奇妙な生物ウミグモのゲノムを初解読!「消えたお腹」の謎と進化の秘密に迫る

奇妙な生物ウミグモのゲノムを初解読!「消えたお腹」の謎と進化の秘密に迫る

まるでSF映画のクリーチャーのような、奇妙な姿の生き物がいます。胴体はほとんどなく、内臓の多くは長い脚の中へ。そして、お腹はどこにあるのかわからないほどに小さい。この不思議な生き物「ウミグモ」の設計図(ゲノム)を、世界で初めて高精度で解読したところ、生物の形作りと進化に関する、驚くべきドラマが見えてきました。 初の高品質ウミグモゲノムが、鋏角類の進化学的発生生物学(エボデボ)に新たな洞察を提供 ウィーン大学とウィスコンシン大学マディソン校(米国)が参加する国際共同研究により、ウミグモの一種(Pycnogonum litorale)の染色体レベルのゲノムアセンブリ(ゲノム情報の構築)が史上初めて完成しました。このゲノムは、ウミグモ特有の体の構造(ボディプラン)の発生についての手がかりを与え、鋏角類(きょうかくるい)全体の進化の歴史を明らかにするための画期的な成果となります。この研究は、2025年7月2日に『BMC Biology』誌に掲載されました。オープンアクセスの論文タイトルは「The Genome of a Sea Spider Corroborates a Shared Hox Cluster Motif in Arthropods with a Reduced Posterior Tagma(ウミグモのゲノムは、後方の体節が縮小した節足動物における共通のHoxクラスターモチーフを裏付ける)」です。 ウミグモは、非常に特異な解剖学的構造を持つ海洋性の節足動物です。胴体は非常に細く短く、内臓の多くは長い脚の中にまで伸びています。そして、腹部はほとんど見分けがつかないほどに極端に退化しています。ウミグモは、クモ、サソリ、ダニ、カブトガニといった、よりよく知られた動物とともに、鉤爪(かぎづめ)のような口器(鋏角)にちなんで名付けられた鋏角類というグループに属し

Life Science News from Around the Globe

Edited by Michael D. O'Neill

Michael D. O'Neill

バイオクイックニュースは、サイエンスライターとして30年以上の豊富な経験があるマイケルD. オニールによって発行されている独立系科学ニュースメディアです。世界中のバイオニュース(生命科学・医学研究の動向)をタイムリーにお届けします。バイオクイックニュースは、現在160カ国以上に読者がおり、2010年から6年連続で米国APEX Award for Publication Excellenceを受賞しました。
BioQuick is a trademark of Michael D. O'Neill

LinkedIn:Michael D. O'Neill

 

【サイエンス雑誌シリーズ】Amazonストアにて好評販売中!