コロナウイルスなどの感染症と、癌や生活習慣病などの薬の違いと医薬品開発

コロナウイルスなどの感染症と、癌や生活習慣病などの薬の違いと医薬品開発

サイエンス出版部 発行書籍

人間の病気の殆どは感染症と癌・成人病(生活習慣病)や先天性心疾患などの個別化医療の疾患領域であり、薬の開発の考え方や手段など創薬が異なります。この中で癌の領域の創薬は、2000年以前は癌細胞殺すか細胞増殖を抑える薬の開発が殆どで、感染症と同じような考え方でしたが、2000年以降はバイオマーカーを用いた個別化医療の疾患領域の創薬の考え方に変わっています。 コロナウイルス感染が世界的に猛威を振るう前は、感染症の薬はインフルエンザの治療薬がRocheなどで開発されてから、新しい薬の開発は殆ど必要無いと考えられ、多くの製薬企業は感染症医薬品から手を引いていました。それは、前々回もお話しましたが、感染症の治療薬や予防薬はウイルスや病原菌の増殖を抑えることを目的に開発されるため、全ての人に共通に使用できます。薬に患者さん個人に差があるとすれば、効き方と副作用の出方なので、一つの疾患に対して多種の薬を開発する必要がなく、特効薬が開発されれば解決するからです。また、感染症の治療薬の創薬は低分子創薬が中心で、殆どの製薬企業が低分子創薬のスクリーニングに用いていた低分子創薬用のライブラリーを手放してしまい、今回のコロナウイルスの治療薬開発に迅速に対応できなかったと考えられます。迅速に対応できた製薬企業は、以前から感染症の分野に強く、豊富な低分子創薬のライブラリーを維持してきた、ファイザー製薬や塩野義製薬などでした。 癌の領域の癌細胞殺すか細胞増殖を抑える薬の開発は副作用が強く古いと考えられていましたが、最近はプロドラッグ化やAntibody-drug conjugate(ADC)にし、癌細胞への選択性を高めることで、有効な薬になっています。また、PETのように癌細胞に蓄積する性質を持った化合物に光を吸収するユニットを付けた薬を作り、癌細胞に薬を集積させて、そこにレーザー光線を当てる治療法(

著者: 中山 登
中山 登
このセクションは、(株)Spectro Decypher 取締役&CTO(元・中外製薬株式会社研究本部化学部分析グループ長)中山 登 氏による創薬研究コラムです。
長年、創薬研究に携わってこられた中山氏が、創薬研究の潮流についての雑感や、創薬研究者が直面している課題の解決法などを体験談を踏まえて語っていただきます。
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【中山 登 氏 ご略歴】
昭和48年3月 立命館大学理工学部卒業
昭和48年5月~
昭和56年4月 電気通信大学材料科学科、コロンビア大学化学部研究員
昭和56年6月 日本ロシュ株式会社研究所 入社
平成8年4月 日本ロシュ株式会社研究所天然物化学部、機器分析グループ長
平成16年10月 中外製薬株式会社研究本部化学部分析グループ長
平成21年4月 中外製薬株式会社 定年 シニア職
平成26年4月 中外製薬株式会社 退職
平成26年5月~現在 株式会社バイオシス・テクノロジーズ 取締役&チィーフ・テクニカル・オフサー(CTO)
平成27年4月~平成31年3月 聖マリアンナ医科大学分子病態情報研究講座講師
平成31年1月~現在 株式会社Spectro Decypher 取締役&チィーフ・テクニカル・オフサー(CTO)