なぜタバコはやめられない?脳の「報酬と失望」を司る手綱核の謎に迫る

なぜタバコはやめられない?脳の「報酬と失望」を司る手綱核の謎に迫る

脳の片隅にある、忘れ去られた小さな領域。そこに、薬物依存という現代社会の大きな問題を解決する鍵が隠されていました。科学における大きな発見は、時に「誰も見ていない場所を見る」という単純な決断から生まれます。ロックフェラー大学分子生物学研究室のリサーチ・アソシエイト・プロフェッサーであるイネス・イバニェス-タロン博士(Ines Ibañez-Tallon, PhD)は、過去10年間にわたり、この研究を体現してきました。彼女は、脳内の「手綱核」として知られる、これまでほとんど研究されてこなかった小さな領域が、依存症や薬物乱用にいかに大きな役割を果たしているかを明らかにしたのです。この研究は、人々が化学物質への依存を克服するのを助ける新薬開発に向けた、国を挙げたプロジェクトのきっかけとなりました。 手綱核は、灰白質と白質からなる非常に細長い帯状の領域で、その小ささから微細構造と見なされています。これは約3億6000万年前に脊椎動物に初めて現れた、脳の古い部位です。この小さな結節を深く掘り下げたイバニェス-タロン博士は、そこが非常に複雑で高度に接続された指令センターであることを発見しました。それは、高感度センサーと超高速交換台の両方の機能を持ち、ドーパミン、アセチルコリン、セロトニン、ノルエピネフリンといった快感誘発性および調節性の神経伝達物質を産生する脳領域を含む他の領域へ、化学信号を検出・送信します。彼女はまた、手綱核がモチベーション、失望、うつ、ストレスといった感情状態や認知行動の調節を助けていることも明らかにしました。 彼女の洞察は、オピオイド依存症に直接対処しうる創薬標的の可能性を特定しただけでなく、ポジティブな行動が健康的な報酬反応をいかに高めることができるかをも示唆しています。私たちは、彼女がこのあまり知られていない脳領域に光を当てた経緯について話を聞きまし

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Edited by Michael D. O'Neill

Michael D. O'Neill

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