まるで毒を帯びたペンのように、死にゆく細胞が隣接する細胞に致命的なメッセージを突き刺す

この現象が敗血症を悪化させている可能性があると、バイジャイ・ラティナム博士(Vijay Rathinam PhD, DVM)をはじめとするコネチカット大学医学部(UConn School of Medicine)および他機関の研究者らは、2025年1月23日発行の『Cell』誌にて報告しました。この発見は、この危険な疾患に対する新たな理解につながる可能性があります。論文タイトルは「Transplantation of Gasdermin Pores by Extracellular Vesicles Propagates Pyroptosis to Bystander Cells(細胞外小胞によるガスダーミン孔の移植がバイスタンダー細胞にパイロトーシスを伝播させる)」です。

世界保健機関(WHO)によると、敗血症は世界で最も多い死因の一つであり、毎年1,100万人がこの疾患で命を落としています。敗血症は通常、感染症によって引き起こされる暴走した炎症反応を特徴とし、治療が迅速または効果的でない場合には、ショック、多臓器不全、そして死に至る可能性があります。

しかし、最近の研究により、炎症が暴走する原因は実際には感染そのものではなく、それに巻き込まれた細胞自身であることが明らかになってきました。感染していない細胞であっても、まるで感染しているかのように振る舞い、死んでいくのです。そして死に際に、これらの細胞は他の細胞に対して何らかの「メッセージ」を送り、それを受け取った細胞までもが死に至るのです。この致死的なメッセージ連鎖の仕組みが解明されれば、敗血症の治癒につながる可能性があります。

そして現在、その謎が解き明かされつつあります。『Cell』誌に報告されたコネチカット大学医学部の研究者らの発見によると、その「メッセージ」は、細胞が生き延びようとする過程で偶然に生じる副産物であるようです。

このプロセスは、実際に感染した細胞から始まります。感染拡大を防ぐために、これらの細胞は自己破壊の手段として「ガスダーミンD(gasdermin-D)」というタンパク質を細胞表面へ送り出します。複数のガスダーミンDタンパク質が結合して、まるで風船に穴を開けるように、細胞膜に円形の孔(ポア)を形成します。この孔から細胞内の内容物が漏れ出し、細胞は崩壊し、死に至るのです。

しかし、細胞の崩壊は必ずしも避けられない運命ではありません。時には細胞が素早く対応し、このガスダーミンD孔を含む細胞膜の一部を切り離して外に放出することがあります。その後、細胞は膜を閉じて生き延びるのです。切り離された膜の断片は、小さな泡状構造である「細胞外小胞(EV: extracellular vesicle)」となり、この中には致死的なガスダーミンD孔が含まれています。

EVは周囲を浮遊し、近くの健常な細胞に接触すると、そのガスダーミンD孔がその細胞膜に穴を開け、その結果、その細胞も中身を漏出させて死に至るのです。

「死にゆく細胞がこれらの小胞を放出することで、その孔を隣接細胞に“移植”し、結果として隣接細胞が死にます」と、コネチカット大学医学部の免疫学者であるラティナム博士(Vijay Rathinam, PhD)は述べています。つまり、この致死的なメッセージは、細胞が自らを守ろうとする過程の副産物に過ぎないということです。死にかけた細胞の集団は、ガスダーミンD小胞を大量に放出することで、周囲の多くの細胞を死に至らせる可能性があります。この死のメッセージの拡散が、敗血症における炎症の連鎖をあおるのです。

ラティナム博士(Vijay Rathinam, PhD)とその共同研究者らは現在、この致死的なガスダーミンDを含む小胞を抑制する方法を探っています。もしこの試みが成功すれば、敗血症のような炎症性疾患に対する新たな治療法につながる可能性があります。

本研究は、ラティナム研究室に所属するMD/PhD課程の大学院生、スカイラー・ライト(Skylar Wright)氏が主導し、コネチカット大学医学部のジャンビン・ルアン博士(Dr. Jianbin Ruan)、ベイヤン・ジョウ博士(Dr. Beiyan Zhou)、シヴァプリヤ・カイラサン・ヴァナジャ博士(Dr. Sivapriya Kailasan Vanaja)の研究室、およびドイツ・オスナブリュック大学のカティア・コセンティーノ博士(Dr. Katia Cosentino)との共同で行われました。

画像:Gasdermin-D

[News release] [Cell abstract]

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