Tauタンパク質の新たな役割:脳の酸化ストレス防御を担う“善玉”とは?
サイエンス出版部 発行書籍
ベイラー医科大学とテキサス小児病院のJan and Dan Duncan Neurological Research Institute(Duncan NRI)の研究者らは、アルツハイマー病をはじめとする神経変性疾患に関与することで知られるTau(タウ)タンパク質が、実際には脳の健康を守るポジティブな役割も果たしていることを発見しました。この研究では、Tauが過剰な活性酸素種(reactive oxygen species: ROS)による神経損傷を軽減し、健康的な老化を支援する役割を担っていることが示されています。この成果は、2024年8月26日付のNature Neuroscienceに掲載されました。 Tauタンパク質と酸化ストレスの関係 活性酸素種(ROS)は、細胞がエネルギーを生産する過程やその他の機能の副産物として自然に生成されます。低レベルのROSは細胞のシグナル伝達において重要な役割を果たしますが、過剰になると細胞にとって有害となり、酸化ストレスを引き起こします。このストレスにより、過酸化脂質と呼ばれる毒性の高い分子が生成されます。リード著者であるリンゼイ・グッドマン博士(Lindsey Goodman, PhD)は以下のように述べています。 「神経細胞は特に酸化ストレスに対して脆弱で、過酸化脂質のレベルが適切に制御されない場合、細胞死が引き起こされます。」 このような酸化ストレスの悪影響を緩和するために、脳には多層的な保護戦略が備わっています。 脂質滴の役割とTauの関与 2015年にベレン研究室が発見した神経保護メカニズムの一つに、神経細胞が有害な過酸化脂質を隣接するグリア細胞に移送する仕組みがあります。グリア細胞はこれらの脂質を「脂質滴」として隔離し、無毒化するとともに、将来的にエネルギー源として利用可能な形で保存します。このプロセスは
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