マサチューセッツ総合病院ブリガム主導の研究が、90件の神経画像研究の結果を統合し、統合失調症に特有の脳ネットワークを発見—治療計画に新たな示唆

マサチューセッツ総合病院ブリガム(Mass General Brigham)の研究チームが、統合失調症に関連する脳萎縮(atrophy: 脳の縮小)の多様なパターンを結びつける特有の脳ネットワークを発見しました。8,000人以上の参加者を対象とした複数の神経画像研究のデータを統合することで、研究チームは統合失調症の異なる段階や症状に共通する特定の脳の結合パターンを特定しました。このパターンは、他の精神疾患に関連する脳ネットワークとは異なることが確認されました。本研究の成果は、統合失調症ネットワークに関連する脳刺激部位を評価する臨床試験(患者募集予定)の指針となる見込みです。

本研究の結果は、2024年12月12日付で『Nature Mental Health』誌に掲載されました。論文のタイトルは、「Heterogeneous Patterns of Brain Atrophy in Schizophrenia Localize to a Common Brain Network(統合失調症における異種の脳萎縮パターンは共通の脳ネットワークに局在する)」です。

 

「統合失調症が脳にどのような影響を及ぼすのか、既存の報告の共通点を探りました。」と、本研究の責任著者であるアーメド・T・マクルーフ医学博士(Ahmed T. Makhlouf, MD)は述べています。

「統合失調症では、脳のさまざまな部位で萎縮が見られますが、それらはすべて単一のネットワークに結びついていることが分かりました。」

 

統合失調症の神経解剖学的研究は大規模に行われてきましたが、結果のばらつきや手法の違いにより、脳萎縮に関連する神経回路の理解は限られていました。

 

「その理由の一つとして、実は皆が同じものを異なる視点から見ている可能性があります。目隠しをした複数の人が異なる部位の象に触れて説明しようとすると、それぞれ違うことを語るでしょう」と、本研究の上級著者であるシャン・H・シッディキ医学博士(Shan H. Siddiqi, MD)は述べています。

「本研究では、その象の全体像を再構築することを試みました。」

 

本研究では、統合失調症に関連する脳萎縮を調べた90件の研究のデータを解析しました。データセットには以下の参加者が含まれています。

 

最近診断を受けた統合失調症患者:1,636人

慢性統合失調症患者:2,120人

健常者:6,000人以上

遺伝的または臨床的に統合失調症の高リスクと判定された者:927人(遺伝的リスク)、580人(早期症状に基づくリスク)

まず、研究チームは統合失調症における広範な脳萎縮部位を統合した共通の脳マップを作成しました。次に、座標ネットワークマッピング(coordinate network mapping: CNM)と呼ばれる手法を用い、萎縮部位と脳の機能ネットワークとの重なりを解析しました。

 

その結果、得られた萎縮の接続マップは、統合失調症に関連する脳領域と重なっていることが判明しました。特に、両側の島皮質(insula)、海馬(hippocampus)、および紡錘状皮質(fusiform cortex)と関連があることが示されました。

 

さらに、研究者らは、このネットワークが加齢による脳変化やアルツハイマー病、大うつ病、物質使用障害(依存症)に関連する脳ネットワークとは異なることを明らかにしました。つまり、今回発見された脳ネットワークは統合失調症に特異的なものであることが示唆されました。

研究チームは、統合失調症の異なる症状や病期にある患者でも、この脳ネットワークが共通していることを発見しました。また、抗精神病薬による治療を受けても、このネットワークには大きな変化が見られませんでした。

一方で、統合失調症発症の高リスク群に属する人々も、患者と類似した脳萎縮パターンを示していました。しかし、臨床的に診断された統合失調症患者では、より特徴的なネットワークの結びつきが見られました。

研究チームは、高リスク群の萎縮パターンをより詳細に理解することで、統合失調症の発症リスクを予測する手がかりが得られる可能性があると考えています。また、個別の患者のコネクトーム(脳のネットワーク構造)を用いた今後の研究によって、より個別化された診断や治療計画が可能になるかもしれません。

さらに、本研究の知見を活用し、「経頭蓋磁気刺激法(transcranial magnetic stimulation: TMS)」を用いた臨床試験が計画されています。この試験では、TMSを用いて特定の刺激部位が統合失調症ネットワークとどのように接続しているかを評価する予定です。「統合失調症が神経変性疾患かどうかについては、今も議論が続いています。」とマクルーフ博士は述べています。

「私たちの研究は、統合失調症には特有の統一された脳ネットワークが存在し、それが病態の中心的な特徴である可能性を示唆しています。」

本研究の著者には、マクルーフ博士(Ahmed T. Makhlouf, MD)とシッディキ博士(Shan H. Siddiqi, MD)に加え、以下のマサチューセッツ総合病院ブリガム(Mass General Brigham)の研究者が名を連ねています。

 

ウィリアム・ドリュー(William Drew)

ジェイコブ・L・スタブス(Jacob L. Stubbs)

ジョセフ・J・テイラー(Joseph J. Taylor)

デビッド・シルバーズワイグ(David Silbersweig)

マイケル・D・フォックス(Michael D. Fox)

また、ドナート・リロイア(Donato Liloia)とジョーダン・グラフマン(Jordan Grafman)も共著者として参加しています。

 

マサチューセッツ総合病院ブリガムについて

マサチューセッツ総合病院ブリガム(Mass General Brigham)は、医学の最難関課題を解決するために、卓越した研究者・医療従事者が集う統合型アカデミック・ヘルスケアシステムです。同機関は、学術医療センター、地域・専門病院、医療保険プラン、医師ネットワーク、地域医療センター、在宅医療、長期ケアサービスなど、多様な医療サービスを統合しています。

また、非営利組織として、患者ケア、研究、教育、地域貢献に取り組んでいます。さらに、ハーバード大学医学部(Harvard Medical School)の複数の附属病院を有する、全米有数のバイオメディカル研究機関でもあります。

詳細情報はこちら:Mass General Brigham公式サイト

 

 [News release] [Nature Mental Health abstract]

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