“ゴミ掃除”から“細胞の修理”へ。脳をリセットする遺伝子治療

これまでのアルツハイマー病治療は、脳にたまった「ゴミ(異常タンパク質)」を取り除くことに主眼が置かれてきました。しかし、もし「ゴミ」を生み出す脳細胞そのものを“修理”し、健康な状態にリセットできるとしたらどうでしょう?そんな根本原因に迫る、全く新しいアプローチの遺伝子治療が、アルツハイマー病との闘いに新たな希望をもたらすかもしれません。カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)医学部の研究者たちは、脳を損傷から保護し、認知機能を維持するのに役立つ可能性のある、アルツハイマー病の遺伝子治療法を開発しました。 脳内の不健康なタンパク質沈着を標的とする既存の治療法とは異なり、この新しいアプローチは、脳細胞自体の挙動に影響を与えることで、アルツハイマー病の根本原因に対処する可能性があります。 アルツハイマー病は世界中で何百万人もの人々に影響を与えており、脳内に異常なタンパク質が蓄積し、脳細胞の死滅と認知機能および記憶の低下を引き起こします。現在の治療法はアルツハイマー病の症状を管理することはできますが、この新しい遺伝子治療は、病気の進行を停止させる、あるいは逆転させることさえ目指しています。 マウスを用いた研究で、研究者たちは、症状が現れた段階でこの治療を行うと、アルツハイマー病患者でしばしば損なわれる認知機能の重要な側面である、海馬依存性の記憶が維持されることを発見しました。治療を受けたマウスは、同年齢の健康なマウスと同様の遺伝子発現パターンも示しており、これは、この治療が病気の細胞の挙動を変化させ、より健康な状態に回復させる可能性を秘めていることを示唆しています。 これらの発見をヒトの臨床試験に結びつけるにはさらなる研究が必要ですが、この遺伝子治療は、認知機能の低下を緩和し、脳の健康を促進するための、ユニークで有望なアプローチを提供します。 2025年5月1
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Edited by Michael D. O'Neill
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