CRISPRを超えるか?単一タンパク質で遺伝子を正確に挿入するV-K型CASTシステムが登場

遺伝子編集技術が、また一つ大きな進化を遂げました。これまで主流だったCRISPR技術は、まるでハサミのようにDNAを「切る」ことで遺伝子を書き換えてきましたが、意図しない場所に傷をつけてしまうリスクも指摘されていました。もし、DNAを全く傷つけることなく、必要な遺伝子を狙った場所に正確に「貼り付ける」ことができたらどうでしょう?そんな夢のような技術が、今、現実のものとなりました。これは単なる改良ではなく、遺伝子治療の未来を根底から変えるかもしれない、「ゲノムを編集する」から「ゲノムをプログラミングする」へのパラダイムシフトの幕開けです。 単一タンパク質の遺伝子エディターがDNA切断なしで安全かつ部位特異的な治療用遺伝子の挿入を実現 2025年3月13日に『Nature Communications』誌で発表されたオープンアクセス研究が、ゲノム工学における重要な進歩を報告しています。この論文は、「Integration of Therapeutic Cargo into the Human Genome with Programmable Type V-K CAST(プログラム可能なV-K型CASTによるヒトゲノムへの治療用カーゴの組み込み)」と題され、Metagenomi社のジェイソン・リュウ氏(Jason Liu)らが、クリストファー・T・ブラウン博士(Christopher T. Brown, PhD)の監修のもとで執筆しました。本研究は、V-Kファミリーに属する、簡素化されたプログラム可能なCRISPR関連トランスポザーゼシステムを導入し、DNAの二本鎖切断を誘発することなく、治療用DNAをヒトゲノムへ正確に組み込むことを可能にします。 「切断」から「プログラミング」へのパラダイムシフト 従来のCRISPRゲノム編集は、DSBsを誘発し、その後のエ
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Edited by Michael D. O'Neill
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