天然物の中分子創薬への利用の問題点と活用法


サイエンス出版部 発行書籍

前回の話の中でも、プロテインープロテイン相互作用を阻害する中分子としてサイクリックペプタイドやペプチドミメティック化合物が有効であることやこれらの化合物は天然物の中に多く含まれていることを話しました。そして、今まで行われて来た低分子創薬には中分子は適さないことから、中分子天然物はスクリーニングの対象から除外されて来たため、現在は利用可能な中分子天然物のスクリーニング用のライブラリーは殆ど存在しないことも話しました。   ところで、私も元は天然物化学を専門にしていて、会社でも天然物スクリーニングに携わっていたので、天然物化学の専門家を良く知っています。その何人かから、私の書いている「創薬は何処へ」を読んでいて、創薬のための中分子天然物のライブラリーが無いと書いているが、近年製薬会社では創薬標的タンパクのバインデングアッセイのスクリーニングソースから中分子を除外していたからであって、1990年以前のin vitroバイオアッセイでは中分子天然物が多く見つかっていた。 更にアカデミアの天然物化学者の中には植物・動物のフェロモンや毒物や共生物質など、また海洋天然物、微生物を研究している人が多く、その対象の化合物には中分子のサイクリックペプタイドやペプチドミメティック化合物が多く含まれていことから、そのような化合物の情報を集めて中分子創薬スクリーニングソースにすると良いのではとの話を頂きました。 確かに、以前に私が天然物の構造決定を行っていた際に、大学との共同研究の対象化合物は中分子のサイクリックペプタイドやペプタイドが多かった。例えば蜂毒はアミノ酸5から7の直鎖ペプタイドだったし、名城大学薬学部と共同研究で構造決定をした、アオコの生理活性物質のミクロシスチンも異常アミノ酸を含んだサイクリックペプタイドでした。 最近では天然物を再利用しようとする動きも始まっています。日本農芸化

著者: 中山 登
中山 登
このセクションは、(株)Spectro Decypher 取締役&CTO(元・中外製薬株式会社研究本部化学部分析グループ長)中山 登 氏による創薬研究コラムです。
長年、創薬研究に携わってこられた中山氏が、創薬研究の潮流についての雑感や、創薬研究者が直面している課題の解決法などを体験談を踏まえて語っていただきます。
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【中山 登 氏 ご略歴】
昭和48年3月 立命館大学理工学部卒業
昭和48年5月~
昭和56年4月 電気通信大学材料科学科、コロンビア大学化学部研究員
昭和56年6月 日本ロシュ株式会社研究所 入社
平成8年4月 日本ロシュ株式会社研究所天然物化学部、機器分析グループ長
平成16年10月 中外製薬株式会社研究本部化学部分析グループ長
平成21年4月 中外製薬株式会社 定年 シニア職
平成26年4月 中外製薬株式会社 退職
平成26年5月~現在 株式会社バイオシス・テクノロジーズ 取締役&チィーフ・テクニカル・オフサー(CTO)
平成27年4月~平成31年3月 聖マリアンナ医科大学分子病態情報研究講座講師
平成31年1月~現在 株式会社Spectro Decypher 取締役&チィーフ・テクニカル・オフサー(CTO)