うつ病の病因が見直され、新たな治療薬ターゲットが浮上

うつ病の病因が見直され、新たな治療薬ターゲットが浮上

サイエンス出版部 発行書籍

プリンストン大学の研究チームが、酵母菌において、抗うつ剤ゾロフトに依拠する自己分解反応を確認した事により、抗うつ剤の作用機序のみならず、うつ病は神経伝達物質のセロトニンのみが関与しているのではないのではないかという、これまで長く続いてきた研究者間の議論に、決着が付きそうな様相を呈してきた。2012年4月18日付けPLoS ONE誌のオンライン版に発表された論文によると、プリンストン大学ルイス・シグラー総合ゲノム研究所の研究員であり分子生物学の講師であるエタン・パールステイン博士の研究チームが、抗うつ剤のセルトラリン(商品名ゾロフト)は、パン酵母菌の細胞内膜に蓄積する事を、報告している。   この蓄積が進めば、小胞膜内に腫れと湾曲を引き起こし、泡状の細胞構造となり、細胞代謝と遊走、およびエネルギー蓄積が進む。次いで、小胞は自食作用を起こし、過剰な或いは障害された細胞膜の再利用を行なう防御反応が見られる。 しかし酵母菌は、抗うつ剤の第一の標的であるセロトニンを持っていないとパールステイン博士は語る。薬剤の通常の標的を有しない生物が起こす、セルトニンに対する反応を観察することで、パールステイン博士と共同著者とのチームは、抗うつ剤がセロトニンのコントロールを超えた薬理学的な活性を有する明らかな証拠を発見した。パールステイン博士は、ジンキー・チェン博士とダニエル・コロスティシェフスキー氏とシーン・リー博士の3人を、共同第一著者として、共同研究を遂行した。抗うつ剤がセロトニンをコントロールする事は知られているが、うつ病の治療に使用するにしても、脳細胞とどのような相互作用を持ち、どのような効果を有するのかは、実はよく判っていないのだと、パールステイン博士は言う。抗うつ剤がヒトの細胞膜にも蓄積する事が報告されているが、害は無いとの事だ。しかし、膜の湾曲はうつ病の治療には非常に重要であ

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Edited by Michael D. O'Neill

Michael D. O'Neill

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