ハンチントン病の進行を遅らせる可能性—β遮断薬の新たな治療的役割を発見

ハンチントン病の進行を遅らせる可能性—β遮断薬の新たな治療的役割を発見

サイエンス出版部 発行書籍

ハンチントン病の進行を遅らせる可能性—β遮断薬の新たな治療的役割を発見 2024年12月2日、『JAMA Neurology』に発表された研究で、論文タイトルは「β-Blocker Use and Delayed Onset and Progression of Huntington Disease(β遮断薬の使用とハンチントン病の発症遅延および進行抑制)」です。アイオワ大学(University of Iowa, UI) の研究チームは、一般的に高血圧や心疾患の治療に用いられるβ遮断薬 が、ハンチントン病(Huntington’s disease, HD)の発症を遅らせ、症状の進行を抑制する可能性があることを明らかにしました。この研究の筆頭著者であるジョーダン・シュルツ博士(Jordan Schultz, PhD) は、「ハンチントン病に対する疾患修飾薬はこれまで存在しませんでした。しかし、β遮断薬は安価で安全性が確立されており、多様な病期のHD患者にとって有益である可能性があります。」と語りました。 本研究は、世界最大規模のHD観察データベース「Enroll-HD」 を活用し、21,000人以上の患者データ を解析することで、β遮断薬の使用がHDの発症リスクを低下させ、症状の進行を緩やかにする可能性を示しました。 交感神経の過活動とHDの関係 β遮断薬は、交感神経系の「闘争・逃走反応(fight or flight response)」を抑制することで心拍数を低下させる作用を持ちます。研究チームは、HD患者が健康な人と比較して交感神経の活動がわずかに過剰であることに着目しました。 「HD患者は交感神経がやや過活動状態にあり、ノルエピネフリン(norepinephrine)の分泌量が多い可能性があります。この微細な変化が神経変性に寄与していると

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Edited by Michael D. O'Neill

Michael D. O'Neill

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