個別化医療と創薬(2)


サイエンス出版部 発行書籍

今回は最近盛んになっている抗体や免疫製剤における診断マーカーの重要性について話したいと思います。 例えば夢の抗がん剤と言われた癌免疫治療薬のオブジーボでも、効果のある患者は2~3割であるが、診断マーカーが無いために7割強の効かない患者にも使用していて、健康保険財政を圧迫しています。更に、抗体薬で乳がんの特効薬と言われたハーセプチンも、診断マーカーはHAR2タンパクに陽性のチェックで陽性の場合に使用することになっていますが、陽性の患者の3割強は効かないことが報告されています。   そこで、現在市販されている全て医薬品を、動的バイオマーカーから解析された遺伝子やプロテインなどの診断マーカーを詳細に解析して患者を層別することで、臨床現場でも患者にあった薬を的確に選ぶことが出来ると思うのです。そして、これこそが正に最良の個別化医療に繫がると私は考えるのです。 更に、今後の創薬も動的バイオマーカーから解析された遺伝子やタンパク質などの診断マーカーを詳細に解析して患者を層別して、効く薬の無い患者のグループにターゲットを絞って新薬の開発を進めることがこれからは必要となってきているのではないでしょうか。 ここで個別化医療の中での創薬について私の考えを話すことにしましょう。前にも話した様に、病気は動的ネットワークバイオマーカー中で起きているので、細胞や血液などの臨床試料を用いてプロテインの解析を行い、図2に示すように病気の動的ネットワークバイオマーカー明らかにすることで、それによって病気に特異的なプロテインを見出すことができます。 更に、現在市販されている医薬品の遺伝子解析に基づいた診断マーカーの情報から、市販品で効かない患者のグループのバイオマーカーシステムを探索し、図2の様に探索されたバイオマーカーシステムを創薬のターゲットとして、新しいタイプの薬を開発することが重要と考えま

著者: 中山 登
中山 登
このセクションは、(株)Spectro Decypher 取締役&CTO(元・中外製薬株式会社研究本部化学部分析グループ長)中山 登 氏による創薬研究コラムです。
長年、創薬研究に携わってこられた中山氏が、創薬研究の潮流についての雑感や、創薬研究者が直面している課題の解決法などを体験談を踏まえて語っていただきます。
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【中山 登 氏 ご略歴】
昭和48年3月 立命館大学理工学部卒業
昭和48年5月~
昭和56年4月 電気通信大学材料科学科、コロンビア大学化学部研究員
昭和56年6月 日本ロシュ株式会社研究所 入社
平成8年4月 日本ロシュ株式会社研究所天然物化学部、機器分析グループ長
平成16年10月 中外製薬株式会社研究本部化学部分析グループ長
平成21年4月 中外製薬株式会社 定年 シニア職
平成26年4月 中外製薬株式会社 退職
平成26年5月~現在 株式会社バイオシス・テクノロジーズ 取締役&チィーフ・テクニカル・オフサー(CTO)
平成27年4月~平成31年3月 聖マリアンナ医科大学分子病態情報研究講座講師
平成31年1月~現在 株式会社Spectro Decypher 取締役&チィーフ・テクニカル・オフサー(CTO)