癌治療における免疫チェックポイント阻害の成功に必要な転写因子を同定

癌治療における免疫チェックポイント阻害の成功に必要な転写因子を同定

前臨床モデルにおいても癌患者においても、免疫チェックポイント阻害療法について多くの成功例がある。 しかし、そのような免疫療法がどのようにしてその反応を引き出すのか、そしてチェックポイント阻害療法が癌を根絶するための免疫システムの再活性化に成功(または失敗)する要因については、多くの疑問が残っている。ボストンのBrigham and Women's Hospitalの研究者らが同じくボストンにあるBroad研究所の同僚と共同で行った新しい研究で、腫瘍の免疫細胞の重要なクラスであるT細胞の異なる集団に対する免疫チェックポイント阻害療法の効果を調べた。このチームの驚くべき成果は、過去に見過ごされてきたT細胞の集団を示しており、治療に対する反応を予測する分子因子の同定につながっている。この論文は2019年1月8日のImmunityにオンラインで発表され、「チェックポイント阻害免疫療法は、PD-1-CD8 +腫瘍浸潤T細胞の動的変化を誘導する(Checkpoint Blockade Immunotherapy Induces Dynamic Changes in PD-1−CD8+ Tumor-Infiltrating T Cells.)」と題されている。

「我々の研究は、腫瘍内のT細胞には非常に多様性があるという観察を利用している。異なる細胞集団に対する治療の効果を見て、我々は驚いて困惑した。 エクスプレスチェックポイント阻害剤は、遺伝レベルで有意な変化を示した」と、共著者であるBrighamの准科学者およびハーバード大学医学大学院の神経科学准教授のAna Anderson博士(写真)は述べた。 「以前はほとんど無視されてきた細胞だ。我々の研究ではチェックポイント阻害療法が何をしているのか、そしてそれがどのようにその効果を媒介するのかという焦点を広げている。」

Anderson博士らは、最新の技術を利用して、さまざまな癌に関与するT細胞に対しコンピューター手法と個々の細胞から何千もの遺伝子の出力を測定するための技術であるシングルセルRNAシーケンスを利用して治療法の効果を調べた。研究者らは反復的なアプローチを取り、興味深いリードの特定を可能にし、次に癌の前臨床モデルでさらなる試験を実施した。


このアプローチにより記憶可能な免疫細胞集団の維持および機能に必要とされる転写因子Tcf7が見つかった。 この実験モデルを通して、チームはこの因子が免疫ベースの治療が成功するのに必要であることを発見した。

Anderson博士は、現在までのところ、この分野はPD-1やCTLA-4などのチェックポイント受容体を備えた完全に成熟した末期T細胞に主に焦点を当ててきたと述べている。活性化の初期段階では、T細胞はまだこれらの受容体を発現していない。それでも、これらの新生細胞は治療に対する反応を示している。

「我々は、チェックポイント阻害療法がどのように機能するのかを明らかにするために、これらの初期段階のT細胞を理解する必要がある」とAnderson博士は述べた。「私たちの研究は、さまざまな癌に関与するチェックポイント阻害免疫療法に反応する重要な免疫細胞集団を特定するのに役立ち、この療法の成功における重要な要因を示している。」
「さらなる研究により、治療に対する患者の反応を予測し、免疫療法アプローチを用いてどの細胞を標的とすることが最も重要であるかを特定するためのバイオマーカーを定義できる可能性がある。」

Anderson博士は、癌免疫療法に関心を持つPotenza TherapeuticsとTizona Therapeuticsの科学諮問委員会のメンバーである。共著者のVijay Kuchroo博士は、Potenza TherapeuticsとTizona Therapeuticsの科学諮問委員会のメンバーである。共著者のAviv Regev博士は、Thermo FisherおよびSyros Pharmaceuticals and Driver Groupの科学諮問委員会のメンバーである。この研究成果は特許出願中である。

【BioQuick News:Scientists ID Transcription Factor (Tcf7) Required for Success of Immune Checkpoint Blockades in Cancer Therapy; Finding May Advance Understanding of How These Therapies Elicit Their Response

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Edited by Michael D. O'Neill

Michael D. O'Neill

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