交感神経由来のニューロペプチドY(NPY)が熱産生性脂肪の維持を通じて肥満を予防する新たなメカニズムを解明

オックスフォード大学のアナ・I・ドミンゴス博士(Ana I. Domingos, PhD)らによる研究チームは、交感神経由来のニューロペプチドY(NPY)がエネルギー消費を維持し、食事由来肥満を防ぐ上で重要な役割を果たしていることを示しました。この研究成果は2024年8月28日付の『Nature』誌に掲載され、「Sympathetic Neuropeptide Y Protects from Obesity by Sustaining Thermogenic Fat(交感神経由来ニューロペプチドYは熱産生性脂肪を維持することで肥満を防ぐ)」というタイトルのオープンアクセス論文として公開されています。

主な発見

過去の研究では、NPY遺伝子の変異が高い体格指数(BMI)と関連するものの、食事パターンの変化とは関係がないことが示唆されていました。今回の研究では、NPYが褐色脂肪組織(BAT)および白色脂肪組織(WAT)内の血管周囲の細胞であるミューラル細胞(mural cells)の増殖を調節する重要な役割を果たすことが明らかになりました。これらの細胞は熱産生性脂肪細胞(エネルギーを燃焼して熱を生む細胞)の前駆細胞として機能します。

研究チームはまた、NPY+交感神経ニューロンが主に脂肪組織の血管構造を支配しており、これらのNPY応答性細胞が熱産生性脂肪細胞の供給源となることを発見しました。一方で、食事由来肥満はNPY+交感神経軸索の喪失とミューラル細胞の枯渇を引き起こし、熱産生機能の低下と肥満への感受性増加につながることが示されました。

動物モデルでの検証

交感神経ニューロンからNPYを選択的に除去した動物モデルでは、熱産生能力とエネルギー消費が低下しました。この変化は肥満が進行する前に発生し、NPYがエネルギー収支の維持において食事摂取とは独立して機能していることを示しています。さらに、この動物モデルでは通常の食事でも肥満になりやすく、高脂肪食ではさらに体重が増加しましたが、食事量の増加は認められませんでした。

中枢と末梢NPYの役割の違い

これまで脳内NPYが食欲を促進することが知られていましたが、末梢の交感神経由来NPYは逆にエネルギー消費を促進することが分かりました。この対照的な役割は、肥満や関連する代謝障害を克服するために末梢NPY経路を標的とした新しい治療戦略の可能性を示唆しています。

写真:アナ・I・ドミンゴス博士(Ana I. Domingos, PhD)

[Nature article]

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