肺ガンの最も一般的な形成とその致命的な転移を促進する単一の遺伝子が、フロリダ州メイヨークリニック研究チームのマウスモデルによって発見された。マトリックスメタロ-10(MMP-10)と呼ばれるこの遺伝子は、他形態のガンも促進していると研究チームは考える。2012年4月24日付けのPLoS ONE誌に掲載された本研究は、MMP-10が癌幹細胞によって分泌され、生命維持のために使用される増殖因子であることを示している。
これらの細胞はその後肺ガンとその転移を引き起こすのだが、従来の治療には耐性を持つのである。本研究は、米国のガン死亡数トップの非小細胞肺ガンについて、その治療法の開発の可能性を高めるものである。MMP-10をシャットダウンすると、肺ガン幹細胞は腫瘍形成能を失うが、遺伝子を細胞に戻せば、再び腫瘍が形成される。この遺伝子のもつ力は尋常ではない、とフロリダ州メイヨークリニック癌生物学癌研究科のアラン・フィールズ教授は述べる。「我々のデータは、MMP-10は癌において二重の役割を果たすことを立証しています。MMP-10はガン幹細胞の成長および転移能を促進するのです。ガン幹細胞が腫瘍をイニシエートするだけでなく、転移を誘発するものでもある、ということは様々な腫瘍タイプで見られてきた知見であり、本研究はこの知見を説明するのに役立つでしょう。」と、フィールズ博士は説明する。
フィールズ博士によると、本発見は予期しなかったことだという。第一に、ガン幹細胞自身がMMP-10を発現し、自身の増殖のために使用する。マトリクスメタロプロテアーゼ遺伝子ファミリーとして知られている遺伝子のほとんどは、腫瘍を取り囲む細胞や組織である微小環境で発現する。これらの遺伝子により生産された酵素は、腫瘍を保持する微小環境を壊し、ガン細胞を広げる。そのため、この系統科に属する遺伝子はガン転移とリンクされている。「マトリックスメタロプロテアーゼをコードする転移関連のMMP-10のような遺伝子は、ガン幹細胞の増殖および維持のために必要なのです。このような遺伝子がプロセスに関与しているという事実は、非常に驚くべきことなのです。」と、フィールズ博士は語る。
また、研究チームはガン幹細胞が他細胞と比べて大量にMMP-10を生産することも予測していなかった。「MMP-10はガン幹細胞を健康に維持し、自己再生を促します。この事が、腫瘍の全てを破壊するはずの従来の化学療法がこれらの細胞に効果が無い理由かもしれません。そのため、肺ガンは治療後に再発することが多く、肺の他部分や近くのリンパ節、能、肝臓および脊髄への広がりを抑制できないのです。」と、フィールズ博士は説明を続ける。
本研究はMMP-10の過剰発現がヒトのガン幹細胞の生存に不可欠であることを示している、と研究チームは述べる。研究チームはヒトの結腸直腸ガン、メラノーマ、乳ガン、腎臓ガンおよび前立腺ガンの転移および幹様特性と、MMP-10の間に同様のリンクを見つけた。研究チームは今、MMP-10がガン幹細胞の増殖を促進するメカニズムを研究しており、MMP-10活動を抑制する抑制因子のデザインを調査中である。「ガン幹細胞および転移におけるMMP-10の二重の役割を考えると、これらの腫瘍を治療する上でMMP-10をターゲットにすることは非常に有効的だと思われます。」と、フィールズ博士は語る。
本レポートの共同著者にはメイヨークリニック癌生物学のベルリン・ジャスティリエン、ロデリック・レガラ、マイケル・P・ウォルシュ、イチュウ・セン、ジャイオティカ・バトラー、エベット・S・ラディスキーおよびニコール・R・マーレイ博士らがいる。
■原著へのリンクは英語版をご覧ください: Mayo Scientists ID Single Gene Driving Most Common Form of Lung Cancer
