医薬品開発の現状と個別化医療とは


サイエンス出版部 発行書籍

それでは、本題の「創薬よ何処へ」に入りましょう。そこで初めは創薬研究現状と個別化医療などについて少し考えてみたいと思います。 近年創薬の分野は、以前から行われてきた低分子医薬、1990年後半から盛んに開発が行われ2000年初頭に製品化された抗体医薬、更にプロテイン-プロテインインターラクション(PPI)を阻害するようなサイクリックペプタイドのような中分子医薬や、ロシュ・ジェネンテックの抗がん剤のKadcylaのような抗体を用いた低分子医薬のドラッグデリバリーシステムであるAntibody-drug conjugate(ADC)分野、また最近話題になっている日本で小野製薬が発売した抗がん剤のオブジーボの様な免疫阻害剤の分野などと多種多様になり、そこから出てくる医薬候補品も多彩になっています。   この様な創薬研究の多様性の中、今まで行われて来た低分子創薬はHTS-Screeningでリード化合物を探索し、次にX線などのバイオストラクチャーの情報とHT-In-Vitro ADME Screeningの情報からMedicinal Chemistryを用い高活性で体内動態の良い化合物に合成変換して医薬候補品にするという、創薬の手法が固定化しています。そこで、研究開発手法が固定した低分子創薬に対しては、最近の創薬研究の外注委託会社がリード探索から医薬候補化合物創出までを受託するところが多くなってきています。 特に2012年にAstraZenecaは中国の創薬研究開発(R&D)受託機関Pharmaronと低分子創薬開発に関して戦略提携を結んで、自社では低分子創薬を殆ど行わなくなり、会社の研究体制も改革しました。 このことは、今まで長年の低分子創薬を基盤にしてきた研究体制を変えようとする製薬企業も多くなって来ることが予想されます。更に、最近は抗体や免疫などの新しい分野の創薬は大学で

著者: 中山 登
中山 登
このセクションは、(株)Spectro Decypher 取締役&CTO(元・中外製薬株式会社研究本部化学部分析グループ長)中山 登 氏による創薬研究コラムです。
長年、創薬研究に携わってこられた中山氏が、創薬研究の潮流についての雑感や、創薬研究者が直面している課題の解決法などを体験談を踏まえて語っていただきます。
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【中山 登 氏 ご略歴】
昭和48年3月 立命館大学理工学部卒業
昭和48年5月~
昭和56年4月 電気通信大学材料科学科、コロンビア大学化学部研究員
昭和56年6月 日本ロシュ株式会社研究所 入社
平成8年4月 日本ロシュ株式会社研究所天然物化学部、機器分析グループ長
平成16年10月 中外製薬株式会社研究本部化学部分析グループ長
平成21年4月 中外製薬株式会社 定年 シニア職
平成26年4月 中外製薬株式会社 退職
平成26年5月~現在 株式会社バイオシス・テクノロジーズ 取締役&チィーフ・テクニカル・オフサー(CTO)
平成27年4月~平成31年3月 聖マリアンナ医科大学分子病態情報研究講座講師
平成31年1月~現在 株式会社Spectro Decypher 取締役&チィーフ・テクニカル・オフサー(CTO)