中分子有機化合物は医薬品になるのだろうか


サイエンス出版部 発行書籍

今回から中分子創薬の詳細について話すことにします。内容としては先ず多くの創薬研究者が思う、「中分子有機化合物は本当に医薬品になるのだろうか?」との疑問に対する話から始めて、創薬に応用可能な中分子のライブラリー、更に中分子が最も有効と考えられるプロテインープロテイン相互作用阻害剤における相互作用部位の解析手法、最後に総合的な創薬開発が期待される中分子創薬と今後の展望について話を進めたいと思います。   それでは、初めに私が講演した中分子創薬セミナーの際に多くの創薬研究者から疑問として質問されるのが中分子化合物は医薬品になるのですかとのことです。 それは、今まで開発された中分子医薬品はセファロスポリンやFK-506で、これらの化合物は特別で1990年代に開発されたものですが、それ以来中分子医薬品は殆ど開発されてきていないではないこと、その原因について中分子化合物は体内動態が悪いし、更に分子量から考えて体内に入ると異物と認識されて抗原抗体反応を起こし易いのではないかとの疑問がだされます。 まずは、この疑問に答えることで、中分子有機化合物が医薬品になると考えた根拠を説明することにします。 セファロスポリンやFK-506が探索されたのは1980年代で、その頃の医薬品探索は天然物化合物を用いたビトロアッセイが主流でした。 そのため、低分子から中分子化合物までの探索さに限定され、見つかった化合物がそのまま医薬品になることは無く、活性を向上させたり、体内動態を良くすることが必要で、そのために化学合成による化学構造の変換が必要でした。 そこで、化学合成のやり易い低分子化合物が選ばれることが多くなり、必然的に低分子が作用する、プロテインの活性化を阻害する薬剤の開発が優先しました。また中分子化合物はプロテインープロテイン相互作用部位を阻害する化合物ですが、その創薬のための高次元のアッセイ

著者: 中山 登
中山 登
このセクションは、(株)Spectro Decypher 取締役&CTO(元・中外製薬株式会社研究本部化学部分析グループ長)中山 登 氏による創薬研究コラムです。
長年、創薬研究に携わってこられた中山氏が、創薬研究の潮流についての雑感や、創薬研究者が直面している課題の解決法などを体験談を踏まえて語っていただきます。
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【中山 登 氏 ご略歴】
昭和48年3月 立命館大学理工学部卒業
昭和48年5月~
昭和56年4月 電気通信大学材料科学科、コロンビア大学化学部研究員
昭和56年6月 日本ロシュ株式会社研究所 入社
平成8年4月 日本ロシュ株式会社研究所天然物化学部、機器分析グループ長
平成16年10月 中外製薬株式会社研究本部化学部分析グループ長
平成21年4月 中外製薬株式会社 定年 シニア職
平成26年4月 中外製薬株式会社 退職
平成26年5月~現在 株式会社バイオシス・テクノロジーズ 取締役&チィーフ・テクニカル・オフサー(CTO)
平成27年4月~平成31年3月 聖マリアンナ医科大学分子病態情報研究講座講師
平成31年1月~現在 株式会社Spectro Decypher 取締役&チィーフ・テクニカル・オフサー(CTO)