ケタミンの効果が2ヶ月持続?脳内スイッチの発見が拓く新時代

ケタミンの効果が2ヶ月持続?脳内スイッチの発見が拓く新時代

うつ病治療の「切り札」として注目される薬剤、ケタミン。従来の薬が効かない患者さんにも数時間で効果が現れる即効性は、まさに希望の光です。しかし、その効果は長く続かず、頻繁な投与と副作用のリスクという大きな壁がありました。もし、たった1回の投与で、その効果が2ヶ月も持続するならどうでしょう?そんな夢のような治療の実現に向け、科学者たちが脳の中にある「持続スイッチ」の正体を突き止めました。これは、うつ病に苦しむ多くの人々の治療負担を劇的に減らす、新たな時代の幕開けかもしれません。 うつ病に対するケタミンの抗うつ効果を数週間延長する有望な方法を示唆する画期的研究 米国では、人口の約10%が常時、大うつ病性障害に苦しんでおり、生涯のうちには最大20%がMDDの症状を示すとされています。しかし、その有病率の高さにもかかわらず、MDDの治療法は、決して少なくない割合の人々にとって十分な効果を上げていません。標準治療である抗うつ薬は、MDD患者の30%には効果がありません。低用量で投与されたケタミンは、速効性の抗うつ薬として顕著な有効性を示し、他の抗うつ薬治療に抵抗性を示した患者においてさえ、数時間以内に効果が観察されます。しかし、症状を抑え続けるためにはケタミンの継続的な投与が必要であり、これには解離性行動や依存症の可能性といった副作用を伴う可能性があり、治療を中止すると再発することもあります。 ヴァンダービルト脳研究所およびヴァンダービルト大学のリーサ・モンテッジア博士(Lisa Monteggia, PhD)とエゲ・カヴァラリ博士(Ege Kavalali, PhD)の研究室が『Science』誌に2025年5月8日付で発表した新しい研究で、ケタミン単回投与の効果を、現在の最大1週間という期間から、最大2ヶ月という長期にわたって大幅に延長することが可能であることが示されま

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Edited by Michael D. O'Neill

Michael D. O'Neill

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