個別化医療と創薬(1)


サイエンス出版部 発行書籍

 久しぶりですが、皆様良いお年をお迎え頂けたでしょうか?  今回は個別化医療と創薬に焦点を絞って話したいと思います。   病気の原因や病態について近年遺伝子やプロテインなどの分子レベルでの解明が進んで、同じ病気と診断された患者でも、実際には遺伝子の変異やプロテインなどの分子の違いにより様々なタイプの患者がいることが最近わかってきています。そこで、病気に合った遺伝子診断やプロテイン診断などの科学的な診断を臨床現場に取り入れ、各疾患の状態に則して患者を層別し、層別データを元に個々の患者に最適な医薬品を提供することが個別化医療なのです。 現在市販されている医薬品も本当に患者個人にあったものが適用されているかも疑問なところがあります。その一例として、臨床現場での2型糖尿病のある患者と医者の話を以前に説明しましたが、今の医療現場では試行錯誤しながら薬を選んでいるのが実情です。個別化医療で重要になってきているのが、患者を科学的に層別し、最適の薬を選べるゲノムやプロテインなどの診断マーカーの必要性なのです。以前を話した様に、癌の領域では他病気の領域よりも診断マーカー(腫瘍マーカー)が少し進んでいますが、他の病気の領域ではまだまだではないかと思うのです。また、患者個々人で同じ病気でも状況や症状の出方も異なるので、一種類の診断マーカーでは詳細がわからず、複数の診断マーカーが必要になっていると考えらます。 以前に説明しましたが、最近は臨床資料を用いた遺伝子やプロテインの解析から、細胞などの機能は機能性タンパク質のシステム(バイオマーカーシステム)を持っていることが明らかになってきました。更に、病気にはバイオマーカーシステムのどの部分が関与しているかも明らかになってきています。 そこで、以前に説明したバイオマーカーシステムの図を使って、病気の診断マーカーについて説明します。同じ病気でも

著者: 中山 登
中山 登
このセクションは、(株)Spectro Decypher 取締役&CTO(元・中外製薬株式会社研究本部化学部分析グループ長)中山 登 氏による創薬研究コラムです。
長年、創薬研究に携わってこられた中山氏が、創薬研究の潮流についての雑感や、創薬研究者が直面している課題の解決法などを体験談を踏まえて語っていただきます。
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【中山 登 氏 ご略歴】
昭和48年3月 立命館大学理工学部卒業
昭和48年5月~
昭和56年4月 電気通信大学材料科学科、コロンビア大学化学部研究員
昭和56年6月 日本ロシュ株式会社研究所 入社
平成8年4月 日本ロシュ株式会社研究所天然物化学部、機器分析グループ長
平成16年10月 中外製薬株式会社研究本部化学部分析グループ長
平成21年4月 中外製薬株式会社 定年 シニア職
平成26年4月 中外製薬株式会社 退職
平成26年5月~現在 株式会社バイオシス・テクノロジーズ 取締役&チィーフ・テクニカル・オフサー(CTO)
平成27年4月~平成31年3月 聖マリアンナ医科大学分子病態情報研究講座講師
平成31年1月~現在 株式会社Spectro Decypher 取締役&チィーフ・テクニカル・オフサー(CTO)