癌免疫療法に有望な細胞(自然免疫様キラーT細胞)をスローンケタリング研究所の研究者が発見

癌免疫療法に有望な細胞(自然免疫様キラーT細胞)をスローンケタリング研究所の研究者が発見

免疫療法は多くの癌患者を救うことに成功したが、それでも大多数の患者にはこれらの治療が効かないため継続的な研究が必要だ。2022年4月20日、スローンケタリング研究所(SKI)の研究者は、最近発見された新しい免疫細胞が免疫療法の良いターゲットになる可能性があり、反応する人としない人のギャップを狭めるのに役立つかもしれないという期待についてNature誌に報告した。この論文は「自己反応性自然免疫型T細胞を介した癌免疫のプログラム(Programme of Self-Reactive Innate-Like T Cell-Mediated Cancer Immunity)」と題されている。
この新しく発見された細胞は、科学者達がキラー自然免疫様T細胞と呼んでいるが、多くの免疫療法の従来の標的である細胞障害性(別名「キラー」)T細胞とは、注目すべき点で異なっている。1つは、細胞傷害性T細胞のように長時間の活動で疲弊することがないことである。そして、癌が潜んでいる組織により深く入り込むことができる。これらのユニークな性質が、免疫療法のターゲットとして魅力的なのだ。
「このキラーT細胞は、癌治療の標的として、あるいは遺伝子操作によって利用できると考えている。従来のT細胞よりも固形癌に到達して死滅させる能力が高いかもしれない。」と、SKIの免疫学者で今回の研究の主執筆者であるミン・リー博士(写真)は述べている。

細胞を特徴づけるものを突き止める
リー博士のチームは、2016年にこの珍しい細胞集団の存在を初めて報告した。そのとき、この細胞が癌細胞を殺す力を持っていることは彼のチームにとって明らかだったが、この細胞がどこから来たのか、どのように働くのかについてはほとんど分かっていなかった。
この新しい研究のために、リー博士と同僚らは、単一細胞解析やCRISPRゲノム編集などのさまざまな技術を駆使して、この細胞の特徴をさらに明らかにした。
その結果、いくつかの驚くべき発見があった。ひとつは、自然免疫系キラーT細胞は免疫チェックポイント分子PD-1を作らず、その結果、典型的なキラーT細胞のように疲弊することもないようだということである。これは、免疫細胞治療の可能性を秘めた魅力的な機能である。
また、この細胞は、癌細胞上の異なるマーカー、すなわち抗原を認識するようだ。従来のキラーT細胞が特定の変異した抗原(ネオアンチゲン)を認識するのに対し、自然免疫系キラーT細胞は変異していない(つまり正常な)抗原をより広範囲に認識するのである。
また、キラーT細胞は、樹状細胞などの抗原提示細胞に頼らず、危険そうな抗原の存在を知らせてくれる。このように、キラー自然免疫細胞は、常に攻撃の準備を整えている自然免疫細胞のような働きをする。
また、従来のT細胞とは異なり、キラーT細胞は血液やリンパ液を循環し、リンパ節にとどまることはない。むしろ、全身の組織に直接たどり着き、そこで危険を察知するようだ。
これらの特徴から、キラーT細胞は免疫療法のターゲットとして特に注目されていると、リー博士は言う。

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Edited by Michael D. O'Neill

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