ミラーマイクロRNAが複数の脳機能に関与する

ミラーマイクロRNAが複数の脳機能に関与する

サイエンス出版部 発行書籍

遺伝子は私達一人一人の「個性」の創生を司っている。髪の毛の色から特定の病気に対する脆弱性まで、「個性」には様々な側面があるが、一体遺伝子はその生産物であるタンパクの合成を含め、どのようにコントロールしているのだろうか?この度、記憶を司る基礎的なプロセスに関与する新たな生体分子群が発見され、神経変性疾患の治療に新たな方向が示されたと思われる。   英国のブリストル大学臨床科学部の生物化学科と病理学科と薬理学科に率いられる研究チームが、2012年4月27日のJournal of Biological Chemistry誌に発表したのは、ミラーマイクロRNAと呼ばれる、新たな生体分子群である。マイクロRNAは非コード遺伝子で「ジャンクDNA」に分類され、細胞プロセスを制御する様々なタンパク類の機能や発現量に関与している。報告によれば、それぞれ異なる機能を有する2つのマイクロRNAが、同じDNAの断片(配列)から生成されており、片方はトップストランドから、もう片方は相補的な「ミラー」であるボトムストランドから生成される。 この度明らかにされたのは、ヒトDNAの1断片から次第に2つのマイクロRNAが形成され、それらは脳内に発現し、それぞれこれまで知られていなかった作用を有するということだ。一つのマイクロRNAは、記憶を司ると言われている神経細胞の一部に発現し、もう一つは、神経細胞周りのカーゴタンパクの動きを制御する。同大学の臨床科学部分子神経科学科教授のジェームス・ウネイ博士は「マイクロRNAのほんの僅かな違いが脳の機能に大きな影響を与え、記憶の機能や神経変性疾患への罹患し易さなどに関与しているという、大変重要な事実が明らかになりました。ヒトのミラーマイクロRNAはもっと沢山見つかるであろうし、それらはヒトの神経変性疾患の治療、例えば認知症の治療に道を開くものと考えられます。」

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Edited by Michael D. O'Neill

Michael D. O'Neill

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