髪か皮膚か?幹細胞の「運命の決断」を司る栄養素セリンの役割
私たちの皮膚の下では、細胞たちが状況に応じてその役割を巧みに切り替える、驚くべきドラマが繰り広げられています。普段は髪の毛を作ることに専念している細胞が、いざという時にはその仕事を中断し、傷ついた皮膚を治すための「応援」に駆けつけるのです。この細胞の賢い「キャリアチェンジ」の裏には、一体どのような仕組みがあるのでしょうか。最新の研究が、その謎を解き明かす鍵となるシグナルを突き止めました。 皮膚には、表皮幹細胞と毛包幹細胞という2種類の成体幹細胞が存在します。それぞれの仕事は、皮膚を維持するか、髪の成長を維持するか、とはっきりと定義されているように見えます。しかし、ロックフェラー大学の研究が示したように、毛包幹細胞は、皮膚が傷を負った際にチームを乗り換え、治癒に協力することができます。では、これらの細胞はどのようにして役割転換の時を知るのでしょうか? この最初の発見をした研究室が、今回、HFSCに毛髪サイクルを中断して皮膚修復に着手するよう指示する重要なシグナルを特定しました。それは、幹細胞にエネルギーを必須のタスクのために温存するよう指示する、統合的ストレス応答です。皮膚において、栄養不足は、肉や穀物、牛乳などの一般的な食品に含まれるセリンとして知られる非必須アミノ酸によって感知されます。2025年6月12日に「Cell Metabolism」誌に掲載された研究で実証されたように、セリンのレベルが低下するとISRが活性化し、HFSCは髪の生産を遅らせます。栄養不足に加えて皮膚が損傷すると、ISRはさらに強く活性化し、髪の生産を停止させて、そのエネルギーを皮膚の修復へと振り向けます。この優先順位の再設定が、治癒プロセスを加速させるのです。このオープンアクセス論文のタイトルは「The Integrated Stress Response Fine-Tunes Stem
Life Science News from Around the Globe
Edited by Michael D. O'Neill

バイオクイックニュースは、サイエンスライターとして30年以上の豊富な経験があるマイケルD. オニールによって発行されている独立系科学ニュースメディアです。世界中のバイオニュース(生命科学・医学研究の動向)をタイムリーにお届けします。バイオクイックニュースは、現在160カ国以上に読者がおり、2010年から6年連続で米国APEX Award for Publication Excellenceを受賞しました。
BioQuick is a trademark of Michael D. O'Neill






