複雑な神経ネットワークパターンは、ほんの一握りの重要な遺伝子によってプログラミングされている。この早期脳神経ネットワーク発生における特徴を発見したのは、ソーク研究所の研究チームである。2012年2月3日付けのセル誌に記載された本研究は、筋萎縮性側索硬化症(ALS)などの神経疾患のための新しい治療法の開発、および特定のガンへの新たな研究戦略の提示となるであろう。
ソーク研究チームは運動神経の軸索の先端、および通過する細胞外液内に存在する少数のタンパク質が、神経を脊髄から導きだす役割を果たしていることを発見した。これらの分子は目標とする筋肉に結合するまでに辿る長い曲路によって、軸索を誘引または忌避することが出来る。「新進の神経は自身が生長する局所環境を検知し、どこにいるのか、そして直線または左右に生長するべきなのか、それとも停止するべきなのかを判断しなければいけません。生長神経を導く複合体は、ほんの一握りのタンパク質生成物をアレンジすることで作成されているのです。まるで馴染みの無い街中でGPSが車を誘導するのと同じような感じです。」と、本研究の責任研究者、ソーク研究所遺伝子発現研究室教授およびハワード・ヒューズ医学研究所研究員、サム・ファフ博士は説明する。
脳内の神経結合数は、脳細胞DNA内に存在する遺伝子の数の数百万倍にもなる。生長神経がどのようにして様々な情報を統合し、ターゲットまで辿り着き結合するのかを理解するよう試みたのは、本研究が初めてである。「我々は今回、筋運動をコントロールする運動神経に焦点を当てていましたが、胚発生中の神経系でも似たようなことが起こっており、数百万もの軸索がターゲットに到達するまでに膨大な数の決断を下しているのです。精巧な特異性に基づき生長することが、神経系機能の基盤となっているのです。」と、ファフ博士は語る。本知見はALS(またはルー・ゲーリック病)など神経細胞の機能欠陥関連による臨床疾患に明るい未来を与えることが出来るかもしれないと語るのは本研究の責任著者、ファフ研究室のポスドク研究員、ダリオ・ボナノミ博士である。
「ルー・ゲーリック病、および小児遺伝疾患の脊髄筋萎縮症などで死滅するのが運動神経なのです。またこれは、胎児発生中におこる神経系疾患を理解するための出発点になります。これらのシグナルをより深く理解することで、神経系疾患または損傷後に回路を再構築し、再生することが可能になるかもしれません。」とボナノミ博士は語る。また本研究はガン発生への新たな仮説とも成り得る、と研究チームは考える。これは、研究チームが発見したプッシュプル・シグナルシステムにおいて不可欠なタンパク質(Ret)がガンに関連していることが判明したからである。Retを活性化する突然変異は、異なる種類の腫瘍に関連しているのだ。本研究で記されている他のタンパク質受容体、Ephsもまたガンに関与している、とファフ博士は語る。
「本研究は、細胞が普遍的な戦略に基づいて環境内のシグナルを検知していることを示しています。また、胚発生中に主に機能する遺伝子およびタンパク質がガンと関連していることも我々は知っています。それならば、強力なシグナル分子を必要とする神経細胞の生長が疾患と関連していることも理にかなっています。我々の知見が、これらの関係性を解明するための手助けになることを願っています。」と、ファフ博士は語る。
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