ゾウの鼻の形をした花とハチの“サイズが合わないと受粉できない”共進化の謎

ゾウの鼻の形をした花とハチの“サイズが合わないと受粉できない”共進化の謎

ヒマラヤの秘境に咲く、まるでゾウの顔のような不思議な花。この花には、たった一種の昆虫だけが知る「秘密のスイッチ」がありました。ハチが花の特定の場所を噛んでブルブルと体を震わせると、まるで魔法のように花粉が噴き出すのです。なぜ、ハチはこの花の“ツボ”を知っているのでしょうか?最新の科学が、花と昆虫が織りなす絶妙な共進化の謎を、バイオメカニクスという新しい視点から解き明かしました。 中国南西部のヒマラヤ・横断山脈の高地に咲くシオガマギク属(Pedicularis)の何百種もの野草は、長い鼻(花吻)を持つゾウの頭に似た特殊な花弁(かぶと状花弁)を持っています。マルハナバチは、それらの唯一の送粉者です。マルチアングルカメラでマルハナバチの訪花を数百回ビデオ撮影したところ、ハチは花に止まるとゾウの頭を噛み、胸の筋肉を震わせることが明らかになりました。その振動が顎に伝わると、ゾウの鼻先から花粉が噴出します。花粉はハチの腹部に付着し、ハチはそれを後脚にある花粉かごに集めて、巣にいる幼虫の姉妹たちの餌として持ち帰ります。これらの花は蜜を作らないため、花粉が唯一の報酬であり、ハチは次々と植物を飛び移ることで、より多くのベビーフードと引き換えに花を受粉させているのです。 マルハナバチが、シオガマギクの種に関わらず常に同じ場所を噛むのはなぜか。この謎を調査するため、研究者たちは3DマイクロCTと原子間力顕微鏡を用いて花の構造と物性を定量化し、シオガマギク属の花の3次元有限要素モデルを構築しました。有限要素解析と振動力学実験の結果、ゾウの鼻から最も多くの花粉を振り落とすためには、ゾウの頭(花吻の基部)に「最適な噛みつきポイント」が一つだけ存在することが示されました。 シオガマギクの種が異なれば、ゾウの鼻の長さや、ねじれ・巻きの度合いも異なります。マルハナバチは、自身の体の長さが、花の最

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Edited by Michael D. O'Neill

Michael D. O'Neill

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