iPS細胞から神経を再生?人工誘導神経幹細胞による脳修復メカニズムが解明

iPS細胞から神経を再生?人工誘導神経幹細胞による脳修復メカニズムが解明

進行すると有効な治療法がなくなってしまう難病、多発性硬化症。この病気によって失われた神経機能を、自分の細胞から作り出した「神経幹細胞」で再生できるかもしれない――。そんな希望の光を示す画期的な研究成果が、英国の名門ケンブリッジ大学から発表されました。この記事では、難病治療の未来を塗り替える可能性を秘めた、幹細胞研究の最前線に迫ります。 ケンブリッジ大学の研究者らが主導した研究により、神経幹細胞移植が中枢神経系のミエリンを回復させる仕組みに光が当てられました。この発見は、神経幹細胞を基盤とした治療法が、慢性的な脱髄性疾患、特に進行性多発性硬化症の新たな治療法となる可能性を示唆しています。多発性硬化症は、体の免疫系が誤って中枢神経系を攻撃し、神経線維を保護する髄鞘(ミエリン)を破壊してしまう自己免疫疾患です。この損傷は、若年成人における神経障害の主な原因となっています。 MSの初期段階では、特定の細胞が新しいミエリンを生成することで、この損傷を部分的に修復する能力を持っています。しかし、病気が慢性的で進行性の段階に入ると、この再生能力は著しく低下します。この修復能力の低下が、さらなる神経細胞の損傷を招き、進行性MSの患者さんの障害を悪化させる一因となっています。 治療法に進歩は見られるものの、現在の治療法のほとんどは症状の管理に重点を置いており、損傷や神経変性を食い止めたり、回復させたりするまでには至っていません。このことは、MSがどのように進行するのかをより深く理解し、幹細胞技術がMS治療にどのように貢献できるかを探求する必要性を浮き彫りにしています。 このオープンアクセスの研究は、2025年7月7日付の学術誌Brainに掲載され、ケンブリッジ大学の科学者であるルカ・ペルゾッティ-ジャメッティ博士(Luca Peruzzotti-Jametti, MD, PhD)

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Edited by Michael D. O'Neill

Michael D. O'Neill

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