新技術を用いた医薬品開発の課題と解決策(2)

新技術を用いた医薬品開発の課題と解決策(2)

今年の夏からいろいろと忙しくて、「創薬よ何処へ」の構想を考える余裕が無くて、半年遅れの投稿になってしまい申し訳ございませんでした。 前回は今後の医薬品開発の方向性として、リード化合物をDDS技術で疾患ターゲットに薬物を送る方法が主流になると話しました。しかし、このような医薬品開発で圧倒的に時間が掛かるのが動物を使った毒性・薬理・安全性試験「非臨床試験」と、人を対象とした「臨床試験」の部分です。特にDDS技術を利用した場合、「非臨床・臨床試験」はリード化合物、DDS化合物とリード化合物・DDSの合剤の3種類の試験を行う必要があり、以前から、医薬品開発で非臨床・臨床試験に時間が掛かることが課題になっていました。更に、非臨床試験から臨床試験に入る際に、動物種間差で開発を断念するケースが多いことも問題になっていました。 このような医薬品開発の状況を改善するために、最近では動物を使わない毒性・安全性試験の開発が進められました。日本では経済産業省が中心になり、毒性関連ビッグデータを用いた化学物質の安全性予測システム(AI-SHIPS)プロジェクトが、東京大学の船津公人教授がプロジェクトリーダとなり、2017年から進められて2022年3月で完成し、現在は利用できる段階に入って、創薬開発の非臨床試験に応用するまで進んでいます。 更に、人のIPS細胞に毒性評価用レポーター遺伝子を導入した毒性・安全性試験の開発も進んでおり、この毒性試験では動物種間差がなく、直接臨床試験に移行することが可能であると考えられます。このように、AI-SHIPSとIPS細胞を用いることで非臨床・臨床試験が簡略化でき、殆ど動物や人の試験をすることなく治験に持っていくことも可能になってくると考えられます。 リード化合物をDDS技術で疾患ターゲットに薬物を送る創薬開発も、時間がかかりますが、上記の非臨床・臨床試

著者: 中山 登
中山 登
このセクションは、(株)Spectro Decypher 取締役&CTO(元・中外製薬株式会社研究本部化学部分析グループ長)中山 登 氏による創薬研究コラムです。
長年、創薬研究に携わってこられた中山氏が、創薬研究の潮流についての雑感や、創薬研究者が直面している課題の解決法などを体験談を踏まえて語っていただきます。
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【中山 登 氏 ご略歴】
昭和48年3月 立命館大学理工学部卒業
昭和48年5月~
昭和56年4月 電気通信大学材料科学科、コロンビア大学化学部研究員
昭和56年6月 日本ロシュ株式会社研究所 入社
平成8年4月 日本ロシュ株式会社研究所天然物化学部、機器分析グループ長
平成16年10月 中外製薬株式会社研究本部化学部分析グループ長
平成21年4月 中外製薬株式会社 定年 シニア職
平成26年4月 中外製薬株式会社 退職
平成26年5月~現在 株式会社バイオシス・テクノロジーズ 取締役&チィーフ・テクニカル・オフサー(CTO)
平成27年4月~平成31年3月 聖マリアンナ医科大学分子病態情報研究講座講師
平成31年1月~現在 株式会社Spectro Decypher 取締役&チィーフ・テクニカル・オフサー(CTO)