記憶力の鍵は「海馬」にあり!成人後も続く脳の成長メカニズムが解明される

記憶力の鍵は「海馬」にあり!成人後も続く脳の成長メカニズムが解明される

「大人の脳はもう成長しない」と考えていませんか?長年、科学者たちの間で議論されてきたこのテーマに、一つの答えを示す画期的な研究が発表されました。私たちの「記憶」を司る脳の重要な部分で、なんと80歳近くになっても新しい神経細胞が作られ続けていることが、最新の技術によって明らかになったのです。これは、脳の驚くべき適応能力と、未来の医療に新たな希望をもたらす発見かもしれません。 2025年7月3日に科学誌「Science」に掲載された研究は、脳の記憶中枢である海馬において、後期成人期に至るまで神経細胞が形成され続けるという、説得力のある新たな証拠を提示しました。スウェーデンのカロリンスカ研究所によるこの研究は、人間の脳の適応能力に関する、長年議論されてきた根源的な問いに答えを与えるものです。海馬は、学習や記憶に不可欠であり、感情の調節にも関わる脳領域です。2013年、カロリンスカ研究所のヨナス・フリーセン博士(Jonas Frisén, MD)の研究グループは、注目を集めた研究で、成人の海馬で新しい神経細胞が形成されうることを示しました。当時、研究チームは脳組織のDNAに含まれる炭素14のレベルを測定し、細胞がいつ形成されたかを特定することを可能にしました。 起源となる細胞の特定 しかし、この新しい神経細胞の形成、すなわち神経新生(neurogenesis)の規模や重要性については、まだ議論が続いていました。新しい神経細胞の前駆体となる神経前駆細胞が、実際に成人の体内に存在し、分裂しているという明確な証拠はなかったのです。 「私たちは今回、これらの起源となる細胞を特定することに成功し、成人脳の海馬でニューロンの形成が継続的に行われていることを確認しました」と、この研究を主導したカロリンスカ研究所 細胞・分子生物学部門の幹細胞研究教授であるフリーセン博士は述

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Edited by Michael D. O'Neill

Michael D. O'Neill

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