酸の刺激を感じないアフリカハダカデバネズミのイオンチャンネルに新薬のヒントが!
サイエンス出版部 発行書籍
ベルリン・ビュッヒにあるマックス・デルブルーク分子医学センター(MDC)のイギリスチームが、世界で最も希少な哺乳類の部類に入るアフリカハダカデバネズミ(Heterocephalus glaber)が、どうして酸に曝露しても痛みを感じないかを解明した。アフリカハダカデバネズミは暗い穴倉に密集して生息し、そこでは住環境中の二酸化炭素濃度が、大変高い。体組織中では、二酸化炭素は酸に変換され、それが痛覚神経を継続的に刺激する。 しかしハダカデバネズミは例外的に、痛みの受容体類に存在するイオンチャンネルが変性しており、酸に対して不活性で、このタイプの痛みには不感症となっているのである。エバン・セント・ジョン・スミス博士とゲリー・ルーウィン教授は、この酸による痛みに対する不感症は、アフリカデバネズミの特異な住環境に順応するために、進化によって獲得した形質であると結論付けた。 本研究結果は2011年12月16日のサイエンス誌に発表された。Nav1.7ナトリウムイオンチャンネルが、痛みの刺激を脳に伝達する主要な役割を担っている。これが痛み受容体類、すなわち、センサー神経細胞に対して神経インパルス(神経伝達の電位)を誘発する。このセンサー神経細胞の片端は皮膚表面に達し、痛みの刺激を脳に伝達する。歯科医は部分麻酔薬として、ナトリウムイオンチャンネルブロッカーを使用しているが、この麻酔薬はNav1.7イオンチャンネルだけでなく、全てのナトリウムイオンチャンネルに作用する。遺伝子の変異によってNav1.7イオンチャンネルが不全である人は、痛みを感じることがないが、これは本人にとって決して良いことではない。つまり、軽い外傷や感染症に対して自覚がないので、重篤な結果を招く場合があるのだ。しかしアフリカハダカデバネズミにはそのような問題はない。彼らにとって、酸に対する痛覚が無い事は、生き延びる
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