UCLAを中心とした研究チームが、人間の脳発達における遺伝子調節の進化を前例のない詳細さで明らかにしました。この研究は、DNAとタンパク質からなる「クロマチン」の3D構造が脳の発達に重要な役割を果たしていることを示し、生涯の精神的健康にどのように影響するかについて新たな知見を提供しています。この研究は2024年10月9日にNatureに発表され、UCLAのチョンユアン・ロー博士(Chongyuan Luo, PhD)とUCサンフランシスコのメルセデス・パレデス博士(Mercedes Paredes MD, PhD)により主導されました。共同研究者には、ソーク研究所、UCサンディエゴ、ソウル大学の研究者らが含まれます。
論文のタイトルは「「Temporally Distinct 3D Multi-Omic Dynamics in the Developing Human Brain」(発達中のヒト脳における時間的に異なる3D多オミクス動態)」です。この研究では、学習、記憶、感情調節に重要な海馬と前頭前野という脳領域でのDNA修飾の地図を初めて作成しました。これらの領域は、自閉症スペクトラム症(ASD)や統合失調症などの障害にしばしば関連しています。
研究の概要
研究チームはこのデータをオンラインプラットフォームを通じて公開し、科学者が遺伝子変異を特定の遺伝子や細胞、発達時期と結びつけるための貴重なツールとして活用できるようにしています。ロー博士は「神経精神疾患は成人期に現れることが多いですが、その多くは脳の早期発達を阻害する遺伝的要因に起因します。このマップは疾患影響を受けた脳の遺伝子研究と比較するための基盤を提供し、分子変化が発生する時期と場所を特定するのに役立ちます」と述べています。
研究チームは、UCLAの幹細胞研究センターフローサイトメトリーコアで開発・拡張された最先端の配列解析技術「シングル核メチル-seqおよびクロマチンコンフォメーションキャプチャ(snm3C-seq)」を使用しました。この技術は、DNAの化学的変化(メチル化)と染色体の3D構造(クロマチンコンフォメーション)という、遺伝子発現を制御する2つのエピジェネティック機構を単一細胞レベルで同時に解析することを可能にします。
精神疾患への応用可能性
たとえば、自閉症スペクトラム症は2歳以上の子供に診断されることが一般的ですが、研究者がその遺伝的リスクや発達への影響をより深く理解できれば、脳の発達中に症状(コミュニケーションの課題など)を軽減するための介入戦略を開発する可能性があります。
研究チームは、妊娠中期から成人期にかけてのドナーから採取した53,000以上の脳細胞を分析しました。この分析により、重要な発達段階での遺伝子調節の大きな変化が明らかになりました。特に、妊娠中期は、神経幹細胞(ラジアルグリア)がニューロンを生み出すことをやめ、神経を支持・保護するグリア細胞を生成し始める重要な時期です。この発達段階は、これまで脳組織の入手が限られていたため、研究されていませんでした。
ステムセルモデルへの影響
この研究成果は、脳の発達や疾患を研究するために使用される「脳オルガノイド」のような幹細胞ベースのモデルの改善にもつながる可能性があります。この新しい地図は、これらのモデルが人間の脳の発達を正確に再現するためのベンチマークを提供します。



