遺伝性或いは散発性メラノーマは皮膚がんのうちで最も致死性が高いが、この度、それらのリスクを高めると思われる遺伝子が、国際的な研究で同定された。この変異はMITFをコード化する遺伝子に起こる。MITFはメラノーマの生成元となる細胞であるメラノサイト内の、いくつかの重要なタンパク質の産生を誘導する転写因子である。以前の研究では、MITFがメラノーマの癌遺伝子として作用しうることを示唆していたが、現在の研究ではMITFの変異がメラノーマのリスクを高めるメカニズムを識別した。

 


米国、英国、およびオーストラリアの研究チームからの報告は、2011年11月13日付けのNature誌オンライン版に掲載され、印刷版には、フランスとの共同研究も含めて報告される予定だ。このフランスの研究では、メラノーマのリスクを高める変異が、一般的な腎臓癌リスクも高めることが発見された。「我々は、以前からMITFがメラニン色素の主要制御因子であることを知っていました。そして数年前、SUMO化と呼ばれる科学修飾がMITFの活性を抑制する働きがあることが分かりました。」と、マサチューセッツ総合病院(MGH)皮膚科のチーフであり、MGH皮膚生物学リサーチセンターのディレクターのデイビッド・フィッシャー博士は説明する。「今回発見された変異は、MITFのSUMO化をブロックし、それによMITFの過剰な活動が、メラノーマのリスクを高めると見られています。」と、Nature誌に掲載された論文の共同著者でもあるフィッシャー博士は言う。


「メラノーマ患者の約10%はこの疾患の家族歴をもちますが、複数の世代にわたって起こる真の遺伝性メラノーマは、おそらく全てのケースの1%以下にしかならないでしょう。皮膚黒色種のほとんどが、過度の太陽光の曝露や、より一般的には赤髪遺伝子(MC1R)やMITFなど、中程度の遺伝子変異体による環境的な要因との相互作用によるものです。」と、MGH皮膚科、またウェルマン光医学センターからの共同著者、ヘンシン・ツァオ博士は語る。

 現在の研究は、三代にわたって8例のメラノーマが報告されている家族から、1人のメラノーマ患者のゲノムをシーケンシングする事から始まった。8例の内4例は患者の第一度近親者であるが、特定されている二つの高リスク変異は観察されていない。研究チームは、発見された新規の変異体の中でもMITFの変異に焦点を当てた。それは、以前にメラノーマの発がん遺伝子として同定されていたからだ。家族の中から、さらに6人のがん患者の遺伝子変異を調べた所、内2人から同じMITFの変異(E318K)が見られた。さらに、メラノーマリスクにおけるこの変異の役割を分析するため、研究チームは英国とオーストラリアで実施された複数の大規模な研究から、15000人以上のサンプルのゲノムタイプを選択した。その結果、E318K変異は、健常対照者よりもメラノーマ患者の方に、より頻繁に発生し、メラノーマの患者を2人から3人持つ家族の間ではさらに多く見られた。

分析の結果、突然変異はSUMO化を減少させ、いくつかのMITFにコントロールされている遺伝子の転写を増加させることが確認された。更に、E318Kの変異は、メラノーマのリスクファクターの一つである母斑と呼ばれるホクロ数の増加や、虹彩の色調が青くならない傾向などと関連している。「このMITF変異体はメラノーマの潜在リスクを倍増させます。これは、過度な日焼けにより増加するリスクとほぼ同じなのです。しかしながら、この研究の重要な面は、E318Kの変化が、MITFの機能にどのように影響するかを見事に証明したところにあります。さらに、この中程度のリスクを実証するために世界中から1000例 の健常対照者を必要としました。これは、この共同研究のユニーク性と、次世代シーケンシングの潜在的な有用性を証明していますね。」と、ツァオ博士は語 る。「今の我々の課題は、この変異がどのようにしてメラノサイトの癌化につながるのかを理解することです。こういった情報は、他の発がん遺伝子を発見する だけでなく、がんの成長を阻害し、メラノーマ細胞を死滅させる治療法を見つけることに役立つかもしれないのです。」と、フィッシャー博士は続けた。

 フィッシャー博士はウィグルスワースの皮膚科の教授で、ツァオ博士はハーバード大学医学部皮膚科の准教授である。Nature掲載の論文の共同著者は、MGH皮膚生物学リサーチセンターの横山サトル博士;オーストラリア、クィーンズランド医学研究所(QIMR)のスーザン・ウッズ博士、グレン・ボイル博士、ローレン・オード博士、そしてスチュアート・マックグレゴー博士;そしてアリゾナ州フェニックスのトランスレーショナル・ゲノミクス・リサーチ研究所(TGen)のビクトリア・ジスマン博士である。また、Tgenのジェフリー・トレント博士、QIMRのニコラス・ヘイワード博士、そして国立がん研究所のケビン・ブラウン博士も研究に貢献している。

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