新たなエピジェネティック編集ツール「CHARM」でプリオン病治療が前進
サイエンス出版部 発行書籍
新たに開発された「CHARM」というエピジェネティック編集ツールは、脳全体でプリオンタンパク質を抑制することが可能です。これにより、致命的なプリオン病や他の神経変性疾患の治療法が大きく前進するかもしれません。
2024年6月27日に発表されたScience誌の論文「Brain-Wide Silencing of Prion Protein by AAV-Mediated Delivery of an Engineered Compact Epigenetic Editor(AAV媒介による工学的コンパクトエピジェネティックエディターの脳全体でのプリオンタンパク質サイレンシング)」において、研究者らは「CHARM」というコンパクトで多用途なエピジェネティック編集ツールを紹介しました。このツールは、脳全体でプリオンタンパク質を抑制することができ、致命的なプリオン病や有害なタンパク質の蓄積による他の神経変性疾患の効果的な初期治療への道を開きます。
プリオン病は、急速に進行する認知症と死を引き起こす壊滅的な神経変性疾患であり、プリオンタンパク質(PrP)が誤って折りたたまれて有毒な凝集体を形成し、神経細胞の死を招くことが原因です。マウスでの以前の研究では、神経細胞からPrPを除去することでプリオン病の進行を止め、症状を逆転させることが示されています。このことは、PrP発現を減少させる戦略が、症状の発現後でも有効な治療アプローチとなる可能性を示唆しています。しかし、現在のアプローチ(例えばCRISPRoff)では、PrPを発現する遺伝子の長期的かつ可逆的なサイレンシングは依然として課題となっており、よりコンパクトで強力かつ安全なエピジェネティックツールの開発が求められています。
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