働きすぎると酵素もストライキ?β-カロテンが解決の鍵に!

働きすぎると酵素もストライキ?β-カロテンが解決の鍵に!

私たちの体内で起こる代謝から、植物の成長、さらには工業製品の生産に至るまで、酵素は数え切れないほどの生命活動や化学プロセスを支える重要な働きをしています。しかし、そんな働き者の酵素の中には、仕事を与えすぎるとかえって働きが鈍ってしまう、少し変わった性質を持つものがいることをご存知でしょうか。この「基質阻害」として知られる現象は、医薬品の効果や工業プロセスの効率を妨げる可能性があり、長年の謎でした。 しかしこの度、ミュンヘン工科大学(TUM)の研究者たちがこのメカニズムの一端を解明し、ニンジンなどに含まれるβ-カロテンがその解決策になる可能性を発見しました。この研究成果は、2025年3月29日付の Nature Communications 誌に掲載されたオープンアクセス論文、「β-Carotene Alleviates Substrate Inhibition Caused by Asymmetric Cooperativity(β-カロテンは非対称的な協同性によって引き起こされる基質阻害を緩和する)」で発表されました。 酵素は、私たちの衣服を洗い、消化を助け、パンを膨らませるなど、日常生活の様々な場面で活躍しています。通常、酵素は処理すべき対象(基質)が増えれば増えるほど、その活性も高まります。しかし、知られている酵素の約20%は異なる挙動を示します。一度にあまりにも多くの分子に囲まれると、その働きを遅らせたり、時には完全に停止してしまったりするのです。 これまで、基質阻害のメカニズムは十分に理解されていませんでした。科学者たちは、これが細胞内の調節機能の一つだと考えていますが、時には裏目に出ることもあります。「特定の薬剤を用いた実験では、基質阻害が医薬品の作用に影響を与える可能性が示唆されています」と、TUMの天然物バイオテクノロジーの教授であるヴィルフリート

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Edited by Michael D. O'Neill

Michael D. O'Neill

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