乳がんの転移を抑制するタンパクを同定
サイエンス出版部 発行書籍
乳がんの悪性化の典型であるがん細胞の局所浸潤や転移を抑えるレセプタータンパクが、テキサス大学MDアンダーソンがんセンターの研究チームにより明らかにされた。Nature Medicine誌2012年9月23日のオンライン版に発表された論文によれば、他臓器にがんが広がる乳がんの転移を抑制する事で知られる、白血球抑制因子レセプター(LIFR)を同定するために、ハイスループットRNAシーケンシング技術が用いられている。「私たちの研究結果によれば、乳がん転移を抑制するLIFRのような、主要な転移抑制因子の発現や機能を回復させる事が有効だと考えられます。」とMDアンダーソン実験放射線オンコロジー学部准教で主著のリ・マー博士は語る。そして、「乳がん死撲滅の障害となっている転移現象に対する、臨床的に証明された予後マーカーや治療薬はまだありません。 多くの転移誘発遺伝子が同定されていますが、臨床応用にまでは到達していません。HER2標的薬とVEDF標的薬は例外で、治療において緩やかではありますが想定通りの成果を出しています。」と付言する。 転移を抑制する遺伝子はほんの数種しか同定されておらず、どれも転移に関与する影響はそれほど強くないとマー博士は言う。しかし、本研究によって明らかにされたのは、LIFRがヒト腫瘍に対して著しい関与を有するという事である。正常なヒト乳房組織の94%にLIFRの高い発現が観察される一方で、非浸潤性乳管がん(DCIS)や浸潤性乳がんでは低減したり無くなったりする。そしてLIFRが観察されないケースでは大変予後が悪性である。マー博士は、本研究の最も重要な部分は、LIFRが、転写補助活性因子であるYAPの機能低減化につながるHippoキナーゼカスケードを昂進させる事により、転移における浸潤段階とコロニー形成段階との両方を抑制するという事だと説明する。「LIFR
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