副作用リスクを低減。スイッチ機能付きCAR-T療法が自己免疫疾患治療の常識を変えるか

副作用リスクを低減。スイッチ機能付きCAR-T療法が自己免疫疾患治療の常識を変えるか

サイエンス出版部 発行書籍

化学療法による免疫抑制を伴わずに、ループスや全身性強皮症、筋炎、関節リウマチの患者を治療できる可能性を秘めた、革新的な細胞療法が登場しました。がん治療で大きな注目を集めるCAR-T細胞療法。その強力な効果の一方で、治療前に行う化学療法(リンパ球除去)が患者の体に大きな負担をかけ、重い副作用のリスクを伴うことが課題でした。この課題を克服し、自己免疫疾患の治療に新たな光を当てる「スイッチ機能付き」の次世代型CAR-T療法が、いよいよ臨床試験を開始します。これは、長年続く自己免疫疾患との闘いに、新たな希望をもたらすかもしれません。 化学療法不要のCAR-T療法、自己免疫疾患を対象に臨床試験へ スクリプス研究所の創薬部門であるカリブル-スカッグス革新的医療研究所は、2025年4月9日、自己免疫疾患患者を対象としたスイッチング可能キメラ抗原受容体T細胞療法の研究に関する治験許可申請(IND: investigational new drug)が、米国食品医薬品局(FDA)に承認されたことを発表しました。第1相臨床試験(NCT06913608)の患者募集は間もなく開始される予定です。 この第1相臨床試験では、筋炎、全身性強皮症、ループス、および関節リウマチの患者を対象に、CLBR001 + SWI019の安全性と有効性を評価し、将来的には他の適応症への拡大も視野に入れています。カリブル-スカッグスの新しいsCAR-T療法は、従来のCAR-Tアプローチで必要とされたリンパ球除去化学療法に伴う副作用と患者負担を軽減するように設計されており、これはリウマチ専門医と患者にとって重要な課題です。 自己免疫疾患は慢性的な症状であることが多く、米国では最大約1500万人、世界人口の最大12%が罹患しています。CAR-T細胞療法は、全身の免疫を「リセット」することで一部の自己免疫疾患におい

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Edited by Michael D. O'Neill

Michael D. O'Neill

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