ヒトの免疫系が細菌にも含まれる数十億年前からの細胞死タンパク質ファミリーを利用していることを発見

ヒトの免疫系が細菌にも含まれる数十億年前からの細胞死タンパク質ファミリーを利用していることを発見

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ダナファーバー癌研究所、ハーバード大学、イスラエルの科学者らは、複雑で繊細かつ洗練された驚異のシステムであるヒトの免疫システムに、細菌がウイルスから身を守るために使用する10億年前のタンパク質ファミリーが含まれていることを発見した。この発見は、2022年1月13日付の科学誌Scienceのオンライン版に掲載されたもので、地球上に存在する病気に対する高度な盾である我々の免疫システムの構成要素が、古代の生命体の早い段階で進化していたことを示す最新の証拠である。この研究は、免疫系がすでに存在していた要素を吸収し、何年もの進化を経て、ヒトのように生物学的に複雑な生物の要求を満たすために、それらを新しい方法で利用するようになったことを示している。
このScience誌の論文は、「バクテリアのGasderminは、古代の細胞死メカニズムを明らかにする (Bacterial Gasdermins Reveal an An Ancient Mechanism of Cell Death)」と題されている。

この研究の主執筆者であるダナファーバーのPhilip Kranzusch博士は、「ヒトの免疫系の機能を理解するために、世界中の研究者は多大な努力を払ってきた。」「ヒトの免疫の重要な部分がバクテリアに共通して存在するという発見は、この分野の研究に新たな青写真を提供するものだ」と述べている。
研究の中心となっているタンパク質は、Gasdermin として知られている。細胞が感染したり、癌化したりすると、Gasderminは細胞膜に穴を開け、細胞を死滅させる。この穴から炎症性サイトカインと呼ばれる物質が漏れ出し、感染や癌の存在を知らせて、免疫系が体を守るために結集するよう促すのだ。
このプロセスはパイロプトーシス(pyroptosis)と呼ばれ、免疫系が疾患細胞や感染細胞を殺すためのレパートリーの一つである。このプロセスは、よりよく知られているアポトーシスを補完するもので、障害を受けたり感染したりした細胞が自己破壊を行うものである。「パイロプトーシスは、自然免疫系(病原体に対する身体の第一防御ライン)が潜在的脅威に最も早く反応する方法の一つだ」と、この新しい研究の共同筆頭著者であるダナファーバーのAlex Johnson博士は語っている。

ヒトのゲノムには6種類のGasderminタンパク質のコードがあり、それらは異なる種類の細胞でさまざまなレベルで発現している。今回の研究では、Johnson博士らは、これらのタンパク質の祖先がバクテリアに存在するかどうかを調査した。
2019年、Kranzusch博士らは、癌や感染症に関連する異常を感知するcGAS-STINGというヒトの免疫シグナル伝達経路が、細菌に由来することを発見したのである。「この発見やその他の発見が、ヒトと細菌の細胞における免疫関連タンパク質のさらなるつながりを探す動機となった」と、Kranzusch博士は指摘する。

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Edited by Michael D. O'Neill

Michael D. O'Neill

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