中分子化合物が目的の阻害部位に相互作用しているかを確認する方法


サイエンス出版部 発行書籍

中分子化合物の阻害対象はプロテインープロテイン相互作用部位であることは今までの話の中で何度か説明してきました。そこで、創薬にはプロテインープロテイン相互作用部位の解明が不可欠になります。プロテインープロテイン相互作用部位はシグナル伝達に関与している場は弱い相互作用であり、また機能に関与している場合は強い相互作用であると考えています。   その相互作用部位の解明には立体構造解析が必要です。しかし、立体構造解析に一般的に用いられるX線解析は、相互作用が弱い場合は結晶になりにくく、また相互作用が強い場合は分子量が大きい過ぎるためどちらかのプロテインの分子量を小さくする必要があり、相互作用部位の解明には不向きです。強い相互作用のプロテインープロテイン相互作用部位の解明には、最近クライオ電子顕微鏡が用いられることが多いようです。ところが中分子創薬の場合、シグナル伝達に関与しているプロテインープロテイン相互作用部位を創薬ターゲットにする場合が多く、その場合は相互作用が弱いので部位の解明にX線解析もクライオ電子顕微鏡も用いることが出来ません。それでは、弱い相互作用部位の解明に関してどのようにしたら良いか話すことにします。以前に「探索的プロテインープロテイン相互作用の解明」の項目でプロテインの動的ネットワークの解明の際に相互作用部位の解明方法を少し話しましたが、今回は中分子創薬に絞って話します。  シグナル伝達に関与している弱いプロテインープロテイン相互作用部位の解明には、まず相互作用している両方のプロテインのX線解析が必要と考えています。しかし、シグナル伝達に関与しているプロテインの分子量が小さく、立体構造を持ないことが多く、その場合X線解析が不可能になるので、X線解析は薬のターゲットプロテインだけでも良いと考えています。  次に以前に説明したLC/MSを用いたHydroge

著者: 中山 登
中山 登
このセクションは、(株)Spectro Decypher 取締役&CTO(元・中外製薬株式会社研究本部化学部分析グループ長)中山 登 氏による創薬研究コラムです。
長年、創薬研究に携わってこられた中山氏が、創薬研究の潮流についての雑感や、創薬研究者が直面している課題の解決法などを体験談を踏まえて語っていただきます。
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【中山 登 氏 ご略歴】
昭和48年3月 立命館大学理工学部卒業
昭和48年5月~
昭和56年4月 電気通信大学材料科学科、コロンビア大学化学部研究員
昭和56年6月 日本ロシュ株式会社研究所 入社
平成8年4月 日本ロシュ株式会社研究所天然物化学部、機器分析グループ長
平成16年10月 中外製薬株式会社研究本部化学部分析グループ長
平成21年4月 中外製薬株式会社 定年 シニア職
平成26年4月 中外製薬株式会社 退職
平成26年5月~現在 株式会社バイオシス・テクノロジーズ 取締役&チィーフ・テクニカル・オフサー(CTO)
平成27年4月~平成31年3月 聖マリアンナ医科大学分子病態情報研究講座講師
平成31年1月~現在 株式会社Spectro Decypher 取締役&チィーフ・テクニカル・オフサー(CTO)