中外製薬株式会社 退職
平成26年5月~現在 株式会社バイオシス・テクノロジーズ 取締役&チィーフ・テクニカル・オフサー(CTO)
平成27年4月~平成31年3月 聖マリアンナ医科大学分子病態情報研究講座講師
平成31年1月~現在 株式会社Spectro Decypher 取締役&チィーフ・テクニカル・オフサー(CTO)