ハンチントン病に関連するタンパク質凝集体の詳細な構造を解明—新たな診断・治療法開発へ前進
ノルウェー・ベルゲン大学の研究者マルクス・ミエッティネン博士(Markus Miettinen, PhD)は、ハンチントン病(Huntington’s disease, HD)に関連するタンパク質凝集体の詳細な構造を明らかにした最初の科学者の一人です。本研究成果は、2024年12月30日にNature Communications誌に発表されました。論文タイトルは、「Integrative Determination of Atomic Structure of Mutant Huntingtin Exon 1 Fibrils Implicated in Huntington Disease」(ハンチントン病に関与する変異型ハンチンチンExon 1フィブリルの統合的原子構造解析)」です。「この研究がハンチントン病の治療法につながることを期待しています。タンパク質凝集体の構造を理解することは、疾患の発症メカニズムを解明するための重要な要素です。今回の分子レベルでの発見は、診断ツールや画像診断技術の開発に不可欠な基盤となります」と、ベルゲン大学計算生物学ユニット(Computational Biology Unit)のミエッティネン博士は述べています。
先駆的な手法でタンパク質凝集体を可視化
ハンチントン病は、遺伝性の変異によって異常なタンパク質凝集体が形成される致死的な疾患です。これらの凝集体は病態形成に関与すると考えられていますが、これまでの研究では、原子レベルでの詳細な構造は不明でした。
本研究では、高度な計算機シミュレーションと実験的手法を組み合わせることで、疾患関連のタンパク質凝集体の詳細な構造を初めて可視化することに成功しました。
この手法は、構造生物学の未来を象徴する学際的アプローチの好例であり、ハンチントン病の診断ツールや治療法の開発に向けた新たな道を開くものです。
「私たちは、高度なコンピュータシミュレーションを用いて、分子の挙動を可能な限りリアルに再現しました。本研究は、シミュレーションと実験のギャップを埋め、解釈が難しいデータに新たな洞察を提供します。また、ハンチントン病の研究を超えて、分子シミュレーションをより多くの研究者が活用できるようにするツールも開発しました。」と、ミエッティネン博士は説明しています。
タンパク質凝集の特異性と新たな研究課題
タンパク質の異常な凝集は、ハンチントン病だけでなく、アルツハイマー病やパーキンソン病などの神経変性疾患にも関与しています。しかし、本研究により、ハンチントン病の凝集体は他の疾患関連タンパク質とは構造的に大きく異なることが明らかになりました。
この発見は、ハンチントン病の特異な病態メカニズムを解明する上で重要な手がかりとなると同時に、異なる疾患間でのタンパク質凝集の比較研究を促進する可能性があります。
「ハンチントン病のタンパク質凝集体の構造が他の病気とは異なることが分かったことで、新たな科学的疑問が生まれました。これらの凝集体の特性や形成メカニズムをさらに詳しく調べる必要があります。」と研究チームは述べています。
計算生物学ユニットについて
本研究は、ベルゲン大学の計算生物学ユニット(Computational Biology Unit)によって実施されました。同ユニットは、数学・自然科学部(Faculty of Mathematics and Natural Sciences)の情報学科・化学科・生物科学科、および医学部(Faculty of Medicine)の生物医学科・臨床科学科の2つの学部・5つの学科にまたがる学際的な研究組織です。
このセンターは、バイオインフォマティクスおよび計算生物学の研究と教育を推進しており、ベルゲン大学、ハウケランド大学病院(Haukeland University Hospital)、トロンド・モーン研究財団(Trond Mohn Research Foundation)からの資金提供を受け、2017年から2026年までの期間で約1,700万ユーロ(約270億円)の助成を受けています。
画像:シミュレーションといくつかの補完的な実験を組み合わせて作成した、ハンチントン病に関連するタンパク質の塊の可視化(Credit:Markus Miettinen, UiB/CBU)。



