セロトニン受容体と脳内情報伝達の謎に迫る

ルール大学ボーフムのディルク・ヤンケ博士(Dirk Jancke, PhD)は、神経細胞間の情報伝達を媒介するセロトニン受容体の役割について解明しました。彼が執筆したオープンアクセス論文「Gain Control of Sensory Input Across Polysynaptic Circuitries in Mouse Visual Cortex by a Single G Protein-Coupled Receptor Type (5-HT2A)」(「単一のGタンパク質共役型受容体タイプ(5-HT2A)によるマウス視覚皮質内の多シナプス回路を介した感覚入力の制御」)が、2024年9月14日にNature Communications誌に掲載されました。

受容体の多様性とセロトニンの複雑な作用

セロトニンは少なくとも14種類の受容体を介して脳全体の神経細胞活動を調節します。しかし、これらの受容体は抑制的にも活性化的にも作用し、異なる細胞タイプ間での相互作用も絡むため、研究が困難とされています。

光遺伝学による新たな手法で解明

ステファン・ヘルリッツェ教授(Stefan Herlitze)の研究チームは、光遺伝学を活用してこの問題にアプローチしました。ウイルスを用いて神経細胞に光感受性の受容体タンパク質を導入し、特定の受容体を精密に操作可能な方法を開発しました。これにより、5-HT2A受容体が視覚情報の強度を選択的に抑制することを発見しました。

精神疾患治療への可能性

この研究成果は、LSDによる幻覚作用を含む、セロトニン受容体の異常活性化が引き起こす脳内メカニズムの解明に寄与するとされています。また、特定の受容体をターゲットにした新しい治療法の開発が期待されます。

モデル化と多角的研究

人工知能を活用した神経回路モデルによって、受容体が抑制性および興奮性神経細胞の両方に同時に作用することで実験結果が再現されることも確認されました。

研究の重要な協力体制

本研究は、共同研究センター874と「モノアミン神経ネットワークと疾患」研究訓練グループの支援を受け、複数の研究グループの協力により実施されました。筆頭著者のルクサンドラ・バルザン博士(Ruxandra Barzan, PhD)は、実験と分析を主導しました。

写真:ボーフム研究チームのディルク・ヤンケ博士(Dirk Jancke, PhD)、ルクサンドラ・バルザン博士(Ruxandra Barzan, PhD)(Credit: RUB, Kramer)

[News release] [Nature Communications article]

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