低分子・中分子創薬の新しい考え方であるAntibody-drug conjugate(ADC)製剤


サイエンス出版部 発行書籍

前回の最後で、次回は低分子・中分子創薬の今までの考えを変えるかも知れないAntibody-drug conjugate(ADC)製剤に関して説明しますと言って、その後中断して失礼いたしました。 低分子・中分子創薬の場合、ターゲットプロテインを用いた阻害物質のバインデングスクリーニングだと脂溶性の高い化合物が多く見つかり、殆どが体内動態の悪い化合物が多いと以前にお話ししました。   そこで、低分子創薬はHTS-Screeningでリード化合物を探索し、次にX線などのバイオストラクチャーの情報とHT-In-Vitro ADME Screeningの情報からMedicinal Chemistryを用い高活性で体内動態の良い化合物に合成変換して医薬候補品にするという創薬の手法が必要で、そのために多大な人員と時間を費やすことになります。更に中分子も同様な創薬の手法を用いますが、低分子以上にMedicinal Chemistryの分野が困難で、より一層時間がかかります。 そこで、Antibody-drug conjugate(ADC)の手法を用いるとデリバリー抗体が目的の低分子・中分子を運んでくれるので体内動態と毒性・副作用の問題解決するのではないかと考えています。まず初めにADCの基礎的な考え方をお話しします。ADCとは疾病細胞を認識する抗体(デリバリー抗体)と、活性本体の低分子・中分子剤を適当なリンカーで繋いで出来た医薬品です。ADCは体内の投与するとデリバリー抗体によって疾病細胞に送られ細胞の中に入ります。その後は下記の図に示すように細胞内でデリバリー抗体が分解されるとリンカーと活性分子が出て、更にリンカーの部分が外れて活性分子が出て高い治療効果を発揮することになります。 以上のことからADC製剤では、今まで多大な能力と時間をかけていた、低分子・中分子の活性物質の体内動態

著者: 中山 登
中山 登
このセクションは、(株)Spectro Decypher 取締役&CTO(元・中外製薬株式会社研究本部化学部分析グループ長)中山 登 氏による創薬研究コラムです。
長年、創薬研究に携わってこられた中山氏が、創薬研究の潮流についての雑感や、創薬研究者が直面している課題の解決法などを体験談を踏まえて語っていただきます。
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【中山 登 氏 ご略歴】
昭和48年3月 立命館大学理工学部卒業
昭和48年5月~
昭和56年4月 電気通信大学材料科学科、コロンビア大学化学部研究員
昭和56年6月 日本ロシュ株式会社研究所 入社
平成8年4月 日本ロシュ株式会社研究所天然物化学部、機器分析グループ長
平成16年10月 中外製薬株式会社研究本部化学部分析グループ長
平成21年4月 中外製薬株式会社 定年 シニア職
平成26年4月 中外製薬株式会社 退職
平成26年5月~現在 株式会社バイオシス・テクノロジーズ 取締役&チィーフ・テクニカル・オフサー(CTO)
平成27年4月~平成31年3月 聖マリアンナ医科大学分子病態情報研究講座講師
平成31年1月~現在 株式会社Spectro Decypher 取締役&チィーフ・テクニカル・オフサー(CTO)