生殖医療研究者、体外受精の不成功に関わる遺伝子パターンを突き止める

生殖医療研究者、体外受精の不成功に関わる遺伝子パターンを突き止める

イギリスのサザンプトンとオランダの生殖医療研究者は、体外受精 (IVF) 治療が成功するかどうかを予想できる子宮内膜の特定遺伝子パターンを突き止めた。この研究の共同筆頭著者で、サウサンプトン大学のChair in Obstetrics and Gynecologyを務めるNick Macklon教授は、なぜ一部の女性がIVFで繰り返し失敗するのかということを不妊治療医が理解する助けになるのではないかと述べている。



また、体外受精治療を受ける前に女性が妊娠できる確率を判定したり、繰り返し失敗した場合にさらに治療を続けるべきかどうかを判断する手がかりとなるテストの開発にもつながると述べている。

サザンプトン市のPrincess Anne Hospital内にある、NIHR Southampton Biomedical Research Centreの一機関、Complete Fertility Centre SouthamptonのMedical Directorを務めるProfessir Macklonは、「これまで、IVFで何度良質な胚の移植を受けても妊娠に成功しない女性が多くの場合、子宮内膜が失敗の原因かも知れないということがはっきりしなかった。

今回の研究で、IVFで何度も失敗している女性では内膜の細胞に異常な遺伝子発現が見られ、特定遺伝子パターンが見られる場合、必ずIVF失敗になっていることが突き止められた。IVFの失敗を理解する上で重要な発見だ」と述べている。


2016年1月22日付Scientific Reportsオープン・アクセス論文としてオンライン版で発表されたこの研究では、2006年から2007年にかけてオランダのUniversity Medical Center Utrechtにおいて、また2011年から2013年にかけてUniversity Medical Center UtrechtとアムステルダムのAcademic Medical Centerでそれぞれ被験者を募集している。また、この論文は、「An endometrial gene expression signature accurately predicts recurrent implantation failure after IVF (子宮内膜の遺伝子の発現の特徴でIVF失敗の繰り返しを正確に予測)」と題されている。

研究チームは、優れた質の胚の移植を3回以上受けたか、複数移植の場合には10個以上の胚を移植するかしても妊娠できなかった女性43人と、IVFまたは卵細胞内精子注入法 (ICSI) で出産した女性72人の子宮内膜の生検を入手した。ユトレヒトとサザンプトンでそれぞれ生検の分析を進めているうちに、繰り返し移植に失敗した女性の80%で子宮内膜に異常な遺伝子プロファイルを見つけた。この異常遺伝子プロファイルはIVF治療で出産した女性には見られないものだった。

University Medical Center Utrecht, Genomics Laboratoryの長、Professor Frank Holstegeは、「この研究結果から考えられるのは、胚移植を繰り返しても妊娠しなかった女性は、子宮の着床能に問題があって不妊になっているかもしれないということだ。その女性達が妊娠する可能性は非常に低く、このことは、不妊治療専門医が、それ以上の治療に時間と努力と金銭を使うことが賢明かどうかを患者に伝える判断の基準になる。同時に、IVFを何度か受けながら妊娠しなかった患者でも、問題の遺伝子パターンを持っていなければ今後妊娠する確率は高いため、さらに治療を続けるよう勧めることができる」と述べている。

University Hospital Southampton NHS Foundation Trustの婦人科専門医を務めるProfessor Macklonは、「この発見は、国際的な不妊治療研究にとって大きな前進だと思うが、次の段階は、この成果を大規模な臨床試験に移し、その効果を試すことだ」と述べている。

原著へのリンクは英語版をご覧くださいFertility Experts Identify Genetic Pattern in Womb That Is Linked to IVF Failure

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Edited by Michael D. O'Neill

Michael D. O'Neill

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